NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【23】ヘルスケア素材分野など 日本の新興 欧で商機(2025年5月14日紙面掲載分)

2024年12月、フランス・パリのイベント会場が熱気に包まれた。立ち見も含め100人を超える観客が注目したのは、日本のスタートアップ(SU)だ。NEDOは、SUの欧州展開への足がかりを築くことを目的に、イマージョンプログラムを毎年実施してきた。欧州で3回目の開催となった2024年は、素材・材料、ヘルスケア、食・農業分野から計6社がプログラムに参加した。各SUは、約3カ月かけて渡仏準備を進め、最終日のピッチイベントに臨んだ。

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仏パリで実施したピッチイベント

「欧米」で違い

プログラムを通して得た気付きのうち、SUに限らず、参考になる点を二つ紹介したい。

1点目は、欧州と米国のビジネス慣習の違いに留意することだ。「欧米」とひとくくりに表現されることも多い両者だが、実際は異なる点も多い。例えば、プレゼンテーションの際に、欧州では大きなボディーアクションはあまり好まれず、自然に振る舞うことが重要だ。

事前準備が必須

2点目は、欧州における日本企業への関心の高さだ。素材・材料分野では、すぐに連携したいという声が相次いだ。世界情勢も踏まえ、欧州はサプライチェーン(供給網)の再構築を急ぐ。日本企業のように、技術があり安定しているパートナー候補は高評価だ。

ヘルスケア分野では、日本が直面している課題とそれらの解決策に関する質問が多く出た。ヘルスケア先進国である日本の経験が持つポテンシャルを垣間見た。食・農業分野では、良い意味で、想定外の反応が得られた。アジアの食文化を敬遠せず、サンプルの試食希望者が殺到した。欧州の食への意識は高い。また、どの分野でも、思いがけないオファーを持ちかけられていた。急に舞い込んだ商機を逃さないための事前準備も必須だ。

投資機運追い風

欧州は、二十数カ国から構成され、国ごとに強みや弱みがあり、ニーズも異なる。一方で、欧州に一度拠点を設けることができれば、域内の他国へアクセスしやすくなる特徴も併せ持つ。これは、ある国では見込みが薄いと判明したビジネスであっても、隣国で再度チャレンジ可能なことを意味する。欧州におけるディープテック投資への機運の高まりも、日本企業にとっては追い風だ。NEDOは2025年もイマージョンプログラムを実施する予定だ。2024年の「10者以上と面談でき、充実した渡仏になった」といった声を糧に、2025年も欧州に踏み出す機会を提供したい。

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欧州事務所/Representative Office in Europe

(活動報告)2024年度スタートアップの海外展開支援(Immersion Program)

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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
欧州事務所 主査
須永 吉彦(すなが よしひこ)

東京農工大院修了。博士(生命科学)。2013年にNEDO入構。「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」事業のプロジェクトマネージャーなど、製造技術やAI(人工知能)の研究開発プロジェクトに従事。プロジェクトマネジメント室などを経て、2024年からNEDO欧州事務所(パリ)に駐在中。

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