NEDO Web Magazine

広報誌 Focus NEDO 92号

03.

未来を切り拓く実証施設 「廃プラケミカルリサイクル技術大型汎用実証設備」

廃棄プラスチックを化学原料に再生

「廃プラケミカルリサイクル技術大型汎用実証設備」

廃プラケミカルリサイクル技術大型汎用実証設備廃プラケミカルリサイクル技術大型汎用実証設備

MISSION

マイクロ波を活用し、ケミカルリサイクルの省エネ・CO2排出量削減を実現せよ!

日本国内において、年間800万トンを超えるとされる廃棄プラスチック(以下:廃プラ)。さまざまなリサイクル技術で再資源化が進められていますが、中でも廃プラを分解して基礎化学原料(モノマー)に戻し、新たな製品をつくる「ケミカルリサイクル」が注目されています。しかし、現在の技術では、高温で熱分解するプロセスで多くの化石燃料を用いるため、エネルギー消費やCO2排出、コスト等が課題となっています。また、既存の分解技術で処理できるプラスチックの種類が限定的なため、汎用性が低いという問題もあります。

こうした背景の下、NEDOとマイクロ波化学株式会社は、2020年度から「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発フェーズ」事業において、「マイクロ波プロセスを応用したプラスチックの新規ケミカルリサイクル法の開発」に取り組みました。さらに、設備の大型化や汎用化に取り組み、2022年に国内初となる「マイクロ波を用いたケミカルリサイクル技術大型汎用実証設備」が完成しました。

マイクロ波とは、電子レンジと同じ仕組みで、加熱したい対象物に直接エネルギーを伝えることができる電磁波の一種です。マイクロ波プロセスはエネルギー効率が高く、熱分解プロセスで消費していたエネルギーを約50%削減することができます。また、再生可能エネルギー由来の電気で発生したマイクロ波を利用すれば、実質的にCO2を排出せずに廃プラの再資源化も可能になります。

本プロジェクトでは、対象となるプラスチックの種類を増やし、汎用性を高めるために、マイクロ波の複素誘電率※1を精密に測定する「高温複素誘電率測定装置」を開発。さらに、1日当たり1tの処理能力を持つ本実証設備において、多様かつ大規模な廃プラのモノマー化に向けた実証試験を開始しました。

今後は、年間1万tの処理能力にスケールアップし、2025年までの社会実装を目指します。NEDOとマイクロ波化学は、本事業で開発したプラスチック分解技術「PlaWave※2」のさらなる高度化を図り、社会実装に向けた取り組みを加速することで、カーボンニュートラルと循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に貢献します。

※1 対象物質のマイクロ波の吸収能力を示す数値
※2 マイクロ波による独自のプラスチック分解技術プラットフォーム

マイクロ波を利用し、廃棄プラスチック(ポリスチレン)から得た分解オイル(写真左)。分解オイルからスチレンモノマー(中央)を回収、精製・再重合することで再生ポリスチレン(右)を生成。マイクロ波を利用し、廃棄プラスチック(ポリスチレン)から得た分解オイル(写真左)。分解オイルからスチレンモノマー(中央)を回収、精製・再重合することで再生ポリスチレン(右)を生成。

マイクロ波を利用し、廃棄プラスチック(ポリスチレン)から得た分解オイル(写真左)。分解オイルからスチレンモノマー(中央)を回収、精製・再重合することで再生ポリスチレン(右)を生成。

Top