NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【16】カーボンリサイクル 合理性伴った社会実装(2025年3月26日紙面掲載分)

炭化水素が課題

カーボンリサイクルは二酸化炭素(CO2)を炭素資源ととらえ循環利用するものである。CO2排出削減に加え、炭素資源の有効活用の観点で重要だ。コンクリート分野やカーボネートなどの機能性化学品分野については、水素を必要としないため早期の社会実装が見込まれているが、燃料分野や汎用化学品分野では、炭化水素を基本構造として持つため水素の低コスト化をはじめとする技術課題がある。

CO2原料期待

国際エネルギー機関(IEA)のNZEシナリオ(2050年までにカーボンニュートラル〈温室効果ガス排出量実質ゼロ〉を達成)では、カーボンリサイクル技術により製造される合成燃料が2035年以降に増加すると見込んでおり、燃料製造に関するプロジェクトの計画が世界的にも多い。一方、化学品製造のプロジェクトはまだ少ない。NZEシナリオにおいても2050年の石油需要は大幅に減少するとしているものの、現状のままでは、化学品分野では炭化水素について石油依存が継続すると捉えている。

CO2の排出量を抑えた製品を求める動きが燃料分野や鉄鋼、アルミニウムなどの金属分野であり、今後、化学品分野でも重要となるだろう。そのためには、再生可能エネルギーの使用や化学品炭素源の化石資源からの転換が求められる。後者は、まずは廃プラスチックやバイオマスの利用が考えられるが、量的制約があるため、これらで賄えない化学品炭素源としてCO2を原料としたカーボンリサイクル技術が期待される。

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図 化学品・燃料分野の代替原料の技術体系抜粋

市場確立が必要

特にメタノールを経由する転換はほとんどの化学品が製造できるのでニーズが高まると考えられる。このような原料転換が進めば、石油燃料の需要減少により連産品のナフサ供給量が減少しても化学製品の原料供給が持続可能となる。

中国は石炭などから製造したメタノールを原料とした化学品生産の実績が多くあり、CO2由来メタノールへの転換が進めばグリーンケミカル分野でも脅威となるので注視が必要である。

革新技術の社会実装には経済合理性は重要である。低炭素原料への転換はコストが課題であり、技術開発による低コスト化に加え、低炭素品の価値を明確にする仕組みなど、市場確立の取り組みも併せて推進する必要がある。

NEDOはカーボンリサイクル技術に注目してさまざまな事業を実施してきた。経済合理性を伴った社会実装を目指すチャレンジングな目標達成に向け、今後も貢献していきたい。

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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
イノベーション戦略センター(TSC)
環境・化学ユニット 主任研究員
寒川 泰紀(そうがわ やすのり)

1991年東工大院(現東京科学大)原子核工学修士修了。東燃(現ENEOS)入社。太陽電池、低燃費エンジンオイル、自動車燃料の研究開発に従事。2020年にNEDO技術戦略研究センター着任、資源循環やカーボンリサイクルなどのサーキュラーエコノミー関連技術分野を担当。

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