Focus NEDO

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【91】光計算、電力の壁超える(2026年9月16日紙面掲載分)

AI時代突破口

産業活動でますます利活用が進み、生産労働人口減少といった社会課題解決への貢献が期待されるAI(人工知能)だが、その開発および利活用に消費される膨大な電力消費が世界的な課題となっている。

将来的にはデータセンターの消費電力が国家規模の電力インフラに影響を与えるとの懸念もある。計算能力の向上と消費電力の抑制を両立する新たなコンピューティング技術が求められている。

有力候補として注目をされるのが、「光(フォトン)」そのものを演算媒体として利用する「フォトニクスコンピューティング(全光演算)」である。従来の光通信や光電融合とは異なり、データの伝送だけでなく計算そのものを光で実行する点に特徴がある。

従来のコンピューターは電子の移動によって計算を行うため、配線抵抗によるエネルギー損失が避けられない。これに対しフォトニクスコンピューティングでは、光波の干渉や回折、位相変化を利用して計算を行うため、理論上は電子回路よりも高速かつ低消費電力で並列演算を実行できる。特にAIの推論や学習で頻繁に使われるベクトル・行列積演算との相性が良い。

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フォトニクスコンピューティングの概念図

日米中で激化

研究開発競争も激化している。米国、中国などの研究機関、スタートアップなどが、高性能のフォトニックAIプロセッサーを発表している。日本でも、産業技術総合研究所や東京大学をはじめとする研究機関が、シリコンフォトニクス技術を活用した光ニューラルネットワークや光演算回路の研究開発を進めている。

もっとも、実用化への課題は少なくない。大規模集積化、学習などによる計算アルゴリズム書き換え、演算精度を高める誤差補正、メモリーとの連携など多くの課題も残っている。また、高精度な光デバイスの量産やソフトウエア開発環境の整備も求められる。

完全なフォトニクスコンピューターの実現にはまだ時間を要するとみられる。そこで、電子回路を完全に置き換えるのではなく、AI演算の中でも特に計算負荷の高い部分だけ光が担う「光演算アクセラレータ」としての導入が有力視されている。

世界的なAI需要の拡大と脱炭素化の要請が重なる中、フォトニクスコンピューティングは「高性能」と「省エネルギー」を両立する次世代計算基盤として期待される。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)イノベーション戦略センター(TSC)は、2024年度から分野全体を俯瞰(ふかん)した調査・分析に基づき、日本が新たに取り組むべき領域や取り組みを強化すべきフロンティア領域を提案する「Innovation Outlook」を発行しているが、「フォトニクスコンピューティング」もフロンティア領域の候補と位置付け、具体的な支援の検討を行っている。

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NEDO
イノベーション戦略センター(TSC)
デジタルユニット ユニット長
横井 一仁(よこい かずひと)
1986年に東京工業大学大学院修了後、機械技術研究所入所。産総研でヒューマノイド研究やAI戦略を主導し、臨海副都心センター所長などを歴任。2025年からNEDOイノベーション戦略センターデジタルユニット長。早稲田大学客員教授を兼任。日本ロボット学会副会長。博士(工学)。

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