NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

NEDO.png

【32】国内電池産業強化 30年実装への橋渡し(2025年7月16日紙面掲載分)

BEV普及促進

カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けてバッテリー電気自動車(BEV)普及への期待は大きいが、顧客は必ずしも現在の価格と燃費(電費)に満足していない。BEVに対する懸念を払拭し普及を推し進めるため、NEDOは2022年より次世代蓄電池・次世代モーターの開発事業において、全固体電池、次世代液系リチウムイオン電池(LiB)、全固体電池向け材料の開発といった車載蓄電池の高性能化、材料のサプライチェーン(供給網)安定化、さらにリサイクル技術の開発を進めている。

img_nikkan_250716_Fig_Zenkotai_Battery_2.png

上:全固体電池生産パイロットライン、左下:全固体電池試作工程、右下:全固体電池セル
(いずれも日産自動車提供)

量産化に向けて

全固体電池については、2030年ごろの市場投入を目標に、ホンダ、日産自動車、ジーエス・ユアサコーポレーションが主にセル開発を進めている。一部事業者は、2024年度末にパイロットラインの整備を完了、セルの大型化および固体電解質の使いこなしに伴う良好な界面形成の実現や徹底した水分管理といった課題などを解決し量産化に道筋をつけるため、日々検証を繰り返している。NEDOは全固体電池の標準化に向け、製品評価技術基盤機構(NITE)所有の安全性評価サイトの活用も支援している。

次世代液系LiBに関しては、パナソニックエナジー、マツダがさらなるエネルギー密度向上に取り組んでいる。全固体電池向け材料については出光興産、住友金属鉱山、アルバック、大阪ソーダが、量産化確立に向け中規模実証設備を立ち上げ、材料供給網の構築に着手。材料コスト低減に向け、NEDOは仕様のデファクト化が図れないかを関連事業者と協議している。

再利用も推進

廃LiBからリチウム(Li)、ニッケル(Ni)コバルト(Co)を二酸化炭素(CO2)排出量を抑制しながら効率良く回収する技術の確立に向け、住友金属鉱山/関東電化工業、JX金属サーキュラーソリューションズ、JERA/住友化学、日産が取り組みを進めている。Liを含む中間資源粉体物であるブラックマスから単一のレアメタルを取り出す技術と、三元系正極材の組成を変えずに再生セル化するダイレクトリサイクル技術の確立が目標だ。廃LiB確保の枠組みの構築や再生材に要求される仕様の確立など課題は山積だが、既に年間1万トン級のパイロットラインを構築した事業者もおり、見通しは明るい。

NEDOは2025年9月のオートモーティブワールドをはじめに計3回のセミナーを開催し、これらについて紹介する。電池事業の今後を展望し、シーズ発掘や企業間連携を試みる機会にしてほしい。

img_nikkan_250716_Profile_HigashinoTatsuya.png

NEDO
自動車・蓄電池部
次世代蓄電池チーム長
東野 龍也(ひがしの たつや)
日産自動車にて、ハイブリッド・電気自動車向け電池設計を担当。2023年度よりNEDOに出向し、グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池開発のプロジェクトマネージャーとして、全固体・次世代電池/リサイクル領域のマネジメント全般を担当。

一覧に戻る
Top