大手通信キャリアを中心に提供されてきた5Gサービスは、スマートフォン等の電気通信回線網にとどまらず、交通や物流、製造、医療、教育、観光等、幅広い産業に大きな変革をもたらすことが期待されています。しかし、5Gネットワークの活用が多様化すれば通信データ量が増え、トラフィックの計画や管理が困難になると予想されるため、それらに対応できる機敏性・柔軟性と信頼性の向上が不可欠です。また、トラフィックや収容回線数の増加に対応できる、大容量かつ省エネルギーな運用システムも求められます。
NEDOと日本電気株式会社(NEC)は、「ポスト5G時代のモバイルコアの実現に向けた高信頼性・柔軟性を両立するクラウド技術拡張に関する研究開発」に取り組み、産業ITシステムでの活用を見据えた5Gコアネットワーク(5GC:5th Generation Core Network)の開発に成功しました。
本プロジェクトでは、クラウド技術を用いることで、サービスや通信処理をマイクロサービスの単位に分割。サービスの多様化やトラフィックの肥大化に柔軟に対応できる他、ネットワークの設定・制御に外部のネットワークシステムからアクセスできるオープンAPI※を搭載しています。また、サービスを中断せずに機能アップデートできるシステムや、過剰な負荷が集中した際もシステムダウンしないシステムを搭載し、社会基盤となるテレコムネットワークに不可欠な高信頼性を確保しました。
一方で、トラフィックの肥大化には、消費電力量の増加という課題が伴います。そこで、ハードウエアを活用したパケット高速転送技術と、ハードウエアリソースを動的制御する負荷判定技術を開発しました。消費電力当たりのデータ転送量(スループット)で従来比2.8倍のデータ伝送量を実現すると同時に、トラフィックが空いているときには消費電力を最大20%削減することも可能となります。
今後は、さまざまなサービスとネットワーク、アプリケーションが一体となり、システム全体の最適化を図っていくことが求められます。NEDOは、日本のポスト5G時代に対応した情報通信システムの中核となる技術を開発し、製造基盤を強化することで、全ての人とモノがつながるネットワークインフラの実現を目指します。