Focus NEDO

NEDOが注目する新たなフロンティア領域はこれだ

プログラムディレクターが示す取り組む意義、そして求める技術

2026年6月1日、NEDOは「Innovation Outlook Ver. 1.0増補版」を発行しました。Innovation Outlookは国内外の市場・技術・政策動向の調査・分析に基づき、新たに取り組むべき領域や取り組みを強化すべき領域、すなわち「フロンティア領域等」を提案した報告書です。増補版は、2025年7月の初版をアップデートした内容です。

これに伴い、NEDOはARPA-E(米国エネルギー高等研究計画局)の研究開発マネジメントを参考に、プログラムディレクター(以下、PD)のマネジメントの下でフロンティア領域における優れた技術を発掘・育成する事業を開始しました。

6月15日に開催した「NEDO SUMMIT」では、「Innovation Outlook Ver. 1.0増補版」で追加した12のフロンティア領域等のうち11領域について、各領域のPDなどが説明する4分間のピッチを実施しました。ピッチでの提案を踏まえ、2026年7月1日から具体的な研究開発テーマを募集するRFI(Request For Information)が始まります。以下、ピッチでPDなどが説明した各領域に取り組む意義や求める技術を紹介します。

※Innovation Outlook Ver. 1.0増補版で追加した12のフロンティア領域のうち「ネガティブエミッション技術・海洋CDRの工業的技術」領域には、RFIを実施しないためNEDO SUMMITで個別紹介せず

ブレインテック・ニューロテック

「ブレインテック・ニューロテック」領域 プログラムディレクター
株式会社NTTデータ経営研究所 ニューロコグニティブイノベーションユニット ディレクター 茨木 拓也氏
「ブレインテック・ニューロテック」領域 プログラムディレクター
株式会社NTTデータ経営研究所
ニューロコグニティブイノベーション
ユニット ディレクター
茨木 拓也氏

脳は人類に残された最後のフロンティアの一つです。ブレインテック・ニューロテックは、脳内でやり取りされる情報をセンシングし、読み取りや書き込み、仮想化を実現する技術です。言葉に依存せず感情やスキル、認知状態を共有できるようになれば、人の理解や可能性は大きく広がります。一方で、脳の情報を扱うための基盤モデルやデータ取得・変換技術はまだ十分に整っていません。今後は脳情報の収集、基盤モデルの構築、外部世界との双方向変換技術の研究開発が求められます。もしかしたら科学から哲学までの専門家が必要かもしれません。

デジタル感性

「デジタル感性」領域 プログラムディレクター候補
国立大学法人京都大学 情報学研究科 教授 西田 眞也氏
「デジタル感性」領域
プログラムディレクター候補
国立大学法人京都大学 情報学研究科 教授 西田 眞也氏

現在のデジタル社会では、視聴時間などの表層的な反応からユーザーの感性を推定していますが、これでは人間の本来の感性を正確に捉えられているとは言えません。視覚や聴覚だけでなく、触覚・嗅覚・味覚、さらには個人の状態や環境まで含めて捉える必要があります。デジタル感性は、こうした多様な入力と、生理・神経反応や行動データなどの出力を組み合わせ、人間の感性を再現する「デジタルツイン」を構築する取り組みです。価値判断に関わる感性を分析可能にすることで、人の心をつかむ製品やサービスの開発を実現し、日本の高品質・高付加価値なものづくりをサポートしていくのが狙いです。

高度センシングによる先制ヘルスケア

「高度センシングによる先制ヘルスケア」領域 プログラムディレクター候補
国立大学法人神戸大学 先端バイオ工学研究センター 特命教授 達 吉郎氏
「高度センシングによる先制ヘルスケア」領域
プログラムディレクター候補
国立大学法人神戸大学
先端バイオ工学研究センター
特命教授 達 吉郎氏

健康は個人の幸福だけでなく、社会の持続性にも直結する重要なテーマです。しかし、人は目先の満足を優先しがちで、情報も多すぎるため、自分に合った健康行動を続けるのは簡単ではありません。そこで私たちは、高度センシング技術で日々のバイタルサインやバイオマーカーを取得し、個人ごとのデジタルツインを構築することで、将来の健康リスクまで予測する先制ヘルスケアを目指しています。重要なのは頑張らせることではなく、自然に行動が変わる仕組みを作ることです。その実現に向けて、体内状態の非侵襲計測や日常生活の行動計測、行動変容につなげる認知・介入などの新たな技術やアイデアを広く求めています。

数理科学による産業革新

「数理科学による産業革新」領域 プログラムディレクター候補
トヨタ自動車株式会社 先進技術統括部 主査・担当部長 岡島 博司氏
「数理科学による産業革新」領域
プログラムディレクター候補
トヨタ自動車株式会社 先進技術統括部
主査・担当部長
岡島 博司氏

イノベーションを生み出すためには、AIを活用するだけでなく、「なぜそうなるのか」を理解する力が重要になります。解決すべき課題や現象の本質を数理科学で理解することが、新たな発想や設計のブレークスルーにつながります。数学者は産業現場を知り、産業界は数理科学を学ぶことが必要です。AIや計算資源の進化によって、数理科学を社会実装する絶好の機会となりました。ものづくりだけでなく、医療、健康、エネルギーなど幅広い分野を支える数理基盤を構築し、一致協力してブレークスルーを起こしましょう。

原子層エレクトロニクス

「原子層エレクトロニクス」領域 プログラムディレクター候補
NEDO イノベーション戦略センター デジタルユニット 上席主幹 安藤 淳氏
「原子層エレクトロニクス」領域
プログラムディレクター候補
NEDO イノベーション戦略センター
デジタルユニット
上席主幹 安藤 淳氏

情報処理は現代社会を支える基盤ですが、データ量の増大に伴い消費電力も急増しています。その課題を解決する鍵の一つとして期待されているのが、原子層レベルの極めて薄い材料を活用する原子層エレクトロニクスです。この技術は、2040年代を見据えた次世代半導体や新しい情報処理技術の基盤になると考えられています。一方で、原子層材料は既存の製造プロセスが適用しにくく、実用化には個別技術を統合するインテグレーション技術が不可欠です。私たちは材料やプロセスの知見を結集し、統合技術とのギャップを埋めながら原子層エレクトロニクスの社会実装を確立したいと考えています。

フォトニクスコンピューティング

「フォトニクスコンピューティング」領域 プログラムディレクター候補 国立大学法人横浜国立大学 名誉教授 國分 泰雄氏
「フォトニクスコンピューティング」領域
プログラムディレクター候補
国立大学法人横浜国立大学
名誉教授 國分 泰雄氏

AIの急速な進展により、データセンターやエッジAIの消費電力が大きな社会課題になっています。その主な要因は、大規模な並列演算を担うGPUの膨大な電力消費です。そこで私たちは、光回路で演算を行うフォトニクスコンピューティングに注目しています。光は並列処理に適しており、本来は大幅な省電力化が可能です。しかし現状では光回路の集積度や学習性能に課題があり、消費電力もGPUと同程度でGPUを代替するにはさらなる技術革新が必要です。今後は光回路の大規模集積化や誤差抑制アルゴリズム、非線形デバイスの集積化技術の開発などを進め、深層学習を可能にして光集積化の特長を最大化する必要があります。低消費電力かつ大規模集積可能なフォトニックアクセラレーターを実現する技術の提案を期待しています。

長期エネルギー貯蔵による変動性再エネ最大活用

「長期エネルギー貯蔵による変動性再エネ最大活用」領域を紹介する
NEDO イノベーション戦略センター サステナブルエネルギーユニット ユニット長 原 重樹氏
「長期エネルギー貯蔵による変動性再エネ最大活用」
領域を紹介する
NEDO イノベーション戦略センター
サステナブルエネルギーユニット
ユニット長 原 重樹氏

再生可能エネルギーの活用が進む中、天候による発電量の変動に対応するため、おおむね8時間以上の長時間にわたりエネルギーを貯蔵できる長期エネルギー貯蔵(Long Duration Energy Storage:LDES)への関心が高まっています。LDESは熱や圧力、重力などを利用することで、大容量のエネルギーを効率的に蓄えられる技術です。世界ではすでに多様な方式の開発競争が始まっていますが、日本には日本ならではの発想や強みがあるはずです。既存インフラや成熟技術、蓄電池にはない機能の活用などを通じて、日本発の革新的なLDESを実現したいと考えています。部分的な技術でも構いません。ぜひ幅広いアイデアを提案してください。

レアメタルやレアアースなどの重要元素のリサイクル

「レアメタルやレアアースなどの重要元素のリサイクル」領域を紹介する
NEDO イノベーション戦略センター 環境・化学ユニット ユニット長 坂本 清美氏
「レアメタルやレアアースなどの重要元素のリサイクル」
領域を紹介する
NEDO イノベーション戦略センター
環境・化学ユニット ユニット長
坂本 清美氏

レアメタルやレアアースなどの重要元素は、半導体や電池、モーターをはじめ、GX・DXに不可欠な資源です。しかし、採掘や製錬が特定国に偏在しているため、供給途絶リスクや価格変動が大きく、資源制約は年々強まっています。解決策としては、使用済み製品のリサイクルが有効な手段の一つですが、経済性・技術・サプライチェーンの課題が普及の壁となっています。そこで私たちは、個別の製品や元素に特化した従来のプロセスを超え、複数の製品・元素に対応できる共通化・全体最適化プロセスに着目しました。低コストかつ低環境負荷で回収し、市況や需要に応じて回収元素を切り替えられる柔軟なプロセスを求めています。

持続可能農業に向けた微生物活用

「持続可能農業に向けた微生物活用」領域を紹介する
NEDO イノベーション戦略センター アグリ・フードテックユニット ユニット長 渡邉 美鈴氏
「持続可能農業に向けた微生物活用」
領域を紹介する
NEDO イノベーション戦略センター
アグリ・フードテックユニットユニット長 渡邉 美鈴氏

食料需要の拡大や気候変動、生産資源の海外依存などを背景に、食料生産の持続性が大きな課題となっています。その解決策として私たちが注目しているのが巨大な資源である微生物です。微生物は約1000万種あると言われますが、単離・培養が非常に難しく生物間の相互作用も非常に複雑です。また、環境の影響を受けやすく、安定性、再現性が低いといった課題があります。しかし近年、マルチオミクス解析やAIの進展によって、微生物の機能解明が進みつつあります。持続可能な農業の実現に向けては、こうした分野横断的なアプローチが必要です。私たちは微生物の機能を理解し、安定的に制御しながら農業へ適用する技術の確立を目指しています。

量子センシング

「量子センシング」領域 プログラムディレクター
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 高崎量子技術基盤研究所 センター長 大島 武氏
「量子センシング」領域
プログラムディレクター
国立研究開発法人
量子科学技術研究開発機構
高崎量子技術基盤研究所 センター長
大島 武氏

センシングは、状況を把握し、社会を支える基盤技術です。より高感度・高精度なセンシングが実現できれば、エネルギー利用の効率化やスマート社会の実現につながります。しかし、従来のセンサーは感度やサイズ、測定範囲などの面で限界に直面しています。そこで私たちが注目しているのが量子センシングです。量子の特性を活用することで、従来では難しかった高感度な計測が可能になり、細胞内部の温度計測や地下・海底の観測、極限環境でのセンシングなど新たな応用が期待されています。量子センシングはすでに社会実装が視野に入る段階にあります。皆さんからのアイデアをもとに、さらなる性能向上や量産化、既存技術との融合によって実用化を加速していきたいと考えています。

海洋ロボティクス

「海洋ロボティックス」領域 プログラムディレクター
国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境研究部門 北極環境変動研究センター
上席研究員(シニアスタッフ) 吉田 弘氏
「海洋ロボティックス」領域
プログラムディレクター
国立研究開発法人海洋研究開発機構
地球環境研究部門
北極環境変動研究センター
上席研究員(シニアスタッフ)吉田 弘氏

私たちが考える海の未来のビジョンはAIロボティクスやICTを活用した、海洋におけるライフスタイルの変革です。将来的には、例えば海中の状況をリアルタイムで把握し、漁業や点検作業をオフィスや自宅から「テレワーク」できる世界の実現を目指しています。海洋で新たな産業を創出するためには、スタートアップでも挑戦できる浅海でのビジネス開発が欠かせません。そして、その実現には、外乱抑制技術や低コストなナビゲーション技術、データ収集・活用といった個別の要素技術に加え、社会課題の解決を見据え要素技術を統合するシステム化技術も重要です。社会課題の解決につながる海洋ロボティクスに、ぜひ一緒に挑戦していきましょう。

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フロンティア領域を説明するピッチセッションの様子

ピッチ後にはPDとの交流機会が設けられ、早くも多くの来場者が活発な議論を交わしました。重視するのは完成度の高さではなく、「変革の可能性」です。日本の未来を占う画期的なアイデアをお待ちしています
※2026年度のRFI実施期間は2026年7月1日から8月19日正午まで

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