NEDOは2024年度、全12回にわたり、朝日小学生新聞「おどろきサイエンス」のコーナーでNEDOが取り組む最新の技術開発を紹介しています。朝日小学生新聞様のご厚意により、当Web Magazineでもバックナンバー記事を掲載しています。 今後も順次掲載していきますので、ご期待ください。
第7回(朝日小学生新聞2024年10月16日掲載) 「安全に早く充電 全個体リチウムイオン電池」
イラスト・あきもとまさと
安全に早く充電 全個体リチウムイオン電池
充電して、くり返し使える「蓄電池」。携帯ゲーム機やスマートフォン(スマホ)など、持ち歩いて使う電子機器には欠かせません。そして今、特に重要なのが電気自動車(EV)などに使われる蓄電池です。ガソリン車からEVなどへの切りかえが求められている中、NEDOが支援している蓄電池の技術開発を紹介します。
現在、ほとんどの自動車はガソリンなどの化石燃料を使って走っています。ガソリンを使うと二酸化炭素(CO2)が出て、地球温暖化の要因になります。一方、EVは走るときにCO2を出しません。蓄電池に電気をたくわえて、その電気でモーターを回して走ります。地球にやさしいEVですが、まだ改善が必要な点がいくつかあります。
まず、限られたスペースにたくさんの電気をたくわえられるようにすることです。いまのEVの多くは、満タンに充電してもガソリン車ほど長い距離を走れません。ガソリン車と同じ距離を走るために、小さくて、たくさんの電気をたくわえられる蓄電池が求められています。
次に、充電時間です。ガソリン車は数分で燃料を満タンにできますが、EVは数十分から数時間かかってしまいます。これをもっと短くできると便利です。
そして、安全性も重要です。EVに使われている「リチウムイオン電池」は、スマホなどにも使われていますが、スマホが燃えたりする事故のニュースを見たことがあるかもしれません。そんな事故が絶対起きないようにすることも大切です。
液体よりたくさん電気をためられる
これらの課題を解決するために開発されているのが「全個体リチウムイオン電池」です。
電池の中には「電解質」という物質があって、これを通じてリチウムイオンが移動することで電池としてはたらいています。いま一般的に使われているリチウムイオン電池は、この電解質が液体です。一方、個体の電解質を使う全個体リチウムイオン電池は、液体より熱に強く、たくさんの電気をたくわえられます。
EVに使うと充電を満タンにしたときに走れる距離が長くなり、充電時間も短くなります。燃えにくいため、安全性が高くなることも期待されています。
また、リチウムイオン電池の性能をはるかに上回ると期待される「フッ化物電池」や、燃える危険性がなく電気を多くたくわえられる電池として期待される「亜鉛負極電池」などの新しい蓄電池もあります。これらの蓄電池は材料が手に入りやすく、つくるのにかかる費用が安いこともポイントです。
NEDOは、自動車などの会社や大学、研究機関と一緒に、未来のEVがもっと便利で安全になるよう、たくさんの研究を進めています。次の世代の車が、どんな風に変わるのか、これからの進化が楽しみですね。
タイトルと図のデザイン・佐竹政紀
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
私たちの暮らしに欠かせないエネルギー、そして生活に必要なモノやサービスを生み出す活動である産業。NEDOは、エネルギーや産業の新しい技術の研究開発を、国や大学、民間の会社などと協力して進める仕事をしている機関です。