NEDO Web Magazine

NEDOは2024年度、全12回にわたり、朝日小学生新聞「おどろきサイエンス」のコーナーでNEDOが取り組む最新の技術開発を紹介しています。朝日小学生新聞様のご厚意により、当Web Magazineでもバックナンバー記事を掲載しています。
今後も順次掲載していきますので、ご期待ください。

第11回(朝日小学生新聞2025年2月19日掲載) 「微生物が分解できるプラで環境守る」

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イラスト・あきもとまさと

微生物が分解できるプラで環境守る

プラスチックはとても便利な素材であるため、暮らしの中のいろいろなものに使われています。しかし今、大量につくられたプラスチックのごみが、海に流れ出して環境を汚染しています。NEDOではこの問題の解決に役立てるため、海の微生物によって分解される「海洋生分解性プラスチック」の研究開発に取り組んでいます。

プラスチックは軽くてこわれにくく、思い通りの形にしやすい、とても便利な材料です。そのため日用品から電化製品、自動車まで、私たちの日常生活のあらゆるものに使われています。

一方で、プラスチックごみが海に流れ出て、環境を汚染することが問題になっています。 微生物が物質を分子(物質をつくっているとても小さな粒)レベルまで分解することを「生分解」といいます。例えば、木の葉や生き物の体といった自然のものは、土や海の中にいる微生物によって生分解され、自然界を再びめぐっていきます。

しかし、今使われているプラスチックの多くはほとんど生分解されないため、自然界ではそのまま残り続けてしまいます。特に、海に流れ出たプラスチックごみが、生分解されずに「マイクロプラスチック」と呼ばれる小さな破片となり、海の生き物やそれを食べる人間にまで悪い影響をおよぼすことなどが心配されています。

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まずは回収・リサイクル

日本は、プラスチックごみによる新たな海洋汚染を2040年までにゼロにするという目標を打ち出しています。これを達成するためには、まずはプラスチックごみをきちんと回収してリサイクルすることが重要です。一方で、漁業で使われる網やつり糸、陸上で発生する自動車のタイヤのけずれかすなど、どうしても海に流れ出てしまうものもあります。

NEDOは、海に流れ出てしまったとしても、生分解されることによって環境を汚染しない「海洋生分解性プラスチック」の開発、普及に取り組んでいます。この取り組みでは、普通は自然界で残り続けてしまうプラスチックを、海の微生物によって分解されやすくするために、さまざまな工夫を行っています。

例えば、プラスチックを構成する長いくさりのような分子が、海水中の塩分などをきっかけとして、微生物が分解しやすい長さまで切断されるような素材づくりです。また、プラスチックの中にあらかじめ微生物を仕込み、その微生物が海水中で活発になることで、生分解が進むしかけなども開発しています。

これらのプラスチックの中には、他のプラスチックに混ぜることで、元のプラスチックの性質をそこなわずに、生分解しやすくさせるものもあります。さらに、海洋生分解性プラスチックを多くの人に使ってもらうため、これらの素材が適切に生分解されるかを実験室や海で確かめる方法や、分解の過程で出る物質に害はないかを確認する方法の開発なども行っています。

海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、さまざまな分野の専門家が協力して研究開発を進めています。日本の優れた技術が、世界の環境問題を解決するかもしれないと思うとワクワクしませんか。

タイトルと図のデザイン・佐竹政紀

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
私たちの暮らしに欠かせないエネルギー、そして生活に必要なモノやサービスを生み出す活動である産業。NEDOは、エネルギーや産業の新しい技術の研究開発を、国や大学、民間の会社などと協力して進める仕事をしている機関です。

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