NEDOは2024年度、全12回にわたり、朝日小学生新聞「おどろきサイエンス」のコーナーでNEDOが取り組む最新の技術開発を紹介しています。朝日小学生新聞様のご厚意により、当Web Magazineでもバックナンバー記事を掲載しています。 今後も順次掲載していきますので、ご期待ください。
第3回(朝日小学生新聞2024年6月19日掲載)「地中の熱を利用して環境にやさしい暮らし」
イラスト・あきもとまさと
毎日の暮らしで使われるエネルギーの半分は熱です。私たちの周りには太陽の熱や地中の熱など、自然から得られるさまざまな熱があります。これらの熱を上手に使えば、二酸化炭素(CO2)を出す量を減らすことができ、地球温暖化対策の役に立ちます。NEDOの取り組みを紹介します。
暮らしの中で「エネルギー」は、どのように利用されているのでしょうか?照明をつけたり、自動車を動かしたりすることを思い浮かべるかもしれません。実は、暮らしの中で使うエネルギーの約半分は暖房や冷房、お湯をわかすといった「熱」として利用されています。
今はその熱のほとんどが、石油やガスなどの化石燃料を使って作られています。一方で熱は、もともと私たちの身の回りにたくさんあります。例えば太陽や温泉の熱、雪の冷たさなどです。これらを「再生可能エネルギー熱」といいます。
中でも地面の下の熱が注目されています。深さ100メートルくらいまでの熱は「地中熱」と呼ばれます。地中熱の温度は気温の影響を受けにくく、年中一定で、夏は気温より低く、冬は気温よりも高くなります。「ヒートポンプ」という装置などを使うと、この温度差を建物の冷暖房や給湯などに役立てられます。
地中熱の利用は、化石燃料を使わずに熱を熱のまま活用するので、CO2がほとんど出ない環境にやさしいエネルギーの使い方といえます。ところが、地中熱の利用はまだまだ進んでいません。ヒートポンプなど熱を取り出す装置の値段が高いからです。
NEDOでは、熱を取り出す装置の値段を下げたり、性能を良くしたりする研究や開発をサポートしています。地中熱は、次世代の建物として期待される「ZEB(NetZeroEnergyBuilding、CO2の排出をゼロにすることを目指すビル)にも利用されています。
同じ地中の熱でも、地中熱よりもさらに深い地下1~3キロメートルほどの場所にあるマグマから伝わる熱を「地熱」といいます。温度は200~300度ととても高いので、蒸気を取り出して発電に利用します。火山国である日本の地下には、各地にたくさんの「地熱資源」がうまっています。多くのエネルギーを海外からの輸入にたよる日本にとって、地熱は有効活用できる貴重な国産エネルギーの一つです。
そして、さらに深いところにある、より高熱のエネルギーを利用するのが次世代技術「超臨界地熱発電」です。たくさんのエネルギーを取り出せるので、より多くの電気を作れます。NEDOが中心となって開発を進めています。
熱エネルギーを効率的に利用する技術は、地球温暖化対策のカギとなります。みなさんが、新しい技術が未来にどのように役立つかを学び、それを日々の生活でどう利用するかを意識することも、未来をより良くする大切な一歩です。
再生可能エネルギー熱は、限りある資源にたよらず、地球も汚さず、将来にもずっと使えるエネルギーです。さらに研究を続けて、みなさんといっしょに素晴らしい未来社会を実現できるとうれしいです。
タイトルと図のデザイン・佐竹政紀
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
私たちの暮らしに欠かせないエネルギー、そして生活に必要なモノやサービスを生み出す活動である産業。NEDOは、エネルギーや産業の新しい技術の研究開発を、国や大学、民間の会社などと協力して進める仕事をしている機関です。