NEDO Web Magazine

環境問題対策

有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発

ガソリンベーパーを液化して回収 臭いのしないガソリンスタンドへ

株式会社タツノ

取材:December 2012 〜 March 2013

INTRODUCTION 概要


99.2% 揮発したガソリンの回収率

ガソリンスタンドに独特の臭いがつきものなのは、給油作業などの際にガソリンが揮発して気体(気化)となり、漂っているためです。ガソリンが気体になったものは、スタンドや石油業界では「ガソリンベーパー(ガソリン蒸気)」と呼ばれています。ガソリンベーパーは人体に有害性がある「揮発性有機化合物(VOC)」の一つです。VOCの排出削減には、国際的な取り組みが進んでいて、わが国でも2006年から改正大気汚染法が施行され、VOCについても排出規制が実施されています。ガソリンベーパーは、臭いや大気汚染に加えて、引火すると火災の原因にもなります。また、ガソリンスタンドにとって給油量の損失にもつながります。このガソリンベーパーをガソリンスタンドで液化、回収する装置を、給油計量機のトップメーカーである株式会社タツノがNEDOの委託で、開発、実用化しました。臭わない、大気を汚さない、引火防止により安全性も高い、そして経済的なスタンド経営も可能にするガソリンベーパー回収装置、その普及拡大が期待されています。現在、累計で84台が日本全国で活躍しています。

BIGINNING 開発への道


20klタンクローリー22台分のガソリンが放出

ガソリンスタンドでは特有の臭いが感じられます。これは、車への給油やタンクローリーからのガソリン荷卸しのとき、液体のガソリンが揮発して気体になっているためです。ガソリンのように揮発しやすい化学物質は「揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)」とよばれ、公害の原因物質とされています。

気体になったガソリンは「ガソリンベーパー(ガソリン蒸気)」と呼ばれます。日本で排出されるVOC全体のうち、約10%がガソリンスタンドからのものです(図1)。ガソリンベーパーは臭いを発するほか、他の化学物質と結びついて光化学スモッグを引き起こすとも考えられており、また、静電気などにより引火して火災を引き起こす原因にもなります。

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図1 業種別のVOC排出量
環境省2007年5月発表の報告書より。

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特殊カメラで撮影したガソリンベーパー発生の様子。給油口から立ち上がる黒い霧がガソリンベーパー(画像提供・株式会社タツノ)

日本全国のガソリンスタンドで発生しているガソリンベーパーは、1日で20kl搭載の大型タンクローリー22台分。大量のガソリンを使わず大気中に逃がしていることになります。逃がしたガソリンを使えるとしたら、その価値は年間で300億円にもなるとの試算もあります(図2)。

ガソリンスタンドで発生するガソリンベーパーを高い率で回収して再生できれば、臭い、公害、資源の無駄、コスト高といった様々な弊害を解消することができます。そこで、ガソリンスタンドで給油をするためのガソリン計量機などを製造するタツノは、ガソリンベーパーをその場で瞬時に液化して、99%以上の割合で回収するシステム「エコステージ」を開発し、販売を始めました(図3)。これは、NEDO「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発プロジェクト」の委託を受けて取り組んだ成果です。

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図2 毎日、膨大な量のガソリンが大気に放出されている

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ショールームに並ぶ「エコステージ」、右のカットモデルが給油時のベーパーを回収するD型、左の2機がローリーからスタンドへ荷卸し時に発生するベーパーを回収するL型

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図3 エコステージD型(上)とL型(下)の導入効果イメージ。給油時、荷卸し時のベーパー発生量は多く、本機を設置することでVOCの排出抑制と資源の活用(損失削減)、臭いのないクリーンなスタンド環境の実現、安全性の向上も期待できる

ガソリンベーパーを液体にして回収

タツノが、ガソリンベーパーを液化して回収する「エコステージ」を開発したのは、ガソリン特有の臭いを封じたいと考えたからでした。1998年より、セルフ方式のガソリンスタンドが日本でも認められると、お客さんがガソリンをより近くで扱うことになり、「臭いが付くのがいや」といった声が女性客などから上がっていたのです。また、規制緩和でコンビニエンスストアを併設するガソリンスタンドも増え、ガソリンベーパーによる臭いをなくしてほしいという要望も高まっていました。

このような状況に対し、欧米などで使われているガソリンベーパー回収システムでは、ベーパーを気体のまま回収するため回収率は80%台で、臭いを封じるまでには至りません。「そこで、液体にして回収することを考えたのです」。こう話すのはエコステージを開発したタツノ専務取締役で研究開発本部長の本橋俊明さんです。

本橋さんは、欧米のガソリンベーパー回収システムを見るたび、かなりの量のベーパーが排出されてしまうことに疑問を抱いていたと言います。「なぜ、こんなもったいないことをしているのか、気体でなく液体で回収すれば、臭い放出の問題の解決にも近づくはず」と本橋さんは考えました(図4)。

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図4 欧米で一般的なガソリンベーパー回収装置の方式と、タツノが開発したエコステージの回収方式の違いや特長

「圧縮・冷却」と「気体の循環」で回収

では、実際に「エコステージ」はどのようにガソリンベーパーを液化して回収しているのでしょう。エコステージでは、自動車に給油をする場合、まず、自動車のガソリンタンク内のガソリンベーパーが給油ノズルから吸気されます。吸気されたガソリンベーパーは圧縮ポンプを通って圧縮され、さらに凝縮器で冷却されます。この圧縮と冷却により、ガソリンベーパーの大部分が液体のガソリンに変わるので、これを地下タンクに戻します。

一方、凝縮器を通っても液体にならなかったガソリンベーパーは、別のラインの高濃度化装置へと送られます。ここで吸着剤により濃度を高められたガソリンベーパーは、再びはじめのポンプに戻ってさきほどの凝縮器に戻ります(図5)。

この仕組みにより、「エコステージ」は、気体のまま回収する他の装置にはない99.2%という回収率を実現しました。また、10万時間に1回のメンテナンスで済む耐久性、全面工事をせずにアイランド(計量機などが置かれた場所)の近くに設置するだけの設置簡易性などの特色も兼ね備えています。

本橋さんは、さらにもう一つエコステージの特長を強調します。「それはガソリンが液化・回収されていくのを可視化したことです」

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エコステージ専用のベーパーの回収を可能にした給油ノズル。一見、従来タイプと代わらないが、利用者が特別な操作をしなくとも、ベーパーを回収できる工夫が詰め込まれている

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図5 ガソリンベーパーを回収する仕組み

ガソリンベーパーは目には見えないので、回収装置の運転状況や効果を、ユーザー(スタンドの経営者や従業員)に理解してもらうことが難しい製品でした。そこで、ユーザーに、実際にガソリンベーパーが液体として回収されていく様子を見てもらえるように液化確認窓を設け、装置の実効性を実感してもらうようにしたのです。

ユーザーは、ガソリンベーパーが液化されていく様子を、エコステージ内の透明な確認窓を通していつでも自分の目で確認することができます。このような工夫が可能になったのも、気体ではなく液体にしてガソリンベーパーを回収するという考え方と液化を可能にしたタツノの技術力があったからです。

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凝縮器の中で液化していく様子を窓から確認することができる(写真は展示モデル)

必要な装置の新規自社開発も

タツノは、2006〜08年度の3年間、NEDOの「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発プロジェクト」の委託を受けて回収装置の研究開発に取り組みました。水蒸気透過分離膜やガソリンベーパー透過膜などの開発を相談していた産業技術総合研究所との共同プロジェクトでした。

本橋さんは、「まず、ベーパーを吸い込むための圧縮ポンプの自社開発から着手しました」と振り返ります。「と言うのも、製造を相談したどのポンプメーカーからも、ガソリンを扱うのは危険で協力できないと言われてしまったんです。そのため、圧縮ポンプを自社開発する方法しかなかったのです。何度もポンプが故障して、トライアンドエラーの連続でした」

給油ノズルも独自開発しました。二重構造にして、内側に回収したガソリンベーパーを、外側に液体ガソリンを通すようにしました。

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独自開発した圧縮ポンプ

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エコステージの給油ノズル(左)にはベーパーを回収吸引する隙間がある。ホースも二重構造になっていて(右)、外側の通路がガソリンの給油路で、ガソリンベーパーは内側の金属部分の隙間を通って回収されていく

これらの各装置を組み合わせて、2年目には実証モデル機を開発し、自社内に設置した実証試験用の模擬ガソリンスタンドで、実際のガソリンを使った試験を繰り返しました。

また、同時並行で、ガソリン液化回収装置を使用するにあたっての法的課題を解決していきました。消防法に基づいて設立されている危険物保安技術協会に、特別の審査会議を開いてもらい、構造規定の検討を経て使用認可を得ました。

最終年度である2008年度には実サイズに近いガソリン液化回収装置を完成させ、回収率99.2%を達成しました(図6)。

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図6 エコステージD型のスタンドへの導入イメージ

BREAKTHROUGH プロジェクトの突破口


圧縮と冷却の研究を重ねて「瞬時に液化」を実現

タツノ研究開発部課長の関谷勝彦さんは回収装置の実用化の苦労を、「はじめはガソリンベーパーがまったく液体にはならずに頭を抱えました」と語ります。「そのときは現在の製品のように、ガソリンベーパーを瞬時に液化できるようになるなどとても信じられませんでした。ベンチスケールの実験装置から、ポタ、と液体が初めて見えたときも、まだ自信はありませんでした。でも、その後、液体が多く見え始めた段階で、この方向で開発を進めればものになると確信できるようになりました」

では、ガソリンベーパーがまったく液体にならない状態から瞬時に液化する状態へ、どのような技術をタツノでは打ち立てたのでしょう。

ガソリンベーパーを液化するには、気体を圧縮すること、それに気体を冷却する工程が必要です。しかし、圧縮と冷却の両方を単純に強めればよいわけではありません。本橋さんは、「吸引のときは水分も同時に吸うため、冷却温度が低すぎると管が凍り付いて、詰まってしまうのです」と説明します。

そこで、本橋さんや関谷さんたちは、冷却と圧力の最適条件を導き出していきました。冷却を行う凝縮器のなかで熱がどのように伝わっていくか詳しく実験で調査しました。同様に、ガソリンベーパーの圧縮に関するデータも集めました。本橋さんは、「理論的な分析も含め、試行錯誤を何度も繰り返して、最適条件を導き出していきました」と語ります。

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(左の写真)凝縮器、ポンプ、液化確認窓、高濃度化装置(吸着塔)などが詰まったエコステージD型の内部、(右の写真)左側の大きな円筒形の装置が凝縮器

循環システムで臭いを出さないほどの回収率を達成

タツノでは、当初の開発動機であるガソリン特有の臭いをなくすことにもこだわりました。「ガソリンベーパーの回収というと、80%程度を回収する欧米の尺度を考えがちです。でも、私たちは、臭いを発生させないことを当初からの目的としてきましたので、それでは不十分だと考えたのです」と本橋さんは言います。

動物に比べれば劣っても、人の嗅覚もそれなりに敏感です。本橋さんたちは、NEDOプロジェクト以前の研究で、ガソリンベーパーの回収率をどれだけ高めれば、臭いを感じなくなるか研究していました。「その結果、臭いを抑え込むためには、回収できずに漏れてしまう率を1%未満にしなければならないことがわかったのです」(本橋さん)

ガソリンベーパーを液化することだけを考えれば、圧縮ポンプと凝縮器だけで相当の回収率が見込まれます。しかし、それだけでは1%以上のガソリンベーパーが大気中に漏れ出してしまいます。そこで、タツノが導入したのが、液体にならなかったガソリンベーパーを再び圧縮ポンプと凝縮器に送りこむ循環システムでした。

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「エコステージ」の高濃度化システム(左写真が吸着剤、右写真が吸着塔)。この中で、液化しなかったガソリンベーパーを吸着させる。二つ並んでいるのは一つを稼働させているとき、もう一つを清浄するため

まず、圧縮や冷却をしても液体にならなかったガソリンベーパーを高濃度化装置に送り込みます。ここで、ガソリンベーパーを吸着させます。その後、クリーンな空気を外部へ放出する一方、吸着で濃度が高まったガソリンベーパーを再び圧縮ポンプや凝縮器のあるラインへと戻す設計としました。こうして、臭いを出さないほどの高い回収率で、ガソリンベーパーを液体にしてしまうシステムをつくりあげたのです。

もちろん、臭いを封じるほどの高い回収率は、揮発性有機化合物を抑えたり、静電気による火災を防いだり、また、ガソリンのコストを低くしたりといった様々な利点ももたらしました。

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高濃度化装置(吸着塔)で濃度の高まったベーパーを冷却するブラインポンプ(左)と液化確認窓(右)

FOR THE FUTURE 開発のいま、そして未来


"臭い無し"のスタンドがこれから増加

タツノは2010年に、給油時のガソリンベーパーを回収する「エコステージD」を発売しました。さらに続けて、ガソリンスタンドで発生するVOCの4割程を占める、タンクローリーからの荷卸し時のガソリンベーパーを回収する装置「エコステージL」も発売しました。2012年末現在、計84台が、全国のガソリンスタンドで活躍しています。

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図7 エコステージL型のシステム構成概要

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神奈川県海老名市のセルフスタンドに設置された「エコステージL」(左)とその液化確認窓(右)。しっかりとガソリンベーパーが液化回収されているのがわかる。同スタンドでは給油計量機にも「エコステージD」を導入している

2013年春には、ガソリンベーパー回収装置と給油のためのガソリン計量機が一体化した新製品や、ガソリン回収率は低いものの価格を抑えた新製品も発売する予定です。また、海外市場へも普及の働きかけをしています。

コンビニ併設のガソリンスタンドからは、エコステージのおかげで臭いがしなくなって助かるとの評判も聞こえてきています。本橋さんは、「エコステージの普及が進めば、VOCの削減量は年間12万トン以上になるはずです。また、購入者の費用対効果面でも、大規模ガソリンスタンドならば3年程で設備投資を回収することができます」と話します。

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ショールームには2013年発売予定のエコステージ一体型ガソリン給油計量機が展示中

「開発を速く進めることができた」

NEDOプロジェクトにより、液化膜の開発を担った産業技術総合研究所との結び付きもプロジェクトの成果と本橋さんは言います。「産総研とタツノの間にNEDOが入っていただき、円滑にプロジェクトを進めることができました。プロジェクトで開発された膜そのものは実用化に至っていませんが、プロジェクト終了後の現在も膜の開発は進行中です」

また、プロジェクト期間中は、開発の進捗状況をNEDOの委員会で報告し、新たな技術的課題などを得ることを繰り返してきました。「プロジェクト進行中は大変でしたが、終わってみればNEDOプロジェクトで取り組んだからこそ研究開発を速く進めることができたと思えます」(関谷さん)

世界で広まる揮発性有機化合物排出規制の中で

本橋さんは今後の抱負を語ります。「今、日本全国にガソリンスタンドは3万7千店ほどあります。ガソリンベーパー回収装置を設置することが当たり前の状態にしたいと考えています。既に気体のままでの回収装置が普及している海外でも、システムの一部ユニットを販売するなどしていきたいですね」

欧米やアジアなどの各国ではVOCの排出規制が強化される方向性が強まっています。その一方で、日本は取り組みが遅れているとも言われています。ガソリンベーパーの排出についても、海外では既に規制が行われている国もあります。将来的には日本でもガソリンベーパーの排出規制が実施されることも考えられます。ガソリンベーパー液化回収システムの必要性は、臭い、公害、安全など、様々な社会からの要求により、今後高まっていくことが予測されます。(2012年12〜2013年3月取材)

開発者の横顔


開発に"発想"と"苦労"と"夢中"あり

形になるものには夢がある

本橋さんは、現在ガソリンスタンドで設置されているタツノ製の計量機のほとんどを開発してきました。「エコステージ」の開発でも、液化して回収すること、液化の様子を可視化することなどの構想を次々と打ち出してきました。

技術が製品になったときの思いを本橋さんはこう話します。「農家や家庭菜園をしている方々は、秋に収穫を迎えるとうれしいでしょう。種をまいた野菜がたくさん採れる。それに似た感覚だと思います。製品開発は、製品として出来上がるところに夢があるのだと思います」

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株式会社タツノ
本橋さん

どんな状況でも臭いを出さない

関谷さんも、本橋さんとともに、ガソリンベーパー回収装置の開発に最初から参加してきました。「どのような状況であってもガソリンの臭いを出さないようにするということを常に考えて、開発に取り組んできました」

ガソリンという危険物を扱うため、ガソリンを扱った試験をすべて屋外で行いました。なおかつ昼間は温度が高まるため、早朝から実験を開始したり、氷を買って低温の状態をつくったり、苦労もあったといいます。「真冬も屋外での試験。よくそんなことしていたなと思うようなこともありますが、試験中は夢中で、そんなことなにも感じないから不思議ですね」

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株式会社タツノ
関谷さん

なるほど基礎知識


「揮発油」ともよばれるガソリン

ガソリンは「揮発油」とも呼ばれます。「揮発」とは、常温・常圧の環境で液体が気体に変わること。ガソリンは、揮発油の呼び方からわかるように、とても気体になりやすい物質です。

液体をコップの中に入れて放っておくと揮発していきますが、コップにふたをすると揮発しづらくなります。液体がふたを圧しているときの力は「蒸気圧」といい、この蒸気圧が高い物質ほど、揮発しやすくなります。ガソリンは20種類ほどの液体成分が混合されていますが、それぞれの液体成分の蒸気圧が高いため、つぎつぎと揮発していきます。

実際のガソリンスタンドでは、たとえば自動車に給油すると、ガソリンタンクのなかで液体のかさが増えていきます。その液体の上に満ちている気体のガソリン(ガソリンベーパー)は、タンク内に止まることができなくなり、外気へと漏れ出てしまいます(図)。

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また、自動車では、ガソリンが程よく揮発しないと、エンジンがかかりにくくなったり、加速しにくくなったりといった問題が起きます。一方で、ガソリンはまわりの温度が高いと揮発性がとても高くなり、逆にまわりの温度が低いと揮発性がとても低くなります。

このため、石油元売り会社では、ガソリンの複数ある原料の比率を変えることで、秋から春にかけては揮発性を高くした冬用ガソリンを、春から秋にかけては揮発性の低い夏用ガソリンを使っています。

NEDOの役割

「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発」

このプロジェクトがはじまったのは?

揮発性有機化合物(VOC: Volatile Organic Compounds)は光化学オキシダントの原因物質であり、また、最近では浮遊粒子状物質(SPM)生成原因物質の一つとも考えられ、その排出削減技術の研究開発が重要な課題になっています。2006年度より改正大気汚染防止法が施行され、VOCの削減対策は喫緊な課題となってきました。VOCを含む有機化合物の多くは2001年度から施行されている「化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)」により、各事業所から環境(大気、水、土壌)への排出量および移動量が届出されています。こうした中、従来から事業者の間で実施されてきた自主規制や化学物質管理をより促進し、有害化学物質のリスクを低減するための安価な回収、無害化、代替品等の技術開発を目的に本プロジェクトは開始されました。

プロジェクトのねらいは?

環境省が実施したシミュレーションの結果では、2000年度のVOC排出量は146.5万tで、光化学オキシダントおよびSPMの目標を達成するためには、2010年度までに2000年度比でVOC排出量を3割削減する必要があるとされました。環境省(2007年5月)によれば、国内のVOC 年間総排出量は約120万tで、塗装分野が40%程度を占めています。塗装分野以外ではガソリンスタンドから発生するガソリンベーパー(気化したガソリン、ガソリン蒸気)が10%を占めています。ガソリンスタンドは全国にくまなくあり、そのほとんどは市街地や住宅地域に位置しているために緊急に対策をとる必要があります。そこで、本プロジェクトでは、ガソリンベーパーの排出に伴うVOC 排出削減を目的として、ガソリンスタンドで使用するガソリンベーパー回収装置の研究開発を行いました。プロジェクトに参加したガソリン給油計量機メーカーのタツノでは、独自の技術と回収方式で回収率99.2%を誇る、世界最高水準のガソリンベーパー回収装置の開発、実用化に成功しました。

NEDOの役割は?

有害化学物質のリスク削減技術の開発は、社会的必要性も大きく国家的な課題でもあります。その成果は、国民の環境と調和した健全で安全、安心な生活にもつながります。本プロジェクトでは、毎年、新規テーマの公募を実施しており、外部有識者による技術面、事業面からの審査を実施して、最新動向を考慮しながら優れた研究開発テーマを採択してきました。経済産業省およびNEDO技術戦略マップでは、ガソリンスタンドでのガソリンベーパー回収技術は有害化学物質リスク削減への寄与度が大きいと位置づけられており、NEDOでは有害化学物質の排出削減に向けて回収技術の研究開発を支援することとしました。支援に当たっては、NEDOの有害化学物質のリスクに関する知識や研究開発の実績を活かしてプロジェクトを進めてきました。

関連プロジェクト


    • 有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発プロジェクト(2006~2008)

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