NEDO Web Magazine

ロボット・AI・福祉機器

ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト:2017年度~2022年度)

ドローンが飛び交う世界を実現する「複数台ドローン運航管理システム」

KDDI株式会社

Sep.2023

INTRODUCTION 概要


少子高齢化による労働人口の減少などを背景に、物流分野やインフラ設備の効率的な点検・警備といった市場において、無人航空機やロボットの活用による省人化、省エネルギー化のニーズが高まっています。これを受け、NEDOは2017年度に「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現」プロジェクトを立ち上げ、ロボット・ドローン機体の性能評価基準等の開発、無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発、ロボット・ドローンに関する国際標準化の推進等の施策を実施、国内の多岐に渡る業態から、広く参加メンバーを募集しました。以前からスマートフォンに次ぐコネクテッドデバイス(ネットワークに接続されたデバイス)として、ドローンの可能性に注目し、独自に遠隔自律飛行などの研究を行ってきたKDDI株式会社は、同プロジェクトに参画し、2018年3月にドローン運航管理システムの開発を行い、2020年8月には日本初のドローン配送を商用化。プロジェクトの最終段階では、全国13地域での複数ドローンの同時運航管理実証実験を成功させました。また、NEDOが2022年度から開始した「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」(ReAMoプロジェクト)にも参画し、ドローン運航管理システムの社会実装に取り組んでいます。

BIGINNING 開発への道


コネクテッドデバイスとしてのドローンの可能性に注目

KDDIは、2016年頃からスマートフォンに次ぐコネクテッドデバイスの有力な候補として、ドローンをターゲットとして研究を開始していました。ドローンをコネクテッドデバイスとして空に飛ばすためには、スマートフォンなどに利用されるモバイル通信網を、上空で利用する必要があります。そこで、2016年7月から総務省が開始していたモバイル通信網を上空で利用するための「実用化試験局制度」を活用し、2016年11月15日に「実用化試験局」の認可を取得、モバイル通信を活用したドローン制御の実験を開始しました(図1)。2017年3月には、日本で初めてモバイル通信による完全自律飛行に成功し、目視外飛行への道を切り拓きました。

kddi_図1.jpg

図1 モバイル通信と運航管理により叶える社会(資料提供:KDDI株式会社)

特定の空域で複数のドローンを安全に飛行させるには、ドローンがネットワークに接続されるだけでは不十分で、運航管理システムが不可欠です(図2)。運航管理システムの重要性にいち早く気づいたKDDIは2017年3月よりドローンの運航管理システムの開発を進め(図3)、さまざまな実証実験を行いました。

kddi_図2.jpg

図2 「社会実装拡大に向けて」(資料提供:KDDI株式会社)※レベル4運航の詳細については、図7を参照

kddi_図3.png

図3 フライトプランを作成中の4G LTE運航管理システム画面(資料提供:KDDI株式会社)

4G LTE運航管理システムは、KDDIが実現を目指す「スマートドローンプラットフォーム」のための、最初に必要となるシステムです。スマートドローンプラットフォームは、4G LTEネットワークに接続されたドローン(スマートドローン)、3次元地図、運航管理システム、クラウドサービスから構成されるトータルソリューションで、農業、測量、検査、配送などさまざまなサービスを実現するものです(図4)。

kddi_図4.png

図4 スマートドローンプラットフォーム(資料提供:KDDI株式会社)

BREAKTHROUGH プロジェクトの突破口


独自の研究・開発から国内リーディングプレイヤーとの協働へ

2017年からの5年間は、KDDIのスマートドローン事業化にとって特に大きな変革を迎えた時期でした。NEDOが推進する大型プロジェクト「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」(DRESSプロジェクト)に参画することになったのです。当時、KDDIでドローン事業を担当していた杉田博司さんは、DRESSプロジェクトに参画した経緯を次のように語ってくれました。

「KDDIは以前からドローン事業に前向きで、このスマートドローンの運航管理システム(図5、図6)の構築を実現するためには独自開発した成果だけで臨むのではなく、関係する他業界のプレイヤーと共にプロジェクトを進めることが必要と考え、NEDOプロジェクトに参画させていただきました。」(杉田さん)

kddi_図5.jpg

図5 運航管理システムのイメージ図(資料提供:KDDI株式会社)

kddi_図6.jpg

図6 運航管理システム画面(資料提供:KDDI株式会社)

杉田さんには、苦い思い出と共に、心に刻んだことがあると言います。2018年3月、世界初のモバイル通信による自律飛行を行うドローンのデモフライトでテレビのキー局が3局取材に来た時に、2か月かけて準備した本番初回にドローンが思ったように飛んでくれませんでした。

「このとき現場でシステムを修正することによって成功させることができたのですが、やはりシステムの中身をきちんと自分たちが理解していないと、いざトラブルが起こった際に何も対応できないのだということを思い知らされました。たとえこのとき上手く飛行させることができていたとしても、広報のために一度だけドローンを飛ばせて見せることはできても、本気でインフラにしようとするなら、自分たちの手掛ける範囲のことだけでなく、それ以外の部分でも、きちんと仕組みや動作が分かっていないと運用は難しいということを実感しました。その学びを得られただけでも、この失敗にも意味があったと思います」(杉田さん)

それまでKDDIが行ってきた実証実験は、福島ロボットフィールドなどでの機能検証などが中心でした。しかし、社会実装に向けての過程では、人や家が多く集まるフィールドで開発者ではないユーザーが利用するという想定のもと、これを全国規模で運用した場合にどういった課題があるのかというユースケースごとの問題の洗い出しが必要になってきます。

独自にスマートドローンの研究開発を進めてきたKDDIでしたが、このDRESSプロジェクトでの、5年の長期に渡る国内のさまざまなドローン事業に取り組んでいる、業界をリードするような企業や組織との協議・協働により、KDDIのスマートドローン運航管理システムは大きな前進を果たすことになります。

モバイル通信分野でも新たな知見を得た実証実験

ドローンの飛行は、操縦方法や飛ばす場所などによってレベル1~4の4段階に区別されています(図7)。レベル1は、手動操作で飛ばすもので、ドローンは操縦者の目視内に限られます。レベル2~4はすべてドローンが設定ルートに沿って自律飛行することになりますが、レベル2は操縦者の目視内で飛ばさなくてはなりません。レベル3とレベル4は目視外の自律飛行となりますが、レベル3では無人地帯の上空を飛ぶことしか許されていません。レベル4では、有人地帯の上空も飛ばすことができますので、ほとんどの場所で利用できるようになります。レベル3やレベル4の目視外飛行が実現できれば、長距離飛行や、視界が構造物に遮られる場所での飛行、遠隔地での無人点検や監視など、ドローンをさまざまな用途で利用することができるようになります(図8)。

kddi_図7.jpg

図7 ドローンの飛行レベル(資料提供:KDDI株式会社)

kddi_図8.jpg

図8 目視外飛行で実現できること (資料提供:KDDI株式会社)

2020年8月、KDDIは長野県伊那市で自治体による国内初のドローン配送サービス「ゆうあいマーケット」を開始しました。このドローン配送サービスの画期的なところは、自治体が自らオペレーションを行っているところです(図9)。

「伊那市のドローン配送サービスは、毎日飛ばす定期便という形で行っていますが、特にアピールしたいのは、KDDIがオペレーターを担当しているわけではなく、現場の自治体の事業者の方が操作しているという点です。商品の受け取りは、ボランティアの方がやっていて、完全に自治体の中だけで循環するモデルで、KDDIはシステムを提供しているだけの黒子に徹しています。この時期は、海外大手のECサイトでもまだ、ドローン配送サービスを始めますとアナウンスをし始めていたばかりのころだったので、もしかしたら世界初といってもよかったくらい、先進的な取り組みでした」(杉田さん)

kddi_図9.jpg

図9 長野県伊那市ドローン配送サービスの構築(資料提供:KDDI株式会社)

DRESSプロジェクトでは、いくつかのテーマにそって研究開発や実証事業が行われましたが、KDDIはパーセルプロセス&テクノロジー株式会社と共同で、「地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」というテーマを担当しました。このテーマは、2022年のレベル4制度施行に向け、運航管理システムの実環境における実証を行うというもので、地域特性を考慮し、地域産業振興に活かせる3つのユースケースを想定し、複数回の実証実験を行うことが目標となっていました。具体的には、東日本エリアにおける平常時のユースケース、西日本エリアにおける平常時のユースケース、災害対応時のユースケースを想定した実証実験です。

「KDDIの本業であるモバイル通信に関することでも、DRESSプロジェクトでの実証実験を通じて得た知見がありました。ご存知の通り、KDDIではスマートフォンなどのモバイル端末向けに日本全国の通信エリアマップというものを作って公開しています。この地域ではきちんと通信できますと記したマップです。ところが、DRESSプロジェクトで実証地域を拡大していくうちに、スマートフォンではきちんと通信できるのにドローンだと電波特性が出ないという地域が多く出てきたのです。調べていくと、ドローンにたくさん搭載されているモーターのノイズがかなり電波干渉を起こしていることが分かりました。そのため、これまでスマートフォン向けに行ってきた電波状況の評価に加えて、スマートドローンに対する電波評価手法を確立し、ノイズ耐性のある通信技術や通信モジュールの開発にも繋げていきました」(杉田さん)

プロジェクトの集大成「全国13地域・ドローン52機の同時運航管理実証実験」

DRESSプロジェクトおいてKDDIとパーソルプロセス&テクノロジーによって進められた実証実験の集大成が、2021年10月27日に実施された全国13地域で計52機のドローンを同時に飛行させ、運航管理を行った実証実験です。日本最大規模の実証実験であり、見事に全国各地を飛行するドローンの運航状況を一元的に管理することに成功しました(図10)。この実証実験の結果は世界に誇れるものだと杉田さんは胸を張ります。

「北米は西海岸、中央、東海岸のそれぞれで別々に実験が行われて、それをNASAが統括しているという形を取っているそうです。日本のように長い国土を持つ国で、端から端までドローンの運航管理を一か所でまとめて行った国の例は、ほかに聞いたことがありません。プロジェクト的に大規模なものでしたが、これを実現できたのは、やはり人口カバー率99%、面積カバー率も70%を超えるモバイル通信網を持つ日本だからこそできるのだろうと思います。スイスや日本のように、元々国土全域にモバイル通信網が行き渡っている国であれば、運航管理システムもいち早く導入できると思っています」(杉田さん)

kddi_図10.png

図10 全国13地域同時運航管理実証実験概要(資料提供:KDDI株式会社)
※石川県白山市、長崎県対馬市は11月初旬に実証を実施しました。

国内主力プレイヤーが集い、複数年度に渡って知見を共有し合うプロジェクト

NEDOのDRESSプロジェクトに採択されたことには、KDDIとして大きなメリットがあったと杉田さんは語ります。

「DRESSプロジェクトが素晴らしかったのは、複数年度に渡って国内のドローンの事業化を目指す、業界をリードするような企業や組織が一堂に会して推進するプロジェクトであったという点です。その都度メンバーを選定して集める委員会などでは、そのときだけのスポット的な協働で終わってしまうことも多いのですが、DRESSプロジェクトでは、期間中、継続的にドローン事業化の主力プレイヤーといろいろな観点から議論して開発を進められる機会を得られました。各社、ビジネスモデルも違いますし、狙いも違いますので、それなら共通領域がどこで、それぞれの目標のために何が必要か、どこで協力できるかをディスカッションする場が持てたことは、非常に良かったと感じています。また、日本人は自分の国をどうしていくかということに関心を持って気にかけている人が多く、経済産業省や国土交通省航空局にも方向性に関する意見を聞いていただけたことも、NEDOのプロジェクトならではのメリットだったと思います」(杉田さん)

また、ドローンの研究開発を行っている山崎颯さんは、DRESSプロジェクトの利点を次のように語ってくれました。

「ドローン事業は、ハードウェア的な制御機能やコマンド機能、システムと繋ぐための通信、繋いだ先にある運航管理システム、クラウドやアプリケーションなど、さまざまな技術要素で成り立っています。かつ、その運用にあたっては、安全性の確保が重要で、そのためには技術要素以外にも、気象観測情報や飛行規制区域の把握など、さまざまな分野での判断材料を幅広くトータルでカバーしていかないとソリューションとして成立しないことが難しさだと思います。DRESSプロジェクトに参画したことで、他の事業者の持つ知見や視点を得る機会を持て、KDDIが手掛ける分野の研究や実験だけでは見えてこなかった多くの課題を見出し、改善していけたのは大きな収穫でした」(山崎さん)

FOR THE FUTURE 開発のいま、そして未来


ドローン運航管理システムの社会実装に向けて

KDDIは2020年頃から、ドローンを新事業の注力領域の一つとして捉えて積極的に取り組んできましたが、DRESSプロジェクトに参画したことで、ドローン業界の事業展開の早さを知り、意思決定を素早く行い、より専門的な人材を採用するため、KDDIのスピンオフベンチャーという形で、2022年4月にKDDIスマートドローンを設立しました。

DRESSプロジェクトは2022年度で終了しましたが、NEDOではDRESSプロジェクトの成果を引き継いだ「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」(ReAMoプロジェクト)を実施しています。KDDIは、ReAMoプロジェクトでも中心的な役割を果たしています。ReAMoプロジェクトの狙いは、ドローン運航管理システムの社会実装にあります。KDDIが手掛けるドローン運航管理システムは、国のシステムと連携し、民間のアプリケーションも活用しながら、事業ドローン運航のハブとしての役割を果たすことが求められています。

DRESSプロジェクトとReAMoプロジェクトの立ち位置の違いについて、杉田さんは次のように語ります。

「DRESSプロジェクトの時は、航空局がアドバイザー、もしくは実証実験時の立ち会いとして参加されていましたが、ReAMoプロジェクトでは、我々民間の事業者と航空局がダイレクトに打ち合わせして、今後どう運用していくべきかを議論するという、本格的な社会実装に向けてのフェーズに入ったことが決定的な違いだと思います。有人飛行機産業では航空会社が航空局と向き合って運航システムを社会実装してきたように、ドローンにおいても民間の事業者が、かつての航空会社の立場になったようなイメージです。ReAMoプロジェクトで掲げられた【空の産業革命に向けたロードマップ2022】(図11)では、2023年度中に運航管理システムをどういう形で社会実装するかという制度方針を策定し、2025年頃には、社会実装を開始していくことが掲げられています」(杉田さん)

kddi_図11.jpg

図11 空の産業革命に向けたロードマップ2022(経済産業省HPより引用)

一方、開発チームでは、今後の目標として、海外での活用も視野に入れた開発が進められています。

現在は日本国内で実証実験を行っている段階ですが、将来的には、日本で作られたドローン運航管理の技術を、海外でも使ってもらえるものにしていこうという目標が掲げられています。海外での活用にあたっては、転用する国によって、地形や環境、文化の違いなど、さまざまなことを考慮しつつ、その活用法を模索していく必要があります。それぞれの国にあったカスタマイズも可能な、柔軟性を持ったシステムにしていくことも視野に入れながら開発を進め、日本が開発したドローン運航管理技術を、国際標準と呼べるプラットフォームにまで育てていこうと計画されているのです。

ReAMoプロジェクトでは、最終的にレベル4でのドローン運用を目指して研究開発が進められていますが、その前段階のレベル3でも実現できる利用用途はたくさんあります。ドローンの機体としては、充電ポートが用意されているポート付きドローン(写真1)が少しずつ増えてきています。ポート付きドローンなら、自力で充電台に着地してバッテリーの充電を行うことができますので、大きな建物やインフラには、わざわざ遠隔地から有人地域を跨いで飛ばすのではなく、常時敷設させた活用が増えていくでしょう。現場に人がいなくても、充電やメンテナンスのために人員を割く必要がありませんので、ドローン自体は警備対象の建物に常駐させ、遠隔地から運用するといったことが可能になります。

kddi_写真1.jpg

写真1 ポート付きドローン(資料提供:KDDI株式会社)

ドローンの社会活用範囲は、これからますます広がっていきます。我々の生活圏の上を、荷物を運んだり、警備を行うための、運航制御されたドローンが飛び交うのを見かける日常が当たり前になる日は、それほど遠い未来の話ではなさそうです。

開発者の横顔


ドローンはまさに私の天職です

スマートドローンプラットフォームの開発に長年携わってきた杉田博司さん。ドローン事業は自分にとって天職だと言う杉田さんは、学生時代から続く不思議な縁を感じると言います。

「大学ではワンダーフォーゲル部に所属し、全国の山岳地域や自然保護地区を旅して周りました。ドローンに関わる仕事をするようになって特に感慨深かったのは、西表島や長野県の白馬など、DRESSプロジェクトの実証事業で訪れる場所のほとんどが、自分が学生時代にも訪れていた場所だったことです。ワンダーフォーゲル部で出かけて行くところですので、自然が残っていて、決して多くの人が暮らしている地域ではないのですが、でも確かにそこで生活している方たちもいらっしゃいます。ドローン事業をインフラ産業として成長させていこうと邁進していく中で、大学時代に訪れていた場所が、改めて自分を必要としてくれているのだという不思議な縁を感じています。就職してからは、半導体、カメラ、通信、ロボティクスと、いろいろな分野の仕事に従事させていただいて来ましたが、実はこれらの経験がすべてドローンに求められる要素だったというのも、とても面白い縁だと感じていて、いろいろな意味で、ドローンはまさに私の天職ですね」

kddi_杉田さん.jpg

KDDI株式会社 事業創造本部 LX基盤推進部 リーダー
KDDIスマートドローン株式会社 プラットフォームサービス開発部 部長
杉田 博司 さん

失敗を糧に成功を掴むというスタンス

KDDIに新卒で入社し、すぐさまNEDOのDRESSプロジェクトチームに加わった山崎颯さんは、プロジェクトの中で、NEDOの担当者にかけてもらった言葉が今でも忘れられないと言います。

「KDDIに入社したのは、いろいろな業界に携わりたいからという理由からだったのですが、私の専門が機械系だったのに対して、同期のメンバーは通信をしっかり研究してきた人たちばかりでした。そんな通信のスペシャリストたちと同じ土俵で勝負しても勝てないだろうし、向いてもいないだろうと思い、こともあろうに、通信会社の人事面接で、通信以外のところで新しいことをやりたいですとアピールしたんです。その結果、ドローン事業に配属され、今でもやりがいを持って臨める仕事にできているので、その時の人事の判断には感謝しています。DRESSプロジェクトでは、当初の希望通り、さまざまな業界の方と一緒に仕事をさせていただく機会をいただけたのと同時に、今の私の、仕事に対するスタンスやマインドを形作っていただけたように思います。DRESSプロジェクトの初期に行った、マスコミ関係者向けのデモフライトは、技術をアピールするつもりだったにも関わらず、最初はドローンを飛ばすことができず、現場で修正することによって成功を収めることができました。そのときにNEDOの担当者の方に、失敗は悪いことじゃない、それだけあなたたちはすごいことをやろうとしているんだと言って背中を押していただきました」

kddi_山崎さん.jpg

KDDI株式会社 事業創造本部 LX基盤推進部
KDDIスマートドローン株式会社 プラットフォームサービス開発部
山崎 颯 さん

なるほど基礎知識


複数台ドローンの運航管理システム

市街地など有人地帯の上空で目視外飛行が行えるドローンのレベル4運航では、複数のドローンが密集して運航されることが想定され、自社で管理するドローンの運航情報だけでなく、他事業者のドローンやヘリコプターとの接近情報も取得して連携し、運航の安全性を常に把握しながら、自社で運航する複数のドローンを管理するシステムが必要になります(図12、図13)。

将来的に社会実装が期待される複数台ドローンの運航管理システムでは、4G LTEネットワーク上で通信するスマートドローンを、予め設定されたルートに従って自律飛行させ、個体識別を行いながらシステム上で同時にモニターすることで、一人の管理者が一度に複数の機体を制御することを可能にしています。

これに加え、他の制御システムで運航する全国のドローンの情報、および、ヘリコプターなどの有人機の飛行情報システムとも連携することで、各事業者間がお互いのドローンを安全に運航させることができます。運航中のドローンやヘリコプターの接近時のアラートはリアルタイムでシステム上に表示されるため、担当者がドローンの衝突回避対応を行うことが可能となっています。

またこのシステムでは、運航中の機体のフライト情報だけでなく、飛行地域の電波状況、気象情報、侵入規制エリア情報なども一元管理することで、安全な飛行ルートの設定が行え、想定し得るさまざまなトラブルを事前に回避できるシステムとなっています。

kddi_図12.jpg

図12 ドローン運航管理システムイメージ図(資料提供:KDDI株式会社)

kddi_図13.jpg

図13 ドローン運航管理システム画面(資料提供:KDDI株式会社)

NEDOの役割

「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」
2017~2022年度

ロボット・AI部

物流分野やインフラ点検分野等において、無人航空機やロボットの活用による省エネルギー化の実現が期待されています。実際にリスクを伴う技術の社会実装を実現していくためには、技術そのものが活用できる形に開発するほか、安全性・機能性を評価する方法を整備し、より多くの機体が安全に運用できる飛行環境の整備が不可欠です。

NEDOは本プロジェクトにおいて、物流、インフラ点検、災害対応等の分野で活用できる無人航空機及びロボットの開発を促進するとともに、社会実装していくために必要な評価方法の開発、システム開発、飛行実証試験などを実施しました。このように、NEDOは引き続き、無人航空機等の市場拡大に向けて、貢献していきます。

NEDO担当者の声(森理人さん)

本プロジェクトの実施先としてKDDIを採択したのは、所有している通信インフラを利用した次世代のコネクテッドデバイスの世界を作ろうというしっかりとしたビジョンがあり、自動運転車の研究開発なども精力的にやられていて、ドローンの世界でも、そういった世界観を引き継いだ開発を行っていただける企業であろうと期待してのことでした。

本プロジェクトには多くの企業が参画しており、KDDIのような大きな会社もあれば、ベンチャー企業もありました。NEDOとしては、そうした企業文化の違いの緩衝材となり、意思統一を図れるようフォローすることを心がけました。

本プロジェクトにおいては、それまで専用のテスト施設でしか検証していなかったドローン運航管理システムを、全国13地域のリアルフィールドで同時に動かすチャレンジをしました。KDDIには、当日のオペレーションに尽力していただいことももちろんですが、事前事後に対象13地域の人たちにヒアリングをかけていただき、制度としての導入に向けて、課題の洗い出しを行っていただけたのが大変助かりました。

本プロジェクトでは、多くの企業や事業者の方々と一緒になって新しい産業を立ち上げるという、非常に貴重な経験をさせていただきました。現在、その成果を引き継いだ「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」(ReAMoプロジェクト)を進行中ですが、今後は国際的な技術標準の調和も見据えてプロジェクトを進めていきたいと考えています。

kddi_森さん.jpg

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
ロボット・AI部主査
森 理人 さん

関連プロジェクト


アンケート

お読みいただきありがとうございました。
ぜひともアンケートにお答えいただき、
お読みいただいた感想をお聞かせください。
いただいた感想は、
今後の連載の参考とさせていただきます。

Top