NEDO Web Magazine
Recycle 蓄熱
高密度蓄熱システム(低温用)の研究開発

10℃前後の熱需要に応える蓄熱技術で、省エネルギー化を実現

高密度蓄熱システムを食品製造プロセスに適用した際のイメージ模型。

従来材料の2倍の蓄熱密度を達成
氷蓄熱に比べ約30%の省エネルギー効果

NEDOとパナソニック株式会社エレクトリックワークス社は、低温用の高密度蓄熱技術の開発に取り組んでいます。産業分野では、これまで低温用の蓄熱材は氷蓄熱しかなく、冷凍機で0℃以下に冷却する必要がありました。しかし、10℃前後の熱需要も多く、その温度帯で蓄熱できれば冷凍機の運転を省エネルギー化できます。また、夜間電力を利用して蓄熱すればピークシフトにも貢献できます。

実用化に向けては、過冷却現象のため冷却温度を下げる必要があり、冷却コストの上昇等の課題がありました。プロジェクトでは、過冷却のメカニズムを解くため大学研究室と共同で基礎研究にも取り組み、氷よりも高い温度で蓄熱できるクラスレートハイドレートの開発を目指しました。

同社総括主幹技師の鈴木 基啓氏は「NEDOプロジェクトということで国内の知見豊富な大学の先生方と共同研究でき、分析やシミュレーションでも協力をいただいたことで、開発を加速することができました」と話します。

現在は食品製造プロセスへの適用を想定した模擬システムを構築し、5~6℃で固体になり、理論通りの蓄熱量になることが確認できました。

蓄熱モジュールの開発を担当した主任技師の竹口 伸介氏は「過冷却の理論をおさえたことはモジュールの開発にも役立ちました。今後は実際にユーザーの現場での検証を行う必要があり、模擬システムとの差をどう埋めていくかが課題です」と言います。

蓄熱材料の開発にあたった同社主幹技師の町田 博宣氏は「クラスレートハイドレートはゲスト物質によって2℃から30℃弱まで温度帯をデザインできます」と用途の広さを語り、鈴木氏は「再生可能エネルギーの導入が進んだとき、電力を熱として蓄えることで需給バランスを調整するニーズにも応えられる」と蓄熱技術の将来性に期待を込めました。

水分子の籠構造の中にゲスト物質を包接したクラスレートハイドレートを開発。

山口 泰弘 氏(写真左)

パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社
スマートエネルギーシステム開発部
部長

町田 博宣 氏(写真中央)

パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社
スマートエネルギーシステム開発部
主幹技師・博士(工学)

松林 成彰 氏(写真右)

パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社
スマートエネルギーシステム開発部
渉外担当

竹口 伸介 氏(写真中央左)

パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社
スマートエネルギーシステム開発部
主任技師

鈴木 基啓 氏(写真中央右)

パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社
スマートエネルギーシステム開発部
総括主幹技師・第二課課長

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