次世代電力ネットワークの実現に向けた大きな一歩。
今後の進展にも期待
「日本版コネクト&マネージ」というプロジェクトは、机上の空論ではなく、現状をベースに再エネ導入量を増やすという大きな意義がありました。私は中立の立場から日本の未来のために働こうと臨んできましたが、NEDOのプロジェクトマネージャーと密に情報交換しながら進められたことも、スムーズに仕事ができた一因と考えています。また、電力供給会社、メーカー、中立組織といった関係者が共に活発な議論を行いながら国のために技術開発を進める方式は、海外にあまり例がなく、NEDOの事業としてふさわしいものだといえるでしょう。今回開発した技術は、日本のみならず海外の国々にも適用できるものであり、広く技術が活用されるようになれば評価はさらに高まるに違いありません。高圧直流送電(HVDC)※1や分散型エネルギーリソース制御技術の研究開発も進んでいます。しかし、2030年の再エネ導入目標を達成するには、まだ課題も多く、今後のNEDO事業の進展を期待してやみません。
ゴールを見据え、トータルな視点で脱炭素への道をリードしてほしい
本プロジェクトのノンファーム型接続の開発に関しては、前提となる細部の制度づくりと技術開発が同時に進んでいたことにより、状況の変化に柔軟に対応しながら開発するという難しさがありました。さらに、2023年度のプロジェクト終了後、2024年4月からすぐに社会実装しなければならず、実施者のプレッシャーは小さくなかったはずです。そうした状況の中、私も配電系を含めた観点から技術開発の方向に間違いがないようにアドバイスすることを心掛けてきました。電力ネットワークの次世代化という開発テーマは関連する分野が広く、一つひとつの開発プロジェクトの目標とトータルなシステムとの整合性、そしてマーケットの要望等、全てを俯瞰する視点が大切です。2050年の社会のニーズは今とはまったく違う可能性さえあり、せっかく開発したシステムが無駄にならないように、ゴールから逆算して今なすべきことを考える役割を、ぜひNEDOにがんばってほしいと思います。
より効率的で安定した電力供給を実現するために
産学官の連携による信頼性の高いシステムを評価
再エネの大量導入を図るため、制御システムを開発するとともに、基盤技術を確立しようとする「日本版コネクト&マネージ」は、産学官が力を合わせて課題解決に取り組む必要があり、そこでのNEDOの果たす役割は非常に重要だと考えます。本プロジェクトについては当初から注目してきましたが、「ノンファーム型接続」や「N−1電制」のように常時稼働しているわけではないシステムでありながら、非常に信頼性の高いものになっていて、着実に成果を上げていると感じています。
今後、解決しなければならないのは低コスト化です。いかに国民の負担を抑えることができるか。難しい課題ではありますが、HVDCの基盤技術開発で既存交流送電システムより20%以上のコストを削減できることを示したように、他でもそうした取り組みが進むことに期待したいと思います。
挑戦しがいのあるテーマに挑むチャンスと捉えて
私自身、2000年代初頭から低コストで電力系統の安定化を実現する日本版スマートグリッドというテーマに取り組んできましたが、当時電力分野は技術的には飽和したとされていました。その後、東日本大震災を経験し、また、2050年にカーボンニュートラルを達成するという課題に直面して、今また挑戦しがいのある分野になったと感じます。研究者にとっては現実的な課題に携わるチャンスであり、若い世代にとっても成長を実感できるテーマではないでしょうか。
二十数年前、海外には需要家側を調整力に活用しようとする概念はありませんでした。その後NEDOの主導によって海外に種をまいてきた結果、現在では多くの国でローカルフレキシビリティ※2を活用する共通プラットフォームを構築しようとしていますが、日本が先行して築いた技術を生かせば、イニシアチブを取る機会はまだまだあると思っています。良いシステムを可能な限り低コストで構築するために、NEDOのこれからの取り組みを応援したいですね。