ますます重要性を増す電気駆動車の
熱流れモデルの目標精度を達成
世界規模で自動車の電動化が進んでいます。しかし、xEV(電動車)※の実用性を高めるためには、従来の内燃機関部品のみならず、モーターやバッテリー等の電駆部品を最適な温度に保つ熱マネジメントが欠かせません。複雑化するxEVの熱課題を効率的に解決するためには、より高精度なモデルを使ったモデルベース研究/開発(MBR/MBD)を行う必要があります。
こうした背景からNEDOとマツダ株式会社は、熱流れの計測解析技術の開発、電気駆動車の実際の計測、それらを活用した自動車の熱流れモデルの構築に段階的に取り組んできました。マツダ技術研究所の種平 貴文氏は「xEVの各部品は最適な温度帯がそれぞれ異なるため、燃費/電費の改善や電池寿命を延長するためには、精度よく温度を予測する熱流れモデルの構築が必要でした」と話します。
プロジェクトでは熱流れの3形態(伝導、対流、輻射)を予測するため、エンジンルーム/モータールームの空間温度を高分解能で計測する光ファイバーを用いた温度センサー技術を開発。また輻射率の異なる二つの熱流束センサーを用いて対流と輻射を分離計測する手法について、TherMAT組合員の産総研の協力の下、センサーを車両用に改良しました(上右写真)。これらのセンサーを使い、実際の計測データを活用することで、三次元熱流れおよび、一次元のモデルの目標精度を達成しました。
種平氏はNEDOプロジェクトについて「TherMATでは、さまざまな研究者やエンジニアと交流でき、刺激になりました」と話し、同社技術研究所の上席研究員である新濱 誠氏は「技術者の育成という意味でもプロジェクトの意義は大きいと思います。また、定期的に第三者の評価を得ることができ、軌道修正することもできました」と語ります。BEVの比率が高まる今後について、同社技術研究所主幹研究員の小池 祐輔氏は「ユーザーの価値観や社会インフラの変化に対応しながら、柔軟に開発を進める必要がある」と指摘します。車両の開発スピードを上げるMBR/MBDの価値は、ますます高まっています。
出典: | 経済産業省HP |
山賀 勇真 氏(写真上左)
小池 祐輔 氏(写真上中央左)
丸本 真玄 氏(写真上中央右)
種平 貴文 氏(写真下左)
新濱 誠 氏(写真下中央)
森島 千菜美 氏(写真右)