NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【31】「モビリティ社会」へ GX・DX加速(2025年7月9日紙面掲載分)

車産業の大変革

バッテリー電気自動車(BEV)普及の停滞と欧州・北米市場を中心に価格と利便性のバランスに優れたハイブリッド車(HV)需要の高まりが報じられている。市場環境の変化を背景に、日系自動車メーカーは製品ポートフォリオや電動化戦略の見直しを進めている。

しかし、中国を筆頭とする新興BEVメーカーの存在感が高まる中、この機を電動化競争に本格的に備える猶予期間と捉え、電動化技術、特にBEV特有の重要技術の開発を加速させる必要がある。加えて自動車の価値が、ハードウエアからソフトウエアとサービスを融合した「モビリティ・エクスペリエンス」へ急速に変化している。

クルマは単なる移動手段ではなく、移動中の体験そのものに付加価値をもたらす存在と再定義され、AI(人工知能)、自動運転やコネクテッド技術などを活用した「知能化」が新たな競争軸として加わっている。自動車産業は100年に一度と言われる産業構造の大転換期を迎え、全方位の競争が求められている。

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NEDOが描く「モビリティ社会」のイメージ

4つの視点

こうした背景の下、NEDOはグリーン・トランスフォーメーション(GX)とデジタル変革(DX)の2軸をベースに、以下の四つの視点で自動車に関わる技術開発に総合的に取り組んでいる。今回から9回に分け、その活動内容を紹介する。

①電動化の推進によるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への対応=次世代蓄電池、e-アクスル、HV/プラグインハイブリッド車(PHV)向け発電用エンジンなど、電動車両、特にBEV特有の重要技術の開発。

②新たな競争軸である知能化への対応=シミュレーション技術を活用した電動車両設計やセンサー開発、自動運転技術の開発。

③高齢化を伴う人口減少への対応=自動運転技術などの開発成果を活用し、人手不足に伴う人流・物流危機へ対応。

④資源制約、サステナビリティー(持続可能性)への対応=電池の再利用や希少金属の回収・再資源化による循環社会の形成。

実装につなげる

このように、自動車産業は、これまでの先行投資を回収しつつ新たな事業への再投資が求められている。加えて、関税や規制など変化する事業環境への対応も求められる、極めて厳しい環境の中にある。NEDOとしては、協調領域の拡大と業種を超えた連携を促すとともに、競争領域への支援も同時に行い、自動車産業の変革を支援していきたい。政府や産業界と連携しながらパラダイムシフトの土台となる技術開発を支援し、その成果を社会実装につなげることで、生活をより豊かに、よりスマートに変革する「モビリティ社会」の実現を目指す。

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事業紹介:自動車・蓄電池

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自動車・蓄電池部 部長
古川 善規

1991年NEDO入構。経済産業省出向。NEDOバンコク事務所長、スマートコミュニティ部長、次世代電池・水素部長、ロボット・AI部長を経て現職。産業技術部門を中心に多様な業種を経験。海外勤務で触れた多様な価値観、外から日本を見た経験も生かし、自動車業界の変革支援を目指す。

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