NEDO Web Magazine
Reuse ヒートポンプ冷凍機
低温排熱の下限レベルである60℃排熱で駆動できる高性能冷凍機の開発

廃棄されていた低温度排熱を利用大型冷房や地域熱供給への活用促進へ

従来機比で約2倍の排熱エネルギーを
利用できる吸収冷凍機を製品化

熱需要の高い産業等で発生する排熱のうち、60〜80℃の低温度帯の排熱のほとんどが廃棄されています。NEDOと、熱源の吸収冷凍機の開発を手がけてきた日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社は、これらの温度帯の排熱を回収し、冷房などに利用できる低温駆動ヒートポンプの研究開発を実施しました。

吸収冷凍機は、冷媒(水)の「蒸発」「吸収」「再生」「凝縮」というサイクルをくり返すことで、冷房等に利用する冷水を作ります。このサイクルにおいて、吸収剤に「吸収」した水蒸気を再び水と吸収剤に分離させる「再生」の過程で排熱を利用します。従来の吸収冷凍機では90℃の熱を「再生」で使っても、まだ80℃ほどの温水が捨てられていました。そこで、「吸収」「再生」の過程を二段階に設計し、高温排熱で最初の「再生」を行い、温度の下がった排熱で再度「再生」を行うことで、理論的に55℃まで排熱を回収し、約2倍の排熱利用が可能な「一重効用ダブルリフト吸収冷凍機」の開発に成功しました。

ジョンソンコントロールズBEジャパンの藤居 達郎氏は、製品化までには多くの課題があったと言います。「中の機器の最適な配置や、設置現場を考慮した形や大きさも工夫する必要がありました。また、実験室での研究レベルから製品になる前の過程にはリソースがつきにくい。そういう意味でも、NEDOプロジェクトでなければ実現できなかったと思います」

同製品は現在、ヨーロッパのオフィスビルや工場、病院等で採用されています。藤居氏は「環境意識の高いヨーロッパでは地域熱利用やコージェネレーションが発達しており、排熱利用に対する関心や需要も高い。日本では未利用熱への理解が徐々に進んでいる段階ですが、エネルギーセキュリティやカーボンニュートラルといった社会の動きも追い風になっているので、海外での活用もアピールしながら普及に努めていきたいです」と力を込めました。

藤居 達郎 氏

ジョンソンコントロールズBEジャパン
エンジニアリング本部 設計部
主管技師 博士(工学)

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