新幹線等の高速鉄道車両の構体や内装部品には、おもに軽量なアルミニウム合金が使われています。昨今、鉄道の高速化や省エネルギー化の重要性が増す中、さらなる軽量化へのニーズが高まっており、アルミニウムよりも比重が30%以上小さいマグネシウム合金の早期実用化が期待されています。しかし、マグネシウム合金の展伸材※は、難燃性や耐食性、成形性が比較的低いため、電子筐体や機械部品といった小型部材には使われているものの、大型構造物にはほとんど使われていないのが現状です。
NEDOは、2014年度から、エネルギー使用量やCO2排出量が多い自動車や鉄道車両等の輸送機器の軽量化を目指し、鉄鋼や非鉄金属(アルミニウムやマグネシウム等)といった構造材料の特性を向上させる「革新的新構造材料等研究開発」事業に取り組んでいます。その中で、NEDOと新構造材料技術研究組合(ISMA)は、高速鉄道車両への適用を目的とした難燃性マグネシウム合金を開発。高性能・低コストを両立する難燃性マグネシウム合金を使用した新幹線用の客室床板を、JR東日本のE956形式新幹線試験車両「ALFA-X」に適用し、2022年3月までに実際の運用環境で性能試験を行いました。
「燃焼試験」「接着試験」「局所への耐荷重試験」「垂直荷重試験」「音響試験」の5つの性能試験の結果、遮音性や強度を維持しながら約23%(約50kg)の軽量化を達成。難燃性マグネシウム合金で大型構造物を造れることを実証しました。NEDOは、今後も高速鉄道車両への本格的な適用を目指すとともに、新たに難燃性マグネシウム合金を適用できる箇所や部材を開拓し、輸送機器の軽量化による省エネルギーとカーボンニュートラル実現に貢献していきます。
[客室床板の性能試験]
①燃焼試験 難燃性マグネシウム合金製の客室床板は「不燃性」の判定を取得 |
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②接着試験 客室床板の組み立てに当たり、最適な表面処理や接着膜厚を確認 |
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③局所への耐荷重試験 ハイヒールの踵の貫通や圧痕が生じる荷重は、従来のアルミニウム合金製床板と同等以上 |
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④垂直荷重試験 乗客の荷重に対して十分な強度 |
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⑤音響試験 -実験室にて、床下の騒音に対する遮音性は従来のアルミニウム合金製客室床板と同等 -客室床板をALFA-Xに適用し、従来に比べて室内の騒音は増加しない |