現在、世界の情報産業を支えるデータベース運用において、CPUやメモリー等のハードウエアは進化し続けている一方で、データベースを管理するソフトウエアは旧来のハードウエア環境を前提に設計されており、高性能なハードウエアが実現できる高効率かつ高速なデータ処理に対応できないことが大きな課題となっています。また、現行のデータベース管理システムは主に海外企業が提供しており、日本の情報産業の競争力強化には国産システムの開発と普及が不可欠です。
こうした背景を受け、NEDOと日本電気株式会社(NEC)、株式会社ノーチラス・テクノロジーズは「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」に取り組み、メニーコアや大容量メモリー等、次世代のハードウエア環境に適合するリレーショナルデータベース管理システム「劔(Tsurugi)」の開発に成功しました。
劔は、ハードウエアの性能が向上するほどシステムの性能が高まるよう設計されており、ベンチマークテストでは、32以上のコア数を持つハードウエアにおいて、世界最速レベルの456万TPS※1の処理性能と219ナノ秒の応答遅延を達成しました。また、データベースの分散化を前提として設計されているため、バッチ処理中のデータ編集や新規データの追加も可能。例えば、画像データをカメラから取り込みながらリアルタイムで解析したり、ペタバイト級の大規模データを高速処理するなど、複雑なバッチ処理とオンライン処理を高速で同時に実行することもできます。
今後は、劔の情報等を発信するコミュニティサイトをオープンする他、2023年10月にオープンソース版をリリースします。当技術が広く社会で活用されるようプラットフォームを整備するとともに、日本発のデータベース管理システムとして国際競争力の強化を目指します。