小原 春彦
原 充
一次エネルギーの約6割にもおよぶ未利用熱エネルギーを有効利用することは、
省エネルギー化と脱炭素社会の実現に大きく貢献する技術です。
本プロジェクトの意義や進捗、今後の展望を小原 春彦プロジェクトリーダーに聞きました。
未利用熱エネルギーの有効利用に取り組んだ10年
原 | 小原PLがプロジェクトリーダーに就任されたときのお気持ちを聞かせてください。 |
小原 | 私の専門分野である熱電変換は、未利用熱エネルギーを活用する技術の一つとして注目されていましたが、2008年にNEDOの調査に参加した際、未利用熱を最大限に活用するためには熱マネジメントも含めたトータルな取り組みが必要だと痛感しました。そこにこのプロジェクトのお話があり、役目の重さと同時にやりがいを感じて引き受けました。 |
原 | 10年の間には、社会の課題やニーズも変化してきたと思います。 |
小原 | 例えば、想定以上に自動車の電動化が進んだり、産業用ヒートポンプへの期待が高まったり、それに応じて取り組みのウエイトを大胆に組み替えたこともありました。都度NEDOの担当者がよくコントロールしてくれたと思います。 |
原 | TherMAT(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合)もうまく機能しましたね。幅広い分野の企業、大学、研究機関が小原さんのリーダーシップの下で調整しながら、全員で取り組んできたという印象です。 |
小原 | プロジェクトが中盤にさしかかった頃、TherMATのワーキンググループで自動車メーカーが実際の車両のデータを開示し、それに対して参画企業がそれぞれの技術を投入することでどれくらい効率化できるかシミュレーションしたことがありました。これなどはチームワークの良さを感じる出来事でした。 |
原 | 小原さんがフットワークよく調整される一方、求心力も発揮されたおかげです。国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)という公的機関に所属されていることも、みんながベクトルを一つにできた要因だと思います。 |
小原 | ピーク時には10数校におよぶ大学の協力もありました。まさに産学官の連携が図れたことで研究開発が進んだといえるでしょう。 |
カーボンニュートラルの実現と日本の競争力向上へ
小原 | プロジェクトの目的は社会実装ですから、熱を有効活用するのはもちろん、製品やサービスとして需要があるものにすることが重要です。幸い、遮熱フィルムなど、プロジェクトの終了を待たずに実用化できたことは大きな成果でした。特に吸収冷凍機は欧州で採用される事例が増えていると聞いています。 |
原 | 社会実装・実用化のためだけでなく、あえてより高い目標を立て、挑戦したこともこのプロジェクトの特徴でした。その中でプロジェクトの早い段階で商品化できたことは高く評価されるでしょう。 |
小原 | カーボンニュートラルを実現する最も効果的な方法は、やはり使うエネルギーを減らすことにつきます。未利用熱エネルギーの活用はその有力な手段であり、このプロジェクトから生まれた技術が世に出ることで、経済を減速させることなく地球環境問題の解決に貢献できると考えています。さらに日本の技術力の高さを示すことで、次の世代に良い環境を手渡すことにつなげたいと思っています。 |
原 | 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、未利用熱エネルギーの活用のための技術開発を行い、実用化・社会実装を進めていくことが今後も大事だということですね。ありがとうございました。 |
特定分野専門職
2020年から四代目PMを務め、このプロジェクトに最後まで関われることは喜びであると同時に、これまでマネジメントを継続してくださったPMの方々と、プロジェクト期間にご指導いただいた小原PLへの感謝の気持ちでいっぱいです。プロジェクト終了後は、NEDOのサポート・実施者の方々と共に、実用化・社会実装を目指します。