Focus NEDO

ブレインテック・ニューロテック -脳・神経活動の計測と解析で人の力を引き出す技術-

もし、「身体を動かしたい」という脳の中の信号を読み取り、リハビリの効率を高めることができたら――。

これは「ブレインテック・ニューロテック」によって実現できる可能性があります。実現すれば、高齢者の骨折、寝たきり、介護の連鎖は大きく減るかもしれません。ブレインテック・ニューロテックは、脳・神経活動を計測し、計測したデータを活用してアプリケーションや製品に応用する技術であり、冒頭のような医療、介護、ヘルスケアをはじめ、創薬、医療機器開発、教育・人材育成、自動車、マーケティング、エンターテインメント等の広範な産業・市場への貢献が期待されています。脳と身体の“ズレ”を把握しながら訓練を行うことで、より効率的なリハビリを支援する、脳波等で注意力・疲労度を推定して脳にフィードバックして自己調整を支援する、脳の活動・眼の動き・体動や行動から起きている最中に数秒だけ脳が睡眠状態へ落ちるマイクロスリープの兆候を検出して警告・タスク配分する、といったことも可能になります。ブレインテック・ニューロテックは、「誰もが潜在能力を発揮し自己の理想を実現できる社会」の実現につながる重要な技術です。

近年、米国をはじめとした諸外国において、ブレインテック・ニューロテックを戦略分野に設定する動きが顕在化しています。また、多額の資金調達に成功したスタートアップの登場も相まって、本領域の研究開発について世界的に注目が集まってきました。今後、ブレインテック・ニューロテックの産業化に向けた各国の動きが活発化すると予想されます。

日本においては文部科学省等が、脳・神経科学のプロジェクトを長年にわたり主導してきており、諸外国と比してそのコアとなり得る基礎的な研究開発や電極・伝送機器向けの材料・デバイス技術に一定の優位性を有しています。これらの理由から、日本においてもブレインテック・ニューロテックは大きく成長する可能性があり、戦略的に取り組むべき領域と考えられます。

これらの状況を踏まえ、NEDOは2026年度の「NEDO先導研究プログラム/フロンティア育成事業」の研究開発として「脳・神経機能の回復・拡張や人機協働を実現するブレインテック・ニューロテック/脳・神経活動の非侵襲的計測の高度化とその応用」を挙げ、研究開発を後押ししています。

非侵襲な計測と高精度の分析が不可欠

ブレインテック・ニューロテックの実現には、高品質な脳波等のデータを安全かつ大量に取得するための技術が欠かせません。そこで重要になるのが、非侵襲的な計測(EEG※1、fMRI※2、MEG※3等)です。日本はこれらの計測技術に強みを有しており、診断や睡眠改善等のサービス提供に用いられています。加えて、非侵襲的な計測でより高精度な計測データを得るには、時間的解像度が低い計測を補う方法、被験者の行動を制限しない測定方法の開発、多種類の測定データを集積・分析することによる計測の高度化、等が必要です。

※1 EEG:脳波(Electroencephalography)
※2 fMRI:機能的磁気共鳴画像法(functional Magnetic Resonance Imaging)
※3 MEG:脳磁図(Magnetoencephalography)

こうしたことから、NEDOはブレインテック・ニューロテックの社会実装に向けた電極・デバイスの開発や次世代の脳活動計測手法の開発等を研究開発課題として設定しました。求められる技術テーマの例は下記の通りです。

・計測精度向上、計測環境簡素化、被験者の負担軽減、等を目指した非侵襲的計測機器の開発
・複数の手法による同時計測等で得られた計測データの突合等の分析による、非侵襲的計測手法の精度向上
・計測データの効率的・効果的な集積方法開発やその集積したデータの分析
・分析結果の健康維持・増進への応用または産業化への活用
・計測データの集積・分析による脳基盤モデルの構築およびその活用

NEDOは上述の研究開発の推進によって、広く国内のブレインテック・ニューロテックの産業化に向けた産業界の機運を醸成し、その成果を通じて新規材料開発や情報処理等の技術を誘発、さらに広範な周辺産業に貢献していきます。

一覧に戻る
Top