NEDO Web Magazine

ロボット・AI・福祉機器

自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業(2020年度~2021年度)

人とロボットが共存する日常を目指す「自動配送ロボット ハコボ」

パナソニック ホールディングス株式会社

Sep. 2023

INTRODUCTION 概要


パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)※ は、2015年頃から自動運転車の研究開発を開始し、2019年8月に同社構内で建屋から建屋に社員を運ぶ自動運転車のサービスを開始しました。その後、新型コロナウイルス感染症の流行によって社員が出社しなくなったため、人を運ぶよりも物を運ぶほうが有望だと考え、2020年7月から物を運ぶ自動走行ロボットの開発を始め、4か月後の2020年11月に「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン」(以下、FSST)内で、日本初の住宅街向け配送サービスの実証実験を開始しました。NEDOプロジェクト「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」(2020年度~2021年度)に採択されたことで、ロボット開発の速度が加速し、ロボットの稼働台数を段階的に増やし、2021年8月には4台のロボットを同時に運用するようになりました。2022年4月には日本で初めて保安要員をなくしたフルリモートでの公道走行の道路使用許可を取得し、オペレーター1名によるロボット4台のフルリモート運用を実現しました。さらに、2022年度から「革新的ロボット研究開発基盤構築事業」に採択され、1人10台以上の運用を目指した遠隔監視・操作システムの高度化に取り組んでいます。

※ 2022年4月より、会社名をパナソニック株式会社からパナソニック ホールディングス株式会社に変更。記事中では、パナソニック ホールディングス株式会社で記載

BIGINNING 開発への道


新型コロナウイルスの流行により対象を人から物へシフト

パナソニックグループでは、古くから自動車メーカーに部品や技術を提供するオートモーティブ事業を手がけていました。グループの経営機能に加え、グループを横断する先端研究・開発の機能も持つパナソニックHDは、オートモーティブ事業を下地に、自動車メーカーへの部品供与ではなく、自ら自動車サービスを提供するモビリティ事業への取り組みを始めました。2015年頃から自動運転車の研究開発をスタートし(写真1)、2019年8月にパナソニック本社構内で、建屋から建屋に社員を運ぶ自動運転車のサービスを開始しました。このサービスは2021年9月まで実施され、遠隔管制技術のノウハウを蓄積していきました。これに加え、自律移動ロボットの開発についても取り組みを進めてきました。2004年頃から人共存環境でも安全に走行できるロボット技術を重点に開発し、病院内での搬送業務を支援する自律搬送ロボット「HOSPI」(写真2)や屋内での移動支援を行うロボティックモビリティ「PiiMo」(写真3)の事業化を進めてきました。

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左から
写真1 パナソニック本社構内での自動運転車による移動サービス(資料提供:パナソニックHD株式会社)
写真2 自律搬送ロボット「HOSPI」(資料提供:パナソニック プロダクションエンジニアリング株式会社)
写真3 自動追従機能を搭載したロボティックモビリティ「PiiMo」(資料提供:パナソニック プロダクションエンジニアリング株式会社)

しかし、2020年春頃からの新型コロナウイルス感染症の流行により、実証実験を行っていたパナソニック本社でも在宅勤務者が増加し、自動運転車サービスの利用者が減少。市中の人流減少に加え、宅配要望の急増による配送人員の不足といった問題が顕在化してきました。人よりも物を運ぶ物流にこそ、モビリティのニーズが増えていくであろうとの考えから、2020年7月より、それまで培ってきた自動運転技術と人共存ロボット技術を応用した、自律走行ロボットを活用した公道走行対応の自動配送サービスの取り組みを開始しました。(写真4)このとき開発された自律走行ロボットが「自動配送ロボット ハコボ」です(ハコボは後にFSSTの住民の方々によって命名された名前です)。

パナソニックで長年、さまざまなロボット開発に携わってきた、パナソニックHD 技術部門 テクノロジー本部 デジタル・AI技術部門 モビリティソリューション部 1課の藤川大さんは、ハコボについて次のように語りました。

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写真4 自律走行ロボットを活用した公道走行の検証(資料提供:パナソニックHD株式会社)

「ハコボは、法律上は遠隔操作型小型車に分類されます。2023年4月に「道路交通法の一部を改正する法律」が施行され、遠隔操作型小型車であれば、歩行者扱いで走行させられるようになりました。このおかげで、ハコボをより人間の生活域に近い場所で活用できるようになりました。現在携わっているハコボは、ロボットを利用した配送ソリューションですが、将来的には、配送だけでなく、さまざまな事業エリアにロボットを導入していくインフラ事業にしていきたいと考えていますので、マルチにサービス対応できるようなロボット開発を目指しています」(藤川さん)

ハコボは道路交通法上では遠隔操作型小型車という分類になりますが、実際にはオペレーターがいちいち操作するのではなく、ほとんど自律で走行し、何らかのトラブルがあったときにのみ、オペレーターが遠隔から操作を行うことができるという仕組みになっています。また、遠隔から操作を行うための管制センターも全国3か所に設置されています。

BREAKTHROUGH プロジェクトの突破口


日本初の住宅地での自律ロボット稼働

パナソニックHDがハコボの開発を開始してから4か月後の2020年11月、藤沢のスマートシティFSSTで、自律走行ロボットを活用した公道走行対応の自動配送サービスの取り組みがスタートしました。FSSTは、2014年11月にグランドオープンしたパナソニック藤沢工場跡地に造成されたスマートシティです。面積は東京ドーム4個分の約19ヘクタールで、2000人を超える住民が暮らしています。FSSTでのハコボの公道走行実験は、住宅地での自律ロボットの稼働として、日本初の事例になります(写真5)。

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 写真5 FSST内を走行するハコボ(資料提供:パナソニックHD株式会社)

この公道走行実験の開始とほぼ同じタイミングで、パナソニックHDはNEDOの「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」に採択されました。同事業は、自動走行ロボットによる物流拠点から住宅や指定地への配送(ラストワンマイル配送)における「遠隔・非対面・非接触」の実現を掲げ、10事業種12社が参画。パナソニックHDが受託した実証テーマは、「住宅街向け小型低速ロボットによる安全・安定なラストマイル配送サービスの実現」というもので、住宅街や集合住宅において、遠隔監視・制御された複数台の小型低速ロボットによるラストワンマイル配送のためのシステム構築が求められました。

NEDOの後押しによりさまざまな検証課題をクリアー

モビリティサービスプラットフォームX-Area(クロスエリア)事業の責任者であるパナソニックHD モビリティ事業戦略室 RaaS事業戦略担当主幹(兼)X-Area事業推進プロジェクトCEOの東島勝義さんは、NEDOプロジェクトへの応募理由とNEDOから支援を受けるメリットを次のように語りました。

「自律走行ロボットの活用実証実験において、公道でロボットを走行させることは一つの大きなステップアップであり、一企業の思いだけでスタートするのはなかなか難しいという側面がありました。特にパナソニックグループのような母体の大きな会社ですと、問題が起きた際に周辺に及ぶ影響も大きくなってしまいます。そういった意味で国の施策と連動したNEDO事業に採択頂いたことは、開発を進める上で非常に大きなポイントでした。おかげで、実証地区の住民の方たちにも好意的な評価をいただけたのと同時に、社会実装に向けてクリアーしていくべき課題も多く見出すことができました」(東島さん)

NEDOの支援を受けた2020年度から2021年度にわたり、同プロジェクトにおける実証実験では、さまざまな検証項目(表1)が挙げられ、NEDOの支援を受けながら、これらの検証課題をクリアーしていくことで、パナソニックHDのロボット開発速度はさらに加速することになりました。

NEDOプロジェクトでの主な検証項目
人や自転車などを対象とした障害物検知・停止あるいは回避技術の検証
想定される限定環境下での指定ルートの自律移動技術の検証
状況に応じたロボットの手動操作も可能な遠隔監視システムの検証
ロボットの自律走行のための自動地図生成技術の検証
配送側・受取側の双方の利便性を向上するユーザーインターフェースの検証
ロボット本体の異常検知技術の検証
リアルタイム遠隔監視のための通信安定度評価の検証
人との共存環境におけるロボットの受容度(速度、距離、大きさ等)の調査

表1 NEDOプロジェクトでの主な検証項目

約1年半にわたる公道走行実験の蓄積によりフルリモート運用を実現

人との共存、安全・安心な運用という側面のほかに、もう一つの課題としてあったのが、運用コストの問題です。自律走行ロボットを利用した配送サービスを社会実装するためには、運用コストを下げる努力も重要になります。そのためには、1人のオペレーターが複数のロボットを制御する必要があり、運用台数が多いほどコストは下がります。パナソニックHDでは、当初から1人で複数のロボットを運用するシステムを作ることを念頭において開発を行ってきました。FSSTでの実証実験開始時は、オペレーター1人につきハコボ1台の運用でしたが、3か月後の2021年2月には制御するハコボを2台に、2021年6月には3台、2021年8月には4台にまで増やすことに成功しています(写真6)。しかし、当初は市中を走行するハコボの運用には1台ごとに1人の保安要員の帯同が必要で、ハコボと保安要員の距離も5m以内と規定されていました。そのため、実際のサービスとして商用化するのはまだ現実的ではありませんでした。

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写真6 1人で複数台のハコボを制御(資料提供:パナソニックHD株式会社)

その後もパナソニックHDは、ハコボの保安要員なしでのフルリモート運用に向けて、実績を積み重ねていきました。2021年8月にロボットを4台に増やしましたが、その時ロボットと保安要員との距離が10m以上にまで緩和され、徐々にフルリモート運用に近づいていきました。こうした段階的な進化を経て、ついに2022年4月、保安要員なしでハコボ4台を1人のオペレーターが遠隔から監視するフルリモート運用をスタートさせることができたのです(図1、写真7)。保安要員なしでのフルリモート運用は日本初となる快挙ですが、この道路使用許可を得るのがとても大変だったと東島さんは振り返ります。

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図1 遠隔監視・操作者1名でロボット4台のフルリモート運用を実現(資料提供:パナソニックHD株式会社)


PHD_写真7.jpg 写真7 遠隔監視・操作者1名でハコボ4台のフルリモート運用する様子(資料提供:パナソニックHD株式会社)

「この分野ではパナソニックHDが先駆者的なポジションでしたので、すべてが初めてのことばかりでした。警察庁への許可申請に際しても、ハコボの安全性を証明しなければならないのですが、何をもって安全だと言えるのか基準がない状態でしたので、各省庁と話し合いながら決めていき、こうした基準をクリアーしてほしいという要望をもらい、それをシステムに反映していくという進め方でしたので、時間もかかりました」(東島さん)

将来的に目指す実社会への実装という課題においては、住民や配送業者等の理解促進も必要です。パナソニックHDによるFSSTでの実証実験では、ハコボによる荷物の配送だけでなく、住民による命名募集、親子ハコボ見学会など、住民に愛され親しんでもらうためのイベントも行ってきました。配送サービスエリアも順次拡大しており、ハコボも街の一員として迎えられ、住民が当たり前のようにロボット配送を利用できる日常に向けた努力が続けられています(図2・写真8)。

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図2 継続的な街に溶け込む仕掛けづくり(資料提供:パナソニックHD株式会社)

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写真8 親子ハコボ見学会で子供たちが描いたハコボの絵(資料提供:パナソニックHD株式会社)

FOR THE FUTURE 開発のいま、そして未来


1人で10台以上のロボットの遠隔監視

2022年4月に1人のオペレーターが4台のハコボを監視し、保安要員なしでのフルリモート運用を実現したことで、パナソニックHDの自律走行ロボットを活用した公道走行対応の自動配送サービスは一つの節目に到達しました。しかし、それ以降もハコボはまだまだ進化を続けています。パナソニックHDは、2022年度からスタートしたNEDOの「革新的ロボット研究開発基盤構築事業」に「人共存下における配送ロボット・運行管理システムの開発と住宅街などでの配送サービスの実現」というテーマで採択されました。

現在は、1人で4台のハコボを遠隔監視して運用していますが、これを10台以上に増やすため、AIを導入して監視の優先順位などを判断する仕組みや、監視をアシストするための歩道/車道境界検知AIモデルを開発中です。

人と共存するロボットに向けて

2023年4月には、「道路交通法の一部を改正する法律」が施行され、これまでは毎回道路使用許可を取得する必要があったハコボのような遠隔操作型小型車の公道走行が、届出を出すだけで走らせることができるようになりました。これを受け、パナソニックHDは、2023年7月に日本初となる届出制に基づいた自動配送ロボットの運用をスタート。さらに、東京都千代田区丸の内でも飲料やカプセルトイの移動販売サービスも実施(写真9)し、地域住民だけでなく、その地区への訪問客も多い場所でのサービス運行も行っています(写真10)。また、パナソニックHDは、この「道路交通法の一部を改正する法律」の施行に合わせて、安全基準やガイドライン等を策定した一般社団法人ロボットデリバリー協会の創設に発起人として関わり、これまでのサービス実証実験で得た知見に基づき、それらの策定にも参画しています。

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写真9 移動販売サービスを提供するハコボ(資料提供:一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会)

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写真10 多くの人が行き交う丸の内の街中を走るハコボ(資料提供:一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会)

2023年4月には経済産業大臣がパナソニックHDを訪れ、自動配送ロボットに関する同社の取り組みを視察、その普及支援を表明するなど、日本発のイノベーションへの発展に期待が寄せられました。企業の敷地内や特定エリアの公共区域から始まった自律走行ロボットによる配送業サービスへの挑戦は、現在の配送業における業務をロボット管理業へとシフトさせ、やがて街中にロボットと人間が共存する日常へと繋げるべく、今も開発が進められています。

開発者の横顔


受け入れてもらって初めて新しい世の中を作っていく仕事になる

パナソニックHDのモビリティサービスプラットフォームX-Area(クロスエリア)事業の責任者であり、ハコボを利用したサービスの社会実装に向けて尽力してきた東島勝義さんは、ハコボから品物を受け取る人の姿に感動を覚えたと言います。たとえば配送で伺った先や、移動販売などで、周囲に配達員も販売員もいない状態のロボットから、果たして本当に人が物を受け取ったり、買い物をしたりするのだろうか?と半信半疑な気持ちもあったそうです。

「ハコボを陰から見守っていて、自分たちの作ったロボットからお客様が荷物や商品を受け取っているところを目にした瞬間はやはり感動しました」

このとき初めて、自分たちのやっていることには意味があると思え、それをユーザーに届けることができているのだと実感できたのだそうです。

「世の中にない物を作っている、自分たちで切り開いているという自負もありますが、それだけでは足りず、それを受け入れてもらうことで初めて新しい世の中を作っていく仕事になるのだと思います」

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パナソニックHD株式会社 モビリティ事業戦略室
RaaS事業戦略担当主幹(兼)X-Area事業推進プロジェクトCEO
東島 勝義 さん

また新しい場所へハコボを連れて行こう

ハコボのハードウェア側の開発を担当している藤川大さんは、新しい現場でハコボを走らせるその瞬間に、この仕事のやりがいを感じるといいます。

「ハコボをFSST以外の別のエリアに持っていくと、エリアごとに違う反応があるので、また新しい場所へハコボを連れて行こう、今度はどういうふうに反応してもらえるだろうという気持ちを持てるんです。ハコボを連れて行く場所を広げていくことが、みなさんのお役に立てる場所を広げていくことだと思えるので、それを愚直に続けていけるといいなと思っています」

労働人口が減って働き手も少なくなっていくこれからの社会課題を解決できるのはモビリティだと考えていた藤川さんは、大学では電気自動車のモーター制御を研究していました。

「車が自動運転で動いたら楽しいだろう、親も喜ぶだろうなと、そんなことを想像しながらモビリティの将来に関わるところで活躍したいという思いがありました」

そんな思いが、現在、自律走行ロボット開発に携わり、社会課題を解決する仕事に注力する藤川さんの原動力になっているそうです。

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パナソニックHD株式会社 技術部門
テクノロジー本部 デジタル・AI 部門
モビリティソリューション部 1課
藤川 大 さん

なるほど基礎知識


人と共存する自律走行ロボットに求められる要件

ロボットと人が日常生活の中で共存するには、さまざまな仕組みが必要になります。

最も基礎となるのは、人や障害物を検知する各種センサーの搭載です。最近では、自動車などにも衝突防止用のセンサーが搭載されていますが、ハコボにも、さまざまなものを検知するセンサーが搭載され、危険を察知すると自動的に停止します。センサーは高い耐久性を持っているのと同時に、故障を検知するシステムも組み込まれています。

車道と歩道の識別、横断歩道や段差などの認識といった、屋外の環境認識も必要になります。行き止まりに当たった際の後退判断、越えられない段差を検知した際の迂回路の探索といった機能のほか、交通ルールなど人間の生活に準拠したルールを守る仕組みも必要になります。さらに、画像解析による状況判断などAIによる危険予測の研究もされています。

屋外活動が基本となるロボットには、雨天や降雪などの悪天候時でも稼働できる全天候対応の設計も必要になります。ハコボの実証実験は、熱中症が心配されるような猛暑日のなかでも行われましたが、そんな日でもハコボは人間に代わって炎天下での配送の仕事を続けられ、テスト担当者はエアコンの効いた涼しい室内で監視をしているだけで済んだそうです。

人の往来のある場所での走行には、ディスプレーへの表示や音声による周囲の人への注意喚起も必要です。大型車が曲がり角を曲がる際、音声で曲がりますと周囲の人に注意をうながすのと同様に、ハコボも次の動作を周囲の人に伝えることで、予めその動きに備えてもらうよう働きかける機能が搭載されています。また、運用面での工夫として、人が歩いてくることを検知したら、たとえぶつからなさそうな場合でも、あえてハコボ側が停止して「お先にどうぞ」と音声を流して、人を優先させ、人が通り過ぎてから再び動き始めるようにしています。

こうしたリスク回避機能はロボットの自律運転時を想定したものですが、もちろんこれですべてのリスクが排除できるわけではありません。ハコボの運行時には管制センターのオペレーターによる、ハコボに搭載されたカメラ映像のモニタリングと、通信による遠隔操作が可能になっています。また、管制センターとの通信が途切れた場合には基本的に自動停止する設計になっていますが、それが横断歩道を進んでいる途中であれば、横断歩道を渡り切るまで移動を止めないといった状況判断もハコボが自動でできるような工夫も施されています。(図3)

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図3 自律走行ロボットに求められるさまざまな要件

NEDOの役割

「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」
2020~2021年度

ロボット・AI部

ラストワンマイル配送を巡っては、物流分野の人手不足、宅配便取扱個数の増加、生活必需品などの調達ニーズの増加といった課題が顕在化しています。ラストワンマイル配送におけるこれらの課題への対応策として、自動走行ロボットを活用した新たな配送サービスの早期実現が求められています。

NEDOでは、開発状況を確認するとともに、外部有識者による技術指導、展示会への開発品の出展、セミナー・シンポジウムによる開発技術の発信、海外動向調査結果の共有などの支援を行いました。

パナソニックHD株式会社は、本事業にて、遠隔監視・操作による複数台の自動走行ロボットの同時監視技術を開発し、FSSTにおいて配送サービスを実施しています。

NEDO担当者の声(鶴田壮広さん)

パナソニックHDの提案を採択させていただいた理由は 、技術面と社会受容性という2つの面から課題を認識し、バランスの良い計画を立てていただいたところにあります。複数台のロボットを遠隔監視・操作するというかなり挑戦的な内容でしたが、日本企業のトップランナーとして、達成してくれるだろうと期待しました。

プロジェクト実施中は、社会受容性を高めるためにセミナーやシンポジウムを積極的に開催し、パナソニックHDの方にも登壇していただきました。広く世間に周知するという意味では良かったと思います。また、本プロジェクトはパナソニックHDの他にも3社が参画されていて、同じ目的に向かって、それぞれ異なる方法でアプローチしてプロジェクトを進めていきましたが、各社それぞれが抱える悩みやヒヤリハット事例等を、実施者間で共有する情報共有会を開催し、課題解決に向けて協力していける取組も行いました。

パナソニックHDが素晴らしかったのは、技術面の開発だけでなく、開発したロボットで何を運び、どういった用途で使うのか、運ぶ以外にどういった利用用途が考えられるかなど、ユースケース開発に非常に積極的に取り組んでいただいたことです。

本プロジェクトを通じて、技術面はもちろん、ビジネス面、ユースケース開発の重要性を改めて実感することができました。現在は1人で10台のハコボをコントロールするという次の目標に向けて新しいプロジェクトが進められていますが、支援を続けていきたいと思います。

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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
ロボット・AI部主査 
鶴田 壮広 さん

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