NEDOのプロジェクト支援はこう変わる
初開催「NEDOサミット」で紹介、産学との対話を通じ案件を育てる
NEDOは、2026年6月15日に「NEDOサミット」を東京・高輪ゲートウェイで開催しました。研究開発について、NEDOのプロジェクトマネジメントの新しいかたちを紹介するとともに、NEDOが注目する最先端・未開拓な研究開発領域(フロンティア領域)について、産学の研究者、政府関係者、投資家などのステークホルダーと議論を深める場として開催したイベントです。
NEDOサミットのメイン会場。満席の大盛況となった
本サミットに先立ち、NEDOは2月19日に「プロジェクトマネジメントの進化に向けて」を公表しました。その中では、プロジェクトマネジメントの進化を通じた、研究・開発から事業化までのNEDOならではの支援を途切れなく提供する新しい試みを発表しています。
これを踏まえ、イベントの開会挨拶で、NEDOの斎藤理事長は「本サミットは、研究開発を支援するファンディング・エージェンシー(資金配分機関)として進化し続けるNEDOの今、そして、これからを皆さんに紹介するために初めて開催するものです」と説明しました。
NEDOの斎藤理事長
NEDOのプロジェクト支援状況については、2026年度で90件以上、エネルギーや環境分野に加え、半導体、AI、量子など産業競争力の強化につながる分野に支援を拡大しています。特にAIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発や、次世代地熱発電など報道で大きく取り上げられる大型プロジェクトにも着手し、社会の関心が高まっている状況です。
一方で、NEDOは近年、スタートアップや大学の研究への支援を強化しています。実際に、2025年にノーベル化学賞やノーベル生理学・医学賞を受賞した日本人研究者がそれぞれ関わるスタートアップへの支援も行い、基礎研究の社会実装を担う役割を果たしてきました。
この背景には、世界的なイノベーション競争の激化があります。将来の産業の柱は、大型プロジェクトのみならず、大学や研究現場から出てくる新しい技術シーズを、いかに早く社会実装につなげるかが鍵を握ります。今回のサミット会場においても、スタートアップ支援の制度紹介や相談会、スタートアップのピッチイベントを行うなど、実際にスタートアップ支援の後押しにも取り組みました。
開催されたNEDOドリームピッチ
一方、世の中にはまだない、破壊的イノベーションを生み出すためには、研究資金を配分するだけではなく、案件形成の段階から関与する仕組みが必要です。そこでNEDOは2月に公表した「NEDOによるプロジェクトマネジメントの進化に向けて」において、(1)プロジェクトの企画・立案機能の強化、(2)伴走支援力の強化によるプロジェクト実施中のマネジメントの高度化、(3)プロジェクト終了後の事業化支援の強化、という3つの方向性を打ち出しました。
「プロジェクトマネジメントの進化について」をテーマにサミットで登壇したNEDOの吉田理事は基調メッセージの中で、この3つの方向性を踏まえ、「ハイリスク・ハイインパクトな研究開発では、プログラムディレクター(以下、PD)が産学とコミュニケーションを行うことでじっくり案件を形成し、その後に公募を行うモデルへの転換が重要だ」と強調しました。この新たなモデルの中核を成すのが、ARPA-E(米国エネルギー高等研究計画局)の取り組みを参考にした「フロンティア育成事業」です。なお、ARPA-Eは国防総省のDARPAをモデルに、エネルギー分野のハイリスク・ハイインパクトな研究開発に対してファンディングを行う機関です。
これまでNEDOの事業では、産学から自由な提案を募る「提案公募型」と、あらかじめ設定した課題に対して実施者を募集する「課題設定型」があり、提案公募型は自由度が高い一方で採択率が低い、課題設定型は採択確度が高い反面対象が限定される、という課題がありました。2025年5月から始まった「フロンティア育成事業」は、その両方の長所を取り入れた“ハイブリッド型”を目指します。
NEDOの吉田理事
NEDOとARPA-Eは2023年にMOUを締結し、日米の重点技術分野における連携や人材交流などを進めてきました。本サミットでも講演いただいたプロハスカ長官とは、今年4月に米国サンディエゴで開催されたARPA-EサミットにNEDOの横島副理事長が訪問した際にも会談するなど関係を深め、NEDOにおいても、ARPA-EのようにPDが明確な権限を持ち、産学の対話を通じて案件そのものを育てていくアプローチを取り入れていくこととしました。
吉田理事は、今回のNEDOサミットが出発点になると位置付けます。まず、本サミットでNEDOが注目するフロンティア領域を各PDによる「Fast Pitch」で提示。これを踏まえて2026年7月1日からRFI(Request for Information)で広くアイデアを募集。その後2027年1月頃に正式公募を行うという3段階プロセスを採用することを紹介。吉田理事は、「この新しい取り組みは、NEDOにとってもチャレンジ。皆さんとともにより良いプロジェクトを作り、より良い経済、社会に貢献していくことがNEDOの思いです」と意気込みを語りました。