Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【96】脳情報を新産業基盤に(2026年10月21日紙面掲載分)

「こころ」理解

現在、人工知能(AI)の急速な進化が関心を集めているが、人間の知性をめぐる次のフロンティアがニューロテクノロジーである。生成AIをはじめ、現在利用されているAIは、主に人間によって言語化された情報を扱う。これに対し、ニューロテクノロジーは脳・神経情報を直接計測し、読み取り、書き込み、さらには情報処理そのものを再現する。言葉ではなく「こころ」を理解する技術である。脳情報を新たな「情報媒体」として扱えるようになれば、医療や福祉に加え、教育、モビリティ、エンターテインメント、AI・ロボットとの協働など、さまざまな分野で新たな産業基盤になることが期待される。

個人差の壁

ただ、現在開発が進むEEG(脳波)やBCI、AI解析は、個々の技術として進歩しても、日常生活で広く使える段階にはない。脳情報は高次元で個人差が大きく、計測手法も多様である。これほどまでに異なる情報を共通の意味空間で表現する基盤が不足している。また、高精度と低負荷を両立する計測や、得られた脳情報を現実世界の行動や介入につなぐ技術の開発もこれからの課題だ。

2026年度から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はフロンティア育成事業のブレインテック・ニューロテック領域で7件の研究開発を開始した。

交感神経活動の非侵襲計測、AI搭載BCI、異種脳情報の統合、磁気シールド不要の脳磁場計測、侵襲信号を活用した非侵襲脳情報解読、汎用脳波基盤モデル、Brain-Audio Interfaceなど、いずれもニューロテクノロジーの実用化に向け欠かせない技術だ。

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ブレインテック・ニューロテクノロジー 新産業の基盤

選択肢増やす

カギは、これらを個別の研究で終わらせず、「脳のことば」を軸に接続することだ。多様な脳情報を集めるInput、共通の意味空間をつくるRepresentation、脳と現実世界を橋渡しするCompile、脳の情報処理を再構築するEmulateという流れを育て、脳情報を理解・予測・介入に使える汎用基盤へ発展させる。日本の勝ち筋は、単純な性能競争ではなく、「技術×人間×文脈」を統合し、信頼される形で社会に実装することだ。

精度の高い機器をつくるだけでなく、本人の状態を理解し、必要に応じて本人、周囲、環境の関係をより良く変えられる選択肢を増やすことがNEDOの目標だ。研究から開発、実証、事業化を高速につなぎ、脳・神経情報が社会で当たり前に扱われる、人間中心の新産業を日本から生み出したい。

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NEDO
イノベーション戦略センター(TSC) アドバイザー/ブレインテック・ニューロテック領域プログラムディレクター
茨木 拓也(いばらき たくや)
2013年東京大学大学院医学系研究科医科学修士課程修了。NTTデータ経営研究所で神経科学を基盤とする研究開発・新規事業創出に従事。2020年VIE創業に参画し、執行役員・最高脳科学責任者(CNTO)。ニューロテクノロジーの社会実装に取り組む。

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