クラスレート化合物の性能向上と
熱電モジュールの両面で目標達成へ
熱を直接電力に変換する熱電変換は、工場等から排出される中高温域の排熱を活用する技術として期待されています。しかし、現在実用化されている熱電材料は、高価で毒性があるため、環境への影響等の問題があり、また変換効率が十分ではないことから、安価で環境に優しい高性能熱電材料の開発が待たれていました。
NEDOと古河電気工業株式会社は、こうした課題を解決するため、変換効率が高い次世代材料の研究開発に取り組んできました。同社サステナブルテクノロジー研究所部長・主席研究員の味村 裕氏は「動作する部分がなくメンテナンスフリーといった利点を生かすため、プロジェクトでは変換効率15%という高い目標を設定しました」と話します。
環境調和型クラスレート化合物のP型とN型素子を用いた、高い変換効率の実現に有効な多接合型熱電モジュールを開発しています。モジュール側の設計にも工夫を施し、変換効率は計算上16%まで到達。現在は目標値を確認するための実証テストを行っています。
また、シリコンクラスレート化合物からなるP型とN型焼結体が一体となったU字型素子も開発しています。味村氏は「接合部がないため、直火であぶるほどの高温域でも安定しています」と優位性を語ります。
同社研究所の山本 貴博氏は「材料の組成や焼結の条件を少し変えるだけでも特性が大きく変わるため、最適化に苦労しましたが、NEDOプロジェクトで大学と共同研究ができ、大学発のデータや研究者のアドバイスが開発に大いに役立ちました」と話します。また、味村氏は「TherMATに参加している企業と議論や情報交換ができ、とてもいい連携ができている」とプロジェクトの利点に言及しました。
今後は「ラボレベルで達成した性能を保ったまま、大型化するための検討が必要です」と山本氏。味村氏も「工場の排熱を利用するには熱電発電システムの構築も必要です。お客さまへのリサーチを基に現実に対応した装置を検討したい」と実用化への道筋を示しました。
山本 貴博 氏
味村 裕 氏