一次エネルギー消費量やCO2排出量を試算
導入検討にかかるコストと時間を大幅削減
工場等で廃棄されている未利用熱の有効活用や、CO2排出量削減の観点から、バーナーや蒸気ボイラーの代替として産業用ヒートポンプへの期待は高まっています。しかし、ヒートポンプの導入を検討する際にさまざまなデータを取得する必要があり、多大な時間とコストがかかることが導入の大きな障壁となっています。
そこで、NEDOは、産業用ヒートポンプの導入効果を短時間で分析し、ボイラー・バーナーと比較できる「産業用ヒートポンプシミュレーター」の研究開発に取り組みました。
プロジェクトに参画した一般財団法人金属系材料研究開発センター(JRCM)、株式会社前川製作所と早稲田大学は、工場における利用パターンを調査し、「加温方式(循環・非循環)」「ヒートポンプの導入用途(予熱・置換)」「冷温同時利用(有・無)」の三つを組み合わせた8パターンを設定。このパターンから選択し、定格加熱能力や給水温度、流量、冷媒等を入力するだけで、一次エネルギー消費量やCO2排出量等を高精度で試算できる「ヒートポンプ単体シミュレーター」を開発、一般公開しました。さらに、ボイラー・タンク・弁等を含むシステム全体の性能評価を行う「産業用エネルギー統合シミュレーター」の開発にも挑みました。
早稲田大学の齋藤 潔教授は「日本の熱技術は飛び抜けて高いですが、まだまだコストが高く、導入成果が見えにくいのが現状です。省エネルギーや経済的なインセンティブといったメリットが見えればヒートポンプの導入と普及につながるでしょう」と語り、また、企業や業界団体等が参加するワーキンググループを取りまとめてきたJRCMの豊田 俊介氏は「分野や立場の異なる人たちが、問題意識を共有し、目標に向かって取り組めたことがNEDOプロジェクトの意義」と話します。今後は、より多くの関係事業者が活用できるよう、産業用エネルギー統合シミュレーターの実用化に向けた取り組みを進め、産業用ヒートポンプ導入成果の見える化を目指します。
豊田 俊介 氏
齋藤 潔 氏