NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。
【84】大容量エネ貯蔵 日本発の手法模索(2026年7月22日紙面掲載分)
電力を熱などに
太陽電池の導入が進むと、曇天や嵐に備え、数時間分以上のエネルギーを貯蔵することが必要になる。しかし、蓄電池は容量を増やせばその分コストや資源使用も比例して増大するという制約を抱えている。こうした中、注目されているのが、電力を熱や圧力、重力などのエネルギー形態で蓄える、蓄電池に頼らない大容量のエネルギー貯蔵システム「LDES」だ。電力を熱などに変換したエネルギーを、構造が単純で拡充が容易なタンクのような容量部で貯蔵するため、大容量のエネルギー貯蔵に向いている。
大胆な低コスト化など、LDESの魅力向上に向けた指針例
世界で競争激化
国内ではあまり知られていない技術だが、世界では競争が激化している。世界のLDES年間導入容量は、2025年からの10年間で12倍になると予測されている。将来性を見越し、欧米では数多くのスタートアップが設立されている。米国のアントラエナジーは、炭素ブロックを用いて2400℃もの高温でエネルギーを貯蔵するシステムを開発している。スイスのエナジーヴォールトは、大量の重りとそれを吊り上げるクレーンで構成される高さ120メートルの巨大ビルを建設し、2024年にエネルギー貯蔵運転を開始している。
ユニークなのは米国のレネウェルで、使われなくなった枯渇油井内に重りを吊り下げ、その上昇下降でエネルギーを貯蔵する技術を開発している。枯渇油井は米国、カナダに160万本あり、深さは平均1600メートルに及ぶ。それらを転用することでコスト削減を図ろうとしている。
自由なアイデア
残念ながら日本に枯渇油井はなく、エナジーヴォールトのような大規模施設を建設する場所を探すのは難しい。では、日本はLDESの立地に向いていないのだろうか。例えば、国内の地形や既存施設で活用できる場所はないだろうか。熱を使うLDESならば、蓄電池や重力利用型のLDESにない価値を提供することもできる。LDESで期待されるのは自由度の高いアイデアだ。従来の枠にとらわれず、私たちの英知を結集し、日本発の革新的LDESをつくれないだろうか。そのような思いで、去る6月15日に開催した初めてのNEDOサミットでは、新たなプロジェクトの候補としてアイデアを広く集める呼びかけを行った。意見招請(RFI)を8月19日まで行っているので、我こそは、という方はぜひ提案をお寄せいただきたい。
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NEDO
イノベーション戦略センター(TSC)
サステナブルエネルギーユニット ユニット長
原 重樹(はら しげき)
1995年東大院にて博士(工学)を取得。産業技術総合研究所(産総研)にて分離膜や水素に関する研究開発に従事。その後、研究・組織マネジメントを経験し、2024年から現職。