NEDO Web Magazine

広報誌 Focus NEDO 92号

02.

特集|実用化への歩み、着々 バイオものづくり拠点 ととのう!

特集|実用化への歩み、着々 バイオものづくり拠点 ととのう!

カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発

バイオものづくりって何?

「バイオものづくり」とは、生物の力を活用し、物質を生産する手法です。古くからある醤油や味噌等の発酵食品も、バイオものづくりの一種です。この従来の手法に対し、最先端の遺伝子工学やゲノム編集などの技術を用いて、人間が必要とする物質の生産のために微生物などの能力をデザインするのが現代のバイオものづくりです。バイオものづくりは、石油からバイオ由来の原料への転換と、化学合成に必要な高温・高圧のプロセスから常温・常圧への転換が可能なため、炭素循環型社会の実現に貢献できます。

プロジェクトマネージャーの林 智佳子室長は「製造業各社も2050年のカーボンニュートラルを目指しており、環境負荷の低減につながるものづくりへのニーズが高まっています。そうしたニーズに応え、バイオエコノミー社会をつくることがプロジェクトの大きな目的です」と話します。

バイオファウンドリ拠点の整備が本格化

NEDOは、バイオものづくりの実用化に向け2016~2020年度の5期にわたって「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」事業を実施し、有用物質を生産する「スマートセル」構築の技術開発に取り組みました。このプロジェクトでは、例えばコレステロールエステラーゼの分泌生産量を野生株の30倍以上に向上したスマートセルを開発。体外診断用医薬品原料として製品化することに成功しました。しかし、スマートセルを用いたものづくりをさらに拡大するためには、実験室レベルの成果から産業レベルへのスケールアップが必要となり、さまざまな課題を解決しなければなりません。また、人材育成プログラムを提供するとともに、ものづくりの技の伝承をデジタル技術で補完するなど、次世代型生産プロセスの構築も欠かせません。

現在NEDOは、これらの課題を乗り越え、バイオものづくりを加速するための事業を実施しています。中でも実用化への橋渡しを行う上で欠かせない、試作やスケールアップが行えるバイオファウンドリ拠点の整備は重要となります。また、バイオファウンドリは、バイオものづくりを担う人材の育成拠点としても期待されています。サブプロジェクトマネージャーの峯岸 芙有子主任は「石油を原料としていたものづくり企業がバイオプロセスに転換していく際にはさまざまな課題が生じますが、それぞれの課題の解決に必要な設備を有するバイオファウンドリの整備が進んできているので、多くの企業に活用してほしいと思います」と期待を込めました。次ページからは、このプロジェクトで各地に設置したバイオファウンドリの取り組みと役割を紹介します。

※高度にデザインされ、目的とする物質を効率的に生産する能力を高めた細胞

開発ステップに合わせたバイオファウンドリを整備

スマートセル開発から生産プロセス開発、生産実証が連携。さらにバイオものづくりを担う人材を育成することで産業化を加速。

プロジェクトマネージャー 林 智佳子|サブプロジェクトマネージャー 峯岸 芙有子プロジェクトマネージャー 林 智佳子|サブプロジェクトマネージャー 峯岸 芙有子

目指すのは化石資源に依存しない持続性のある循環型ものづくりです

プロジェクトマネージャー
林 智佳子(写真左)
NEDO
材料・ナノテクノロジー部
バイオエコノミー推進室
室長
博士(理学)

バイオものづくりへの転換を目指す企業が増えていると実感しています

サブプロジェクトマネージャー
峯岸 芙有子(写真右)
NEDO
材料・ナノテクノロジー部
バイオエコノミー推進室
主任

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