NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【5】社会課題・技術 両面からアプローチ(2025年1月8日紙面掲載分)

2013年当時、私は「FIRST」や「ImPACT」という国を代表するプロジェクトの責任者を務めていた。そんな中、「日本の産業界に有益な情報を提供する」「日本の産業を推進するプロジェクトメイキングをする」のはとても大事であると思ったのが、私がNEDO技術戦略研究センター(現イノベーション戦略センター)(TSC)の初代センター長として新たな道を歩む決断をした理由だ。

シンクタンク

NEDOは、経済産業省傘下の国立研究開発法人であり、新産業を育成し、産業の発展に貢献している組織である。しかし、その起点となるプロジェクトの立案・調査・分析はどこが行うのか。この任務をTSCで引き受けるべく、この10年間、国のシンクタンクとして、先端科学技術の調査、世界の技術動向、産業化の調査、分析、戦略立案、情報発信に取り組んできた。過去10年を振り返り、特に印象に残っているのは、米国エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)との国際連携だ。ARPA-Eは、NEDOと同じく国家プロジェクトを推進する米国の機関であるが、米国機関との意見交換は刺激に満ちたものであり、TSCの発展に大きく寄与した。

ARPA-Eとの関係が今でも続いていることを大変うれしく思う。また、経済産業省の局長との定期的な意見交換会も有効であった。研究者や産業界としての視点を行政に伝える任を果たし、トップダウンで組織の改編につながったこともあった。

社会を変える

現在、TSCは非常に重要な時期を迎えている。気候変動、地球温暖化、寸断されつつあるサプライチェーン(供給網)などの課題に対処し、情報発信と提案を強化する必要がある。特に社会を変える製品・システムを生み出すプロジェクトが重要だ。

単なるバックキャスト型やフォーキャスト型ではなく、その両方を取り入れた“オールキャスティングアプローチ”で取り組み、新たな社会を創るための製品やシステムを生み出していかねばならない。また、海外や学会との連携を強化し、有識者が納得する領域探索とプロジェクト化を進めていく必要がある。

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日本の技術力

“集団脳”として高めあうことがますます大事である。私たちの目指すべきは、“尊敬されるTSC”であることだ。複雑な世界のつながりや急速な技術進展を捉え、産業界と行政が連携し、日本の技術力を世界に再び示すための指針となっていきたい。

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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
イノベーション戦略センター(TSC)栄誉フェロー
大阪大学 産業科学研究所 招聘教授
川合 知二

1974年東京大学大学院 理学系研究科博士課程修了(理学博士)
92年4月 大阪大学 産業科学研究所 教授。ナノテクノロジーセンター長、産業科学研究所所長、大阪大学総長補佐、大阪大学経営協議会委員、NEDO技術戦略研究センター 初代センター長などを経て現職。

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