NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【36】モーター、小型・高出力に(2025年8月13日紙面掲載分)

脱炭素に不可欠

自動車のみならず航空機や船舶も含むモビリティーの脱炭素化に向け、モーターは蓄電池と並ぶ不可欠な技術だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2022年度から次世代蓄電池・次世代モーターの開発事業において、小型・軽量かつ高出力・高効率な「eアクスル」(モーター・ギア・インバーターなどを一体化させたモーターシステム)の開発に取り組んでいる。

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開発中のeアクスル

高速域に課題

モーターは低回転から瞬時に最大トルクを発生するため、低速から中速域で非常に効率が良い。一方、高回転が要求される高速域では逆起電力や鉄損の増大によって効率が低下する傾向があり、その結果、電費が悪化する懸念がある。eアクスルの小型化・軽量化が実現できれば、電費や車体設計の自由度向上につながる。

一つ目が、日立製作所がAstemo(東京都千代田区)、日立インダストリアルプロダクツ(同)、大同特殊鋼、東北特殊鋼とともに取り組む「インホイールモーター」だ。超多極構造でギアは持たず、低回転で莫大(ばくだい)なトルクを生み出すことができる。その名の通り、タイヤのホイール内にそのまま納めることが可能なため、車体設計の自由度を高めることができ、空気抵抗の低減や居住空間や荷室の拡大など、電動車の利便性向上に大きなインパクトを与える。現在、19インチ、16インチ向け油冷モーターの試作を進めている。

二つ目が、ニデックが取り組む希少金属を使わないモーターだ。永久磁石を使わない電磁誘導方式を採用しながら、3万rpm(1分当たりの回転数)を超える超高回転化による小型・軽量、高出力化を狙う。モーターとインバーター、減速機を一体化した3in1形式で最高出力170キロワットという世界に例のない性能を目指す。乗用車市場のボリュームゾーンに向けて、資源リスクを回避し、安定した価格で供給することが期待される。

三つ目が、デンソーが取り組む「空飛ぶクルマ」向けのeアクスルだ。機体重量を軽減しつつ積載重量を上げることが求められ、出力密度は電動車向けモーター単体の3~4倍、16キロワット/キログラム以上に及ぶ。地上交通と空の移動がつながる未来に向け、今後の成長が見込まれる。

5万rpm超目指す

市場ではさらなる高回転化が求められている。NEDOは2040年を見据え、現状、多くの市販車が採用する約1.5万~2万rpmをはるかにしのぐ、世界最高水準の5万rpm超えを目指した研究にも取り組んでいる。

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グリーンイノベーション基金事業:次世代蓄電池・次世代モーターの開発

事業紹介:自動車・蓄電池

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NEDO
自動車・蓄電池部
次世代モーター・車載コンピューティングチーム
チーム長
黒田 尚(くろだ たかし)
IT系分野のエンジニアとして、LSI回路設計、製品・システム設計、商品開発に従事し、管理職までを歴任。2022年度より、グリーンイノベーション基金事業/次世代モーターの開発のプロジェクトマネージャーとしてモーターシステムの高効率化・高出力密度化技術開発を担当。

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