
NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

【6】人に寄り添う デジタルの将来像(2025年1月15日紙面掲載分)
AI活用の急進
生成人工知能(AI)元年と言われる2023年以降、世界での生成AIの活用は爆発的に増加している。個人が検索や画像生成などを楽しむだけでなく、ビジネスにおいても事務手続きの簡素化、顧客対応の自動化、プログラム開発の効率化、キャッチコピーの案出しなど、さまざまな場面での活用が進んでいる。
経済発展への大きな貢献が期待できることから、経済産業省とNEDOは日本語や特定業務に特化した生成AIのモデルの開発と利活用を加速するGENIACプロジェクトを推進している。
ロボットの進化
生成AIはスマートフォンやパソコンなどサイバー空間での活用に加え、ロボットの制御などフィジカル空間での活用も期待されている。『喉が渇いた』と言うだけで、ロボットが飲み物を探して運んでくる一連の動作が可能になる。
介護や警護、店舗での作業、家庭内での片付けや調理など、人との接触やコミュニケーションを伴いながらタスクを行うようなヒューマノイド型ロボットの市場が今後大きく拡大する可能性がある。
24年6月に公表したTSC Foresight「人工知能×ロボット分野の技術戦略策定に向けて」では、ロボット制御を可能とするAIのモデル開発やリアルタイム動作を可能にする推論処理などの技術開発を提言した。
デジタルな社会
AIやロボットは今後もさらに発展し、日常的に生活や学業、仕事をアシスタントとして支援することが予想される。将来的には、ルーチンワーク的な仕事の多くが代替され、人々は認知的な仕事や創造的・芸術的な仕事をAIやロボットを活用することで効率的に行ったり、判断や決断を必要とする仕事に注力したりすることが求められると考えられる。
一方で、リテラシーを高めないと新しい技術を十分活用できず、仕事に就けなかったり格差が広がるなど、AIやロボットに依存し過ぎて思考力や判断力が弱まる恐れもある。そうならないためには、技術の発展とともに、社会や人々も自律性やリテラシーを高めるなど、進化することが求められる。

図 デジタル社会において懸念されるネガティブな影響と解決すべき課題
TSCでは、技術側での人に寄り添う工夫や、技術を受容し人々を支援する社会的仕組みの導入など、技術の社会実装に向けて取り組むべき課題を「デジタル社会の将来像」リポートとして近日発信する予定である。これを多方面のステークホルダーの方々と共有して議論し、豊かな未来を実現する取り組みにつなげていきたい。
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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
イノベーション戦略センター(TSC)
デジタルイノベーションユニット ユニット長
伊藤 智(いとう さとし)
1987年筑波大学博士号取得。理学博士。日立製作所、産業技術総合研究所での研究および研究マネジメントへの従事を経て、17年よりNEDO技術戦略研究センター ユニット長。24年7月から現職。