NEDO Web Magazine

広報誌 Focus NEDO 89号

02.

特集|NEDO Supply Chain Data Challenge

受賞した
3つのチームをご紹介!

Space BD株式会社

アイデア部門 1位受賞

衛星データと災害シミュレーションを組み合わせた災害低リスクなサプライチェーンのソリューション事業

アイデア部門 1位受賞 Space BD株式会社アイデア部門 1位受賞 Space BD株式会社

この挑戦が新たな事業開発のきっかけに

「衛星データ分野のインサイダーとなる初めの一歩!」

懸賞金コンテストの開催を知ったのは、応募締切の数日前だったと振り返る、Space BD株式会社の芳澤氏。「当時、社内的にも衛星データ事業を進めていこうというフェーズにあり、絶好のタイミングでした。これはチャンスだからぜひ挑戦したい!と思い、それこそ徹夜覚悟でがんばりました。社名のBD=ビジネス・ディベロップメントの通り、新たな事業展開につながる結果を残せたことが率直にうれしかったです」。

限られた時間の中、お付き合いのある保険会社や製造業者、自治体にヒアリングし、課題感が見えてきたそうです。「ポテンシャルカスタマーになり得る方たちから話を聞けたことで、保険会社に対して災害リスクを保険商品に反映させるといった独自の価値提案ができました」。さらに、リアルタイム性や、線状降水帯の予測に必要な水蒸気観測のデータ不足等、現行の気象衛星の課題点に着目。「長期的ビジョンとして、民間主導の小型気象衛星ビジネスを提案したことも評価ポイントだったのでは」と語ります。

しかし、災害シミュレーションは不確実性が高く、定量的にベネフィットを提示することが難しいため、事業化には課題が多いといいます。「それだけに、まだまだ開拓の余地のある衛星データ活用はおもしろい」と芳澤氏。「一社だけで完結するのではなく、多様な事業者との協働が不可欠。お客様の声を聞き、課題を深掘りするという弊社の強みを生かして、さまざまなベンダーと関係を構築しながらビジネスにつなげていきたいですね」。新たな事業の広がりを見据え、Space BDの挑戦は続きます。

アプローチ:災害リスク評価・災害予測

図|アプローチ:災害リスク評価・災害予測

過去の災害記録と衛星で観測した気象・地形データを基に、災害をシミュレーション。さらに災害シミュレーションの結果を学習したAIと気象予測を組み合わせることで、災害をリアルタイムに予測し、被害の最小化を目指す。

★評価ポイント

災害リスク情報の提供にとどまらず、独自の気象衛星の開発・打ち上げにつながる、将来性のある提案であったこと。

芳澤 僚氏 Space BD株式会社 事業ユニット統括 ISSプラットフォーム事業 マネージャー芳澤 僚氏 Space BD株式会社 事業ユニット統括 ISSプラットフォーム事業 マネージャー

芳澤 僚 氏
Space BD株式会社
事業ユニット統括 ISSプラットフォーム事業
マネージャー

02.

特集|NEDO Supply Chain Data Challenge

受賞した3つのチームをご紹介!

Teamプププ

システム開発部門テーマ①港湾 1位受賞

プlatform for
プrocurement and
プroduction
(調達と生産のためのプラットフォーム)

システム開発部門テーマ①港湾 1位受賞 Teamプププシステム開発部門テーマ①港湾 1位受賞 Teamプププ

大きなテーマ設定が挑戦の刺激になりました

「続々受注に結び付いて、手が回らないほどです」

Teamプププのリーダー土井氏は「受賞した企画の肝は、ユーザー、つまり荷主である企業への怒涛のヒアリングにありました」と語ります。ヒアリングでは自動車、電機、鉄鋼など大手製造業の販売部門、生産部門、調達部門の現場の声を丹念に集め、さらには海運事業者に足を運び、現役船長にも話を聞いたそうです。そこで、海上物流の乱れが最も業務に影響しているのはどこか?を突き止めたTeamプププ。

「一番しわ寄せを受けているのはやはり調達部門でした。船便に遅れが発生した瞬間に、遅延はどこまで許容されるか、空輸に切り替えるか、代替サプライヤーや代替部品をどう調達するかの判断を、現状では慌ただしくアナログで対処している。しかも世界の主要航路を対象としたコンテナ船の定時順守率は40%に過ぎず、調達部門はかなりの頻度でそうした作業を強いられていることがわかりました」。実際にヒアリングしている最中にも『こういうシステムが欲しい!』と切望されたそうです。メンバーの田中氏は「私は当時の部署で、衛星データを活用したビジネス創出をしていましたが、メインの市場は陸上輸送でした。コンテストは港湾物流に目を向ける貴重な機会になりました」と語ります。

「BOM(部品表)から該当部品を調べるだけで数時間もかかっていた作業から調達部門の方たちを解放し、本来の対策に注力できる環境を提供できたことが大きな成果だと思います」と土井氏。受注先との打ち合わせを経て、新たな課題の解決のために衛星データを活用したアイデアも浮かんでいると話すTeamプププの今後に期待が高まります。

プププ・プラットフォーム

図|プププ・プラットフォーム

衛星データを基に海上物流の遅延をいち早く検知→遅延の影響がサプライチェーンのどこに影響するか可視化し、調達の意思決定までサポートするシステム。

★評価ポイント

最終選考会の時点で、すでに受注が発生していたように、ニーズを的確に捉えた内容であり、ほとんど完成形に近いシステムだったこと。

土井 祐哉 氏(右)富士通株式会社グローバルビジネスソリューションビジネスグループ テクノロジアドプション統括部 統括部長|田中 遥 氏(左)富士通株式会社ビジネスマネジメント本部 データアナリティクスセンター土井 祐哉 氏(右)富士通株式会社グローバルビジネスソリューションビジネスグループ テクノロジアドプション統括部 統括部長|田中 遥 氏(左)富士通株式会社ビジネスマネジメント本部 データアナリティクスセンター

土井 祐哉 氏(右)
富士通株式会社
グローバルビジネスソリューションビジネスグループ
テクノロジアドプション統括部 統括部長

田中 遥 氏(左)
富士通株式会社
ビジネスマネジメント本部
データアナリティクスセンター

02.

特集|NEDO Supply Chain Data Challenge

受賞した3つのチームをご紹介!

株式会社スペースシフト

システム開発部門テーマ②災害 1位受賞

SAR衛星データとAIを用いた災害状況の可視化と、
サプライチェーン維持の支援

システム開発部門テーマ②災害 1位受賞 株式会社スペースシフトシステム開発部門テーマ②災害 1位受賞 株式会社スペースシフト

自然災害の影響を少しでも軽減したい

「幅広い産業に応用できることが強み! 」

株式会社スペースシフトは、今回の懸賞金事業の全2部門3テーマに応募し、すべて最終選考に残るとともに、アイデア部門でも2位入賞を果たしました。最終選考会でプレゼンテーションを担当した川上氏は「当社は、もともとSAR衛星のデータを基に浸水域を自動解析する技術を独自開発していたので、『テーマ②災害』で1位を受賞したことは、うれしいというよりホッとしたというのが正直なところです」と話します。とはいえ、短期間でのシステム開発には苦労もあり、特に、まだ数が少ない災害データを使ってAIの精度を上げることには苦心したそうです。また、SAR衛星のデータを画像情報に加工する際、水域の検出精度を上げる手段としてコヒーレンス値を追加したため、データの処理には時間がかかったと川上氏。

一方、現在システムの事業化に向け、損害保険業界とPoC(概念実証)を進めている多田氏は「コンテストで外部からの評価を得たことで、ユーザー企業の見方も変わり、事業化の追い風になったと感じています」と話します。川上氏も「今回の懸賞金事業は、多くの人に衛星データは使い方次第でビジネスに活用できると認識してもらうきっかけにもなったと思います。」と評価します。

今後、SAR衛星の数が増え、撮影頻度が上がり、ほぼリアルタイムに観測可能になったとき、世界の見え方は大きく変わるはず。「インターネットが新しい産業を生み出したように、衛星データを駆使したまったく新しいサービスを提供したい」と語る川上氏には、大きく広がるマーケットがはっきりと見えているようでした。

※Synthetic Aperture Radar(合成開口レーダー)

システム概要

図|システム概要

夜間や荒天時でも観測可能なSAR衛星のデータを、AIで迅速に解析。地上データと統合することで、被害状況をリアルタイムに可視化する。統合するデータを変えることでさまざまな産業に応用可能。

★評価ポイント

複数のデータの活用で精度が高く、保険会社とすでにPoCが始まっているように現実性が高い提案であったこと。

川上 勇治 氏(左)株式会社スペースシフト事業開発部 部長|多田 玉青 氏(右)株式会社スペースシフト事業開発部マネージャー川上 勇治 氏(左)株式会社スペースシフト事業開発部 部長|多田 玉青 氏(右)株式会社スペースシフト事業開発部マネージャー

川上 勇治 氏(左)
株式会社スペースシフト
事業開発部 部長

多田 玉青 氏(右)
株式会社スペースシフト
事業開発部マネージャー

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