NEDO Web Magazine

NEDOは2024年度、全12回にわたり、朝日小学生新聞「おどろきサイエンス」のコーナーでNEDOが取り組む最新の技術開発を紹介しています。朝日小学生新聞様のご厚意により、当Web Magazineでもバックナンバー記事を掲載しています。
今後も順次掲載していきますので、ご期待ください。

第6回(朝日小学生新聞2024年9月18日掲載) 「ためてはこべる! クリーンな水素エネルギー」

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イラスト・あきもとまさと

人類は石油や石炭などの化石燃料をエネルギーとして使って社会を発展させてきました。しかしそれによって大気中の二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスが増え、地球温暖化の原因となりました。化石燃料にかわるクリーンなエネルギーが求められている今、大きな期待が寄せられているのが「水素」です。

水素は宇宙で最も多く存在する物質です。地球上では他の物質と結びつき、多くが水などとして豊富に存在しています。また、さまざまな資源を出発点としてつくることもできます。
例えば水に電気を流すことで、水素と酸素に分けられます。NEDOが運営する世界有数規模の水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)では、太陽光発電で発生させた電気をつかって、たくさんの水素をつくっています。この水素は近くの施設をはじめ、福島県内外のいろいろな場所でつかわれています。その他に、天然ガス(メタン)などからも取り出すことができます。
太陽光や風力を利用した再生可能エネルギーは、天気や季節によって発電量にむらがあります。また電気のままでは大量に長期間ためておくことが難しいため、安定して電気をとどけることが苦手という弱点があります。一方、水素は大量に長期間「ためる」、安全に遠くへ「はこぶ」ことができます。

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そこで、太陽光や風力の発電条件が良いときにつくった電気を水素に変えれば、ためておいたり、はこんだりできます。水素はマイナス253度まで冷やすと液体になり、体積は気体の状態の約800分の1まで小さくなります。NEDOは液化水素運搬船の研究開発を行っていて、オーストラリアでつくった液化水素を日本まで船ではこぶ実験に成功しています。
水素のつかい方は「電気を取り出してつかう」、「燃やしてつかう」の大きく二つに分けられます。どちらの方法でも、排出されるのは水だけです。CO2や大気汚染物質を出さないため地球にやさしく、クリーンなエネルギーです。
電気を取り出してつかう方法には、水素と酸素を反応させて発電する「燃料電池」が用いられます。身近な例では「燃料電池自動車」があります。燃料電池で発生させた電気でモーターを回して走る仕組みを、日本が世界に先がけて実用化しました。家庭用燃料電池「エネファーム」は、都市ガスにふくまれるメタンから水素を取り出して電気をつくり、家庭に電気をはこびます。発電時に生まれる熱を利用してお湯をわかすこともできます。
燃やしてつかう方法では、ロケットエンジンや大規模な火力発電所などの燃料や、高い温度が必要なものづくりにも化石燃料のかわりに水素がつかわれます。
私たちの未来を支えるクリーンな水素エネルギーについて学び、広めていきましょう。

水素は、環境にやさしいクリーンなエネルギーとして世界中で注目されています。水素をつかって、どのようにエネルギー・地球環境問題を解決していくか、みなさんも一緒に考えてもらえるとうれしいです。

タイトルと図のデザイン・佐竹政紀

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
私たちの暮らしに欠かせないエネルギー、そして生活に必要なモノやサービスを生み出す活動である産業。NEDOは、エネルギーや産業の新しい技術の研究開発を、国や大学、民間の会社などと協力して進める仕事をしている機関です。

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