
NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

【28】分離・回収、輸送・利用 CO2をマネジメント(2025年6月18日紙面掲載分)
成果報告会
7月15~17日、NEDOはこれまでにない規模の成果報告会をパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催する。「再生可能エネルギー技術」「水素・アンモニア利用技術」「脱炭素技術」の3分野に関連する全ての部署からプレゼンテーションやポスターセッションを行う。研究開発などの実施状況・成果を公開し、技術の有効性や重要性の理解向上を図ることで、更なる普及・発展を目的としている。
CE部で再出発
日本では政府の総合科学技術・イノベーション会議が決定した10のムーンショット目標のうち目標4で「2050 年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」が掲げられ、現在複数のプロジェクトを進めている。
私が所属するサーキュラーエコノミー(CE)部は、2024年のNEDO組織改編で設置された新しい部である。CEとは、大量生産・消費・廃棄が一方向に進むリニアエコノミーに代わり、資源を効率的に循環させて持続可能な社会を目指す概念であり、リデュース・リユース・リサイクルの3Rに加え、二酸化炭素(CO2)排出削減技術や、排出されたCO2を分離・回収して地中に埋める技術(CCS)、さらに回収したCO2を燃料や化学品などに活用する技術(CCU)、すなわちカーボンリサイクル(CR)まで含む。
7月の成果報告会では、これら幅広い技術を取り上げる。高炉での水素還元鉄の試験炉では従来の石炭を使った手法と比べCO2排出をどの程度抑制できたか、水素とCO2を原料に合成燃料(e-fuel)を一貫製造する実証プラントでどの程度の効率を達成できたか、といった成果を紹介する予定だ。なお、この実証プラントで製造したe-fuelは、大阪駅から大阪・関西万博の会場に向かうシャトルバスにも使用されている。
CRの社会実装に向けては、個々の企業努力だけでなく、地域全体のスケールメリットを生かすことが重要である。その実現に向け、CO2の分離・回収から輸送、利用まで、多岐にわたる業種が連携したCO2のサプライチェーン(供給網)の構築が必要となる。

図 カーボンリサイクル(CR)のイメージ図
共創で開く未来
こうした日本の技術は米国でも注目を集めている。NEDOは米国エネルギー省のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)と23年連携協定を締結し、共同で支援するプロジェクトの選定を進めているが、その中に窒素循環の技術も含まれている。
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事業紹介:カーボンリサイクル
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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
サーキュラーエコノミー部 統括課 主事
尾曽 竜之介
2024年茨城大院修士修了(材料工学専攻)。日本のエネルギー・環境問題の解決に貢献したいという動機で、同年にNEDO入構。環境部総括グループに配属後、 2024年7月のNEDO組織改編に伴い現職。予算管理、広報業務など、総括全般業務に従事。将来は、ナショナルプロジェクトのプロジェクトマネージャーになるべく、日々研鑽中である。