200℃未満の温度帯を利用することが
新技術の中心的な課題だと判明
NEDOと国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、どのような技術開発を行えば、未利用熱エネルギーの有効活用ができるかを探るため、2014年から2017年にかけて生産現場での排熱の状況に関する実態調査を行いました。調査では、15業種全国1273事業所を対象に未利用熱排出・活用状況に関するアンケート等を実施し、その結果を2019年3月、報告書にまとめました。
ベンチマークにしたのは2000年度に一般財団法人省エネルギーセンターが実施した工場群のエネルギーシステムに関する調査です。当時、産総研 省エネルギー研究部門の総括主幹として調査にあたった平野 聡氏は「その調査から10数年経って、生産現場の排熱の状況がどう変化しているか、また技術を導入する際の障壁を調べ、プロジェクトの技術開発に役立てることを目指しました」と語ります。企業にとって排熱のデータは秘匿性が高く、調査には各方面の協力が必要でした。その点について平野氏は「NEDO事業だから、信頼して機微に触れる情報をご提供いただけたのだと思う。皆さんの協力なしでは成り立たない調査でした」と話します。
調査の結果、未利用熱量の76%を占めるのが200℃未満の比較的低温域であることや排熱を回収して利用する機器が多くの現場で導入されていることなどが分かり、また、新技術の導入に対する心理的バリアは小さいものの、導入を妨げる要因としてコスト面の問題と認知度や人材の不足といった課題も判明しました。
「生産現場の声と研究開発の方向性を橋渡しすることが使命だと考え、調査ではアンケート以外に、現地調査も精力的に行いました。実際の研究開発も、この調査結果を基により現実に即したものになったと聞いています」と平野氏。
たくさんの方々の協力によって得られた成果は、未利用熱活用技術の開発ストーリーの中でマイルストーンとしての役割を果たすことになりました。
平野 聡 氏