TSCの10周年の節目に、歴代のセンター長が顔をそろえました。
これまでの歩みと将来の展望について語った様子をお届けします。
TSC設立当時を振り返って
岸本 | 本日はお時間いただきありがとうございます。さっそくですが川合さん、TSCの設立時を振り返って、経緯等をお聞かせください。 |
川合 | センター長を打診されたときは少々悩みましたが、経済産業省がエネルギー、産業技術分野に特化したシンクタンクを作るということでやりがいを感じ、引き受けました。 |
岸本 | 設立の目的は、エネルギー・環境・産業技術の発展のために、的確な技術戦略をつくることでしたね。 |
川合 | 特許や各国の政策を含む技術情報を収集・分析し、日本の指針となるように編集をして政府に伝え、具体的な戦略を策定することと、そうして得た有益な情報を企業や産業界へ発信することが大事なミッションでした。 |
岸本 | センター長を務められた期間で印象に残る出来事、取り組みなどはありましたか。 |
川合 | 毎月の産業技術環境局長への説明に加え、不定期で次官や製造産業局長との意見交換を行っていたことは忘れません。私も希望を多くお伝えしましたが、皆さん真摯に受け止めてくれました。印象に残る取り組みといえばメンバー全員から「夢の産業技術」を募集したことです。そのときに出た「空飛ぶクルマ」「ブレインマシンインターフェイス」等のアイデアが今、実現に近づいているのはうれしいです。 |
岸本 | 川合さんが自ら説明されていたということからも、設立時の熱を感じずにはいられません。三島さんはTSCにどのような印象を抱かれましたか。 |
三島 | フリーアドレスのオフィスで皆さんが本当に自由に打ち合わせをしている姿が新鮮で、印象に残っています。発足当時から継続している毎週月曜日の有識者を交えた技術戦略ミーティングも、特に若い人たちが活発にリードしていて、参加するのが楽しみでした。 |
時代の変化とミッションの再定義
川合 | 岸本さんは2020年4月に就任されましたが、現在のTSCをどのように位置付けていますか。 |
岸本 | 技術戦略の策定が大事な役割であることは変わりありませんが、メンバーが、よりグローバルな視点から国内外の政策や産業動向、市場の動向を捉えた技術戦略というものに注力していることが特徴だと思います。私が着任した際は、技術インテリジェンス機能の強化が求められていました。メンバーも増えた時期でしたし、何をしたら強化になるのかを議論し、ミッションの再定義を行いました。新しいミッションをメンバー全員のボトムアップでつくったことも印象深いですね。 |
三島 | TSCはメンバー全員が、これからの社会はどうあるべきか、そのためにNEDOやTSCが何を提案していけばいいのかを常に意識していたと思いますが、岸本さんの下でもそれは変わっていないようですね。 |
岸本 | そうですね。着任後まもなくコロナ禍に見舞われた際も、コロナ後の社会像や必要とされるイノベーションは何かをユニット横断で議論し、2020年6月に「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」というレポートを公開しました。約2カ月という短期間でまとめ上げたのは、新たなミッションの「社会の変化を敏に捉え」という言葉通りの成果でした。このレポートは多くの方の目に留まり、国際会議での講演依頼や企業からの取材など、TSCの認知を高める機会にもなりました。 |
川合 | 当時はニュースを見ても混沌としていましたから、社会がどう対応すれば良いか方向を示したという意味で、反響も大きかったのでしょう。 |
三島 | これからの社会がどうなっていくかを就任から約1年でまとめられたのも素晴らしいなと思いました。 |
岸本 | 「豊かな未来」という将来像を示したレポートですね。このレポートでは世の中の白書や報告書を分析して、価値と社会像、イノベーションの例を提示でき、大変なときだからこそ、より良い将来を構想するマインドを持った組織であることを実感しました。 |
10周年のTSC、そして次の10年へ
三島 | 例えば、企業からTSCに出向している方が会社に戻ったときに「TSCは楽しかった、自分を成長させてくれた」と思われる組織になるといいですね。組織の文化を育てるという意味では10年は1歩目。まだまだ若い組織ですから、どうやったらTSCがより良い組織になるかを考えながら、次の10年に向かってほしいと思います。 |
川合 | 期待は大きいのですが、一言で言えば社会から尊敬される存在になってほしいと願っています。数あるシンクタンクの中の1つではなく、世界を変えるような影響力のある提言ができるように、我々も協力を惜しみません。 |
岸本 | ありがとうございます。TSCが20年、30年と発展していくには、私たちの活動が信頼されるものでなければならないでしょう。地球環境やエネルギーのような社会の課題に取り組み、より早い解決につなげるため、多くのステークホルダーとコミュニケーションを図り、技術を社会に定着させる方法も含めた提言を続けたいと思います。 |