NEDOは2024年度、全12回にわたり、朝日小学生新聞「おどろきサイエンス」のコーナーでNEDOが取り組む最新の技術開発を紹介しています。朝日小学生新聞様のご厚意により、当Web Magazineでもバックナンバー記事を掲載しています。 今後も順次掲載していきますので、ご期待ください。
第2回(朝日小学生新聞2024年5月15日掲載)「バイオマスとは?」
イラスト・あきもとまさと
私たちの生活に欠かせないエネルギー。石油などを大量に消費する時代から、木材など再生可能な「バイオマス」をエネルギーとして使う時代へと変わってきています。NEDOでは、化石燃料だけにたよらないエネルギーを国内で安定供給するため、「エネルギーの森づくり」に取り組んでいます。
自然を利用したエネルギーの一つに、バイオマス燃料があります。バイオマスとは、一般には「動植物から生まれた資源」という意味で、その種類はさまざまです。例えばナタネやヒマワリなど油をとる目的で作られた農作物、水中に生息する藻類、木材を育てる途中での間引きや建築・製材過程でいらなくなった廃材、稲わらやもみがらなどの農作物の残りかす、街で出てくる紙くず、使用済みの食用油などが利用されています。
私たちが普段使っている燃料は、石油や石炭、天然ガスなどの「化石燃料」と呼ばれる地下から掘り出したものが主で、使用するときに燃やすことで二酸化炭素(CO2)が発生します。一方でバイオマスは、元となる植物が成長する過程で、燃やしたときに発生するのと同じ量のCO2光合成によって大気中から吸収しているので、プラスマイナスゼロとなり、大気中のCO2は増えないことになります。つまり炭素中立(カーボンニュートラル)というわけです。
ただし、植物がバイオマス燃料として使えるまでに成長するには時間がかかります。例えば木を切り続けるばかりで植林しないと、吸収できるCO2量が減ってしまいます。バイオマスをカーボンニュートラルな資源として使い続けるためには、バイオマスを加工する技術や、CO2の発生量を減らす技術とともに、早く育つ木「早生樹」を植えて育てることで、炭素が循環するスピードを速める仕組み作りも重要です。
NEDOでは、国内のバイオマスの利用を増やし、長期に安定した資源循環の仕組みを作るため、二つの事業を進めています。一つは、飛行機を飛ばすための燃料(航空燃料)を、使用済みの食用油や木くずなどから作る事業です。この燃料はSAF(SustainableAviationFuel)と呼ばれ、世界中で航空燃料の一部として使われ始めています。
もう一つは、使われていない木材の活用に加え、早く育つ木の供給、利用の場を作る事業です。バイオマスでの発電量を安定的に増やすため、燃料になる国産の木材が安定して手に入るよう、調達先の確保の他、製造・輸送のより良い仕組みを作っています。このように、化石燃料に頼らずバイオマスからエネルギーを得る取り組みや、地域にあるバイオマス資源を安定供給する取り組み「エネルギーの森づくり」によって、炭素循環型社会を作るには、私たちのねばり強い努力が必要です。
バイオマスは飛行機の燃料や発電の他にも、バイオガスに変換して熱源として利用することもできます。バイオマスは、CO2増加量をおさえながら、広い目的のエネルギーを生み出すユニークな資源です。
タイトルと図のデザイン・佐竹政紀
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
私たちの暮らしに欠かせないエネルギー、そして生活に必要なモノやサービスを生み出す活動である産業。NEDOは、エネルギーや産業の新しい技術の研究開発を、国や大学、民間の会社などと協力して進める仕事をしている機関です。