NEDO Web Magazine

NEDOは2024年12月より、日刊工業新聞の科学技術・大学面において、「NEDO未来展望~イノベーションを社会へ~」と題し、NEDOが推進しているプロジェクト等について、その概要や特徴、目標、現時点での成果等をプロジェクト等の担当者が執筆・紹介しています(年末年始を除く毎週水曜日に掲載)。当Web Magazineではバックナンバー記事を掲載します。

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【7】自然共生経済の実現へ(2025年1月22日紙面掲載分)

自然再興が重要

世界的に気候変動や天然資源危機、生物多様性の損失といった社会問題が拡大しており、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)やサーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に向けた動きが活発化している。日本においても、グリーンイノベーション基金事業などが強力に推進されている。

さらに、近年では、ネイチャーポジティブ(自然再興)の重要性も指摘されており、持続可能な社会の発展に向けて、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの実現と併せて統合的な実現が重要との認識が広がっている。

このような背景のもと、これらの社会システムを等しく実現するために重要なコンセプトとして、TSCでは、2024年7月に「将来像:自然共生経済」を作成、公表した。ここでは、「産業」や「市民/消費者」と「自然」が互いに補完し合い、それらの価値の総和を高め、社会問題の解決と持続的な経済発展を実現する循環型経済の仕組みとして将来像「自然共生経済」を提案した。「自然共生経済」実現に必要なアクションとして、再生可能な自然資本の活用、廃棄物の再資源化と資源の循環性向上、自然の維持・再生の3つを示した。

循環経済を構築

再生可能エネルギーの活用をはじめ、自然資本を今後さらに活用する状況において、自然資本を維持・拡大しながら社会問題の解決と持続的な経済発展を実現する循環経済の構築が重要である。

そのためには、産業や市民/消費者のさまざまな行動が自然環境にどのような影響を及ぼしているかを可視化し、適切な物差しにより評価を行うことにより適切な行動へ変えて、社会課題を解決しながら経済的な価値を生み出していくことが重要である。ここでは、ポジティブな面はインセンティブを与えられること、すなわち、いい行動は褒めることが重要な方策になると考えられる。

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図 将来実現に向けたアクション

知恵を結集

恵まれた自然環境を維持した上で、地球温暖化対策や資源枯渇対策、レジリエント(回復力)なサプライチェーン(供給網)や国土構築を行い、経済的にも豊かな社会を実現するには多くのマルチステイクホルダーの知恵を結集することが重要であり、そのような議論の場の設定を行ない、将来像実現に向けた具体的な方策を進めていく予定である。

自然を構成する重要な主体である「生物」の機能や資源の活用といったバイオエコノミーが「将来像:自然共生経済」実現に果たす貢献については、次の機会に述べさせていただきたい。

関連レポート


2024年7月26日公表 将来像「自然共生経済」/TSC Foresight “Nature Symbiotic Economy”

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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
イノベーション戦略センター(TSC)
バイオエコノミーユニット ユニット長
水無 渉

岡山大院農学修士修了。日東化学工業(現三菱ケミカル)入社。米国三菱レイヨンBVP、バイオ技術研究所長など一貫してバイオビジネスに従事。2020年より現職。文部科学省、科学技術振興機構(JST)や世界経済フォーラム、経済協力開発機構(OECD)などのバイオ関連専門委員も務める。

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