NEDO Web Magazine
Reduce 断熱
高強度高断熱性多孔質セラミックスを用いた省エネルギー炉の研究開発

ファイバーレス断熱材と周辺部材の合わせ技で工業炉の高効率化・省エネルギー化へ

産業/工業炉の省エネルギー化のための熱マネジメント。

ファイバーレス断熱材の量産化と
従来品を上回る熱回収率・燃焼効率を達成

投入される熱エネルギーの2%ほどしか製品自体の加熱に使われていない工業炉において、熱エネルギー消費効率をさらに向上させるためには、炉に使われる断熱材とその周辺機器を併せた効率的な熱マネジメントが不可欠です。

NEDOと美濃窯業株式会社は、産総研と共に開発した「多孔質ファイバーレス断熱材」の製品化・量産化に向けた開発検討に加え、高温排気ガスからの熱回収を効率化する「耐高温高効率熱交換器」、燃焼効率を高める「耐高温高効率バーナー」の研究開発を行いました。

ゲル化凍結法によるファイバーレス断熱材は、水分を多く含むため乾燥に時間がかかります。さらに水分が凍結する際に大きな氷結晶ができ、構造が不均一になって強度が低くなることが課題でした。そこで、添加する水分の一部を気泡に置き換えることで、構造の均一化と、乾燥時間の約40%短縮を達成しました。また、ファイバーレス断熱材を施工した試験炉において、燃料使用量の約36%削減に成功しました。さらに、1500℃以上の使用温度に対応する高効率熱交換器の開発に挑み、従来品の3倍以上となる約23%の熱回収効率を達成しています。また、リジェネレイティブバーナーの燃焼効率を向上させるため、熱交換速度が高く、蓄熱容量の大きい金属のコアを高耐熱のセラミックス(シェル)で覆った、新しい蓄熱体を開発し、既存のセラミックス蓄熱体に比べ、2倍の入熱放熱速度を実現しました。

美濃窯業技術研究所の松岡 鮎美氏は「当社のプラント事業で培った周辺部材の設計・構築という強みが生かせました。また、産総研や名古屋大学など産学官で連携できたことはNEDOプロジェクトの大きなメリットでした」と振り返ります。同じく田中 洋介氏は「既存客からも省エネルギー化やCO2排出量削減に向けた要望は増えていますが、まだコストが課題。今後は製造コストを抑えると同時に、省エネルギー効果の検討で良い成果を上げてPRにつなげていきたい」と展望を語りました。

松岡 鮎美 氏

美濃窯業株式会社
技術研究所 技術開発課
アシスタントマネージャー

田中 洋介 氏

美濃窯業株式会社
技術研究所 技術開発課
アシスタントマネージャー
博士(工学)

吉見 靖隆 氏

美濃窯業株式会社
技術研究所 所長

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