Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【92】海洋ロボ工学で産業開く(2026年9月23日紙面掲載分)

「テレワークで」

「テレワークで海洋ビジネスをできる世界を実現しよう」―。6月15日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は注目する最先端・未開拓な研究開発領域(フロンティア領域)について、産学官の関係者や投資家などのステークホルダーと議論を深めるために「NEDOサミット」を開催した。NEDOが注目する各フロンティア領域について担当のプログラムディレクターがプレゼンしたが、冒頭のメッセージは、その一人として筆者が掲げたビジョンである。

「海の仕事は現場に行ってなんぼのもの。海を知らないやつに海の仕事なんぞできん」との批判もあろうが、少子高齢化が進み、過酷な現場労働を忌避する世代が増える中、これまでのやり方だけでは日本の海洋産業は衰退するのではないかという危機感であえて提示した。

外乱抑制に課題

挑戦的なビジョン実現の課題は少子高齢化対策と海洋での安全性確保であり、解決のカギは海洋ロボティクスだ。人は海洋に容易にアクセスできない。ならば最初から人が行かない選択を追求できないだろうか。そこで、ソリューションとしての海洋ロボットの使い方を考える。それを抜きにして個別の要素技術を磨き込んで海洋ロボットを作ったところで、「実際どう使うのか」「本当に必要なのか」という疑念や反発に遭うだろう。

例えば、港から無人で航行して港湾施設を点検して戻ってくるためのロボットのニーズがあるとしよう。すると必要な技術が浮かび上がってくる。ある程度荒れた海でも利用でき、海象が悪化しても帰港できなければならない。そのためには外乱を抑制できる技術開発がテーマとなる。

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海洋ロボットに作用する主な外乱

設計から見直し

工場などで使われるロボットの開発プロセスでは作業内容に焦点を置く。しかし、海洋では天候などの外乱が加わるため、作業以前に作業場所への往復やその場にとどまること自体が困難だ。これに対処するには機体設計そのものから見直す必要があるかもしれない。これは、人が海洋にアクセスする場合には勘所として会得してしまっている事項をひも解き、海洋ロボットに実装していく開発となる。従来のロボット開発とは異なるアプローチが必要だ。

NEDOのフロンティア育成事業「海洋ロボティクス」では、こうした課題の解決に向けた研究開発を進めていきたい。人と海との関わり方そのものを変えるようなイノベーションで新しい海洋産業を切り開いていきたい。

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NEDO
イノベーション戦略センター(TSC)
海洋ロボティクス領域 プログラムディレクター
吉田 弘(よしだ ひろし)
1999年、金沢大学大学院にて博士(理学)取得。JAMSTECにて海洋ロボティクスを用いた深海・極域観測技術や海中通信技術の研究に従事。近年は海洋観測とエネルギー・環境分野の融合領域にも取り組み、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に資する技術開発を推進。2026年から現職。

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