NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【2】分野横断、日本の勝ち筋探索(2024年12月11日紙面掲載分)

俯瞰的な調査

NEDOイノベーション戦略センター(TSC)は、各産業分野を取り巻く政策動向・市場動向・技術動向を分析し、イノベーション創出に向けて日本産業界が取り組むべき技術開発の方向性を提言する組織である。その中でマクロ分析ユニットは、分野を横断した俯瞰(ふかん)的な視点で、市場動向や技術動向に関する情報収集・分析を実施している。

市場動向の観点では、代表的な最終製品、中間製品、部素材などを含む約1200品目の製品群について、グローバル市場の規模と共に、日本、米国、欧州、中国の企業が生産した売上高、世界シェアを調査している。調査結果(図)から、自動車やエレクトロニクス製品の部素材は日系企業群のシェアが60%以上と寡占状態にある製品が約160品目と、米中欧と比較して突出して品目数が多く、日本産業の強みを持つ分野であることが示唆される。

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図:エレクトロニクスと自動車の最終製品および部素材等の世界市場規模と日系企業群の売上額・シェア
出所:日系企業のモノとITサービス、ソフトウェアの国際競争ポジションに関する情報収集(NEDO、2023)

中でも、昨今グローバル市場での競争が激しい半導体の分野における日系企業群のシェアは、最終製品では10%程度であるのに対して、半導体製造用材料では60%以上であり、フォトレジストやエッチングガスなど一部材料では80%以上と圧倒的に高い。このことは、半導体サプライチェーンのチョークポイントを抑えていることを示しており、日本産業の強みと言って良いであろう。

政府戦略で活用

こうした情報は、従前から経済産業省の「ものづくり白書」にも取り上げられ、さらに、政府の「マテリアル革新力強化戦略」の策定(2020年)およびその推進のための有識者会議において現在も活用されている。

一方、技術動向の観点では、市場化の前提となる特許出願について、出願数やその引用状況の情報を分析している。ここ数年、多数の産業分野で中国の企業・アカデミアからの出願数が圧倒的となっているのに対し、日本の企業からの出願数が相対的に上位にある分野も見いだされている。

特に前述のフォトレジストについては企業別特許出願数の上位に日系企業が多数存在しており、市場動向における高シェアの裏付けとして読み取ることができる。

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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
イノベーション戦略センター(TSC)マクロ分析ユニット ユニット長
山田 英永

91年3月名古屋大学大学院工学研究科修了。91年4月コスモ石油入社。主に石油精製技術の研究開発や、水素・燃料電池やGTLの技術実証事業に従事したのち、16年に中央研究所長。19年4月からNEDO技術戦略研究センターへ出向し現在に至る。

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