NEDO Web Magazine

NEDOは2024年度、全12回にわたり、朝日小学生新聞「おどろきサイエンス」のコーナーでNEDOが取り組む最新の技術開発を紹介しています。朝日小学生新聞様のご厚意により、当Web Magazineでもバックナンバー記事を掲載しています。
今後も順次掲載していきますので、ご期待ください。

第5回(朝日小学生新聞2024年8月21日掲載) 「大気から直接CO2を回収する技術」

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イラスト・あきもとまさと

2023年の世界の平均気温は観測史上最高でした。今年はそれを上回る暑さが予想されています。平均気温が長期的に上がる地球温暖化は、大気中の「温室効果ガス」が増えすぎ、地球に熱がとどめられるために起こります。温暖化は自然災害の原因にもなり、対策は人類にとって緊急の課題となっています。

温暖化を食い止めるには、温室効果ガスを増やさないことが重要です。温室効果ガスの9割は二酸化炭素(CO2)です。7月17日の記事では、石油などの化石燃料を燃やして発生するCO2をつかまえる技術「CCS」や「CCU」を紹介しました。他に、化石燃料から風力や太陽光などの再生可能エネルギーの利用への切りかえや、使う電力を減らすために省エネルギーなシステムへ切りかえることも有効な対策です。しかし、それでもまだ十分ではありません。大気にはすでに、たくさんのCO2が出てしまっているからです。
大気中に出たCO2を回収する技術として期待が寄せられているのが「DAC(Direct Air Capture)」。大気から直接CO2を回収する技術です。CCSやCCUのように、CO2と結びつきやすい特殊な水溶液や固体、まくの他、廃コンクリート、鉱物、CO2を素早く取りこんで成長する植物などを使います。
大気中に「たくさん」出ていると言っても、その濃度はわずか約0.04%です。この濃度のCO2を回収するためには、とにかく大量の空気を処理することが必要です。また、CO2を取りこんだ特殊な水溶液などから、CO2だけを取り出すのにもエネルギーが必要です。この仕組みをいかに効率よく、かけるエネルギーを少なくできるかが、今後の課題です。

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DACの研究はまだ始まったばかりです。高い費用とエネルギー消費が課題ですが、革新的な研究を支援する「ムーンショット型研究開発制度」を通じて、国やNEDOがサポートしています。CO2は温暖化の原因となる物質ですが、CO2にふくまれる炭素(C)は、現代社会に欠かせない物質でもあります。
そこでムーンショットでは、回収したCO2から新たに資源を作る研究もサポートしています。化石燃料と同じような燃料をCO2から作れるようになれば、新しく石油を掘り出さなくても、CO2を循環させながら生活できるようになるでしょう。温暖化対策は、高度な技術だけではありません。私たちの日常生活での行動も、その対策の一つです。例えば電気をむだにしない、リサイクルに積極的に参加するなど、一つひとつの行動がCO2を増やさないことにつながります。みなさんもこれからの科学技術の進展に注目しながら、日々の生活でできることを始めてみませんか。

温暖化は、今後も私たちが地球で生きていけるかどうかの危機的な問題です。温暖化対策として一人ひとりの行動が少し変われば、それが集まって大きな変化を生むよ!みんなの力で地球を守ろう!

タイトルと図のデザイン・佐竹政紀

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
私たちの暮らしに欠かせないエネルギー、そして生活に必要なモノやサービスを生み出す活動である産業。NEDOは、エネルギーや産業の新しい技術の研究開発を、国や大学、民間の会社などと協力して進める仕事をしている機関です。

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