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長期エネルギー貯蔵-再エネを主軸に据えた電力供給に不可欠-

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もし、太陽が沈んだ夜にも昼間の太陽光発電のエネルギーを自由に使えたら。さらに、風が吹いていないときにも風力発電のエネルギーを活用できるとしたら──。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が注目する「長期エネルギー貯蔵」なら、それが可能になります。長期エネルギー貯蔵(Long Duration Energy Storage, LDES)とは、発電されたエネルギーを長時間(おおむね8時間以上)蓄えておき、必要なときに電力や熱として供給する技術の総称です。昼間や風況の良い日に余った電力を貯金し、夜間や無風時に引き出して使う仕組みであり、発電量が天候や季節変動に影響されるという課題を抱える再生可能エネルギーを電力供給の主軸に据えることが可能になります。世界的に注目を集めており、エネルギー供給インフラとしての社会実装が進んでいます。想定される市場規模は大きく、2033年には世界市場が2,048億ドル規模に達するとの予測もあります*1

*1 Dimension Market Research レポート https://dimensionmarketresearch.com/report/energy-storage-market/#overview/

NEDOは、太陽電池や風力発電など変動性のある再生可能エネルギーの大量導入を可能にする長期エネルギー貯蔵の技術をフロンティア領域として提案しています。電源構成における再生可能エネルギーの比率が50%を超えるとリチウムイオン電池では電力供給の変動への対応が難しくなる可能性があります。日本は、2040年度の電源構成における再生可能エネルギーの比率として45割程度を目標としており、それに備えて今から長期エネルギー貯蔵技術の研究や実証を進める必要があります。また、長期エネルギー貯蔵は災害発生時の非常用電源としても活用できます。

多種多様な長期エネルギー貯蔵の技術

エネルギー貯蔵は、発電した余剰電力を一時的に蓄え、必要なときに放出する技術であり、エネルギー供給の大きな変動に対応するための仕組みです。短時間の蓄電技術が数分~数時間の調整を得意としているのに対し、長期エネルギー貯蔵は日をまたぐ需給ギャップや季節単位での変動への対応が期待されています。長期エネルギー貯蔵の技術にも複数あり、それぞれの特長を生かした利用が期待されます。例えば、揚水発電システムは昼間の余剰電力を利用して水を高所に汲み上げ、夜間など需要が増える時間帯に発電するという基本原理を活用しています。長期間、大容量の貯蔵が可能な一方、設置場所に制約があります。最近では、溶融塩や砂を利用した蓄熱技術、地下空間を利用した圧縮空気エネルギー貯蔵技術など、低コスト化が期待される新たな手法が注目されています。

長期エネルギー貯蔵は、大きく以下の4分野があります。

  • 力学的エネルギー貯蔵(揚水発電・圧縮空気など):位置エネルギーや圧力を利用した蓄電方式。既存の建造物や廃鉱を活用することで大幅なコスト削減が検討されています。
  • 熱エネルギー貯蔵(溶融塩・砂など):熱を介してエネルギーを蓄積する技術。顕熱貯蔵(砂や砕石)の大規模化を通じて長時間保持が可能になりつつあります。また、600℃以上の高温保持や潜熱貯蔵(溶融塩)の活用による高エネルギー密度化の取り組みも進んでいます。
  • 電気化学的貯蔵(フロー電池など):蓄電池の電解液をタンクに保持することで大容量かつ長寿命の蓄電を実現する技術。バナジウムフロー電池や亜鉛臭素電池が実用化に向けた開発段階です。
  • 化学的エネルギー貯蔵:余剰電力で水を電気分解して水素を作り、もしくはさらにアンモニアを合成してこれを蓄えることができます。電力需要に応じて燃料電池で発電し、あるいは燃焼してエネルギーを供給します。水素の輸送・貯蔵効率の向上が鍵となっています。酸化カルシウムなど他の化合物でエネルギーを貯蔵する方法も検討されています。

NEDOは、多様な設置環境や目的に対応した技術開発を進めることで、再生可能エネルギーを最大限に活用しつつ、都市部の電力安定化や地域ごとの特性に応じた電力供給の実現を目指しています。

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