NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【50】海洋生分解プラ 新素材・評価手法開発(2025年11月19日紙面掲載分)

追加汚染ゼロに

プラスチックは軽量かつ丈夫で加工性に優れ、日常生活品や工業材料などに幅広く使用されている。その一方で、プラスチック廃棄物を回収、再資源化する技術開発、また回収されず海洋に流出したプラスチックゴミによる海洋汚染への対策が世界的な課題となっている。

2019年6月に開催された20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)において、2050年までに海洋プラスチックゴミによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有された。さらに2023年4月に札幌で開催されたG7気候・エネルギー・環境相会合において、この2050年までに海洋プラスチックゴミによる追加的な汚染をゼロにする目標が、2040年までに前倒しで達成することが合意された。

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長期海洋生分解性プラスチック評価技術開発事業および成果適用のイメージ

社会実装を加速

こうした動きを踏まえ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、海洋生分解性プラスチック素材の開発とともに海洋生分解性の評価手法の国際標準化を計画的、戦略的に推進し、世界に先駆けて大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの実現に貢献している。

カギとなるのは、製品として使用中は必要な物理的性質を維持し、海洋に流出した際には微生物の働きにより水と二酸化炭素(CO2)に分解する特性を持つ海洋生分解性プラスチックだ。NEDOでは、素材開発を推進するとともに、社会実装を加速するため、海洋生分解メカニズムの解明や、生分解性および安全性の評価手法の開発にも取り組んでいる。これまでに、比較的短期間で海洋生分解するプラスチック素材の開発および評価手法の開発を行い、国際標準化機構(ISO)発行に至った成果が得られている。

成果を発信

2025年度からは、海洋で数年から10年以上の長期間使用された後に生分解するプラスチック素材の開発および評価手法の開発を開始している。また、ムーンショット型研究開発事業の中では、生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発にも取り組んでいる。その内容は2025年大阪・関西万博のフューチャーライフエクスペリエンス期間展示会場にて展示され、大きな関心を集めた。

海洋生分解性プラスチックを広く社会に普及させるため、得られた成果を今後も積極的に発信し、同技術への関心・理解を高めてユーザーの掘り起こしにつなげていきたい。

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NEDO
バイオ・材料部
バイオマテリアルユニット
海プラ・バイオ先導チーム チーム長
原田 俊宏(はらた としひろ)
豊橋技術科学大学大学院修士課程修了(生産システム工学専攻)、1994年三菱アルミニウム(現MAアルミニウム)入社。2020年からNEDOに出向、2023年からNEDOに入構して、海洋生分解性プラスチックの技術開発事業、ムーンショット型研究開発事業、国際実証事業などの推進業務を担当。2024年から現職。

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