NEDO Web Magazine

特集

省エネ・脱炭素への道をひらく

未利用熱エネルギー活用技術

工場や自動車、生活から出る再利用可能な熱。
現在は環境中に捨てられている、この膨大な未利用熱エネルギーを削減し、
あるいは有効利用するために、NEDOは中長期の視野で研究開発を後押ししています。

捨てられている熱
「未利用熱エネルギー」を有効活用するために

エネルギーは最終的には熱となって環境中に捨てられます。日本で消費されるエネルギーのうち、半分以上が有効活用されず、熱として捨てられているといわれています。

日本は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするため、エネルギー転換を図り、技術開発を進めていますが、この高い目標を達成するためには、一次エネルギーの大半に相当し、利用されずに熱として排出される「未利用熱エネルギー」を有効活用することが重要なポイントになっています。

NEDOは、2015年度から「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」プロジェクトに取り組み、2023年3月に事業終了を予定しています。

このプロジェクトでは、未利用熱エネルギーを効果的に利用するため、「熱」の削減(Reduce:断熱、遮熱、蓄熱)、「熱」の再利用(Reuse:ヒートポンプ技術)、「熱」の変換利用(Recycle:熱電変換、排熱発電)を行うための技術を開発するとともに、これらの技術を統合的に推進する熱マネジメント技術の開発を行うことで、産業分野、運輸分野、民生分野におけるさらなる省エネルギー化を目指しています。

未利用熱エネルギーは、効率的な回収やエネルギー変換ができれば、一次エネルギー削減に大きく貢献できます。しかし、ほとんどが環境中に放出されているためエネルギーを 取り出すことや貯蔵が難しく、かつエネルギー密度が低いので輸送のコストがかかるといった、技術的な課題を克服する必要がありました。

これまで工場や自動車、生活の場から排出されていた熱を、必要な場所で必要な時に利用するためには蓄熱技術が必要不可欠です。また、捨てられている熱そのものを減らすこと は省エネルギーの基本であり、断熱技術はそのベースになります。一方で、その熱を私たちの生活に広く利用するためには、やはり電気という使いやすい形に変換することも求められています。

海外でも開発競争が激化し、欧米、中国等で産学官が一体となったプロジェクトが積極的に展開されています。こうした中、NEDOは未利用熱エネルギーの高度利用を目指して多様な業種の企業が所属しているTherMAT(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合)等と、さまざまな技術開発に取り組んできました。

このプロジェクトでは、すでに製品化された車載向け小型吸収冷凍機や、世界で初めて開発に成功した汎用元素のみで構成する熱電発電モジュール、また、高強度・高断熱特性を備えたファイバーレス断熱材料、ヒートポンプ導入効果を定量評価できる産業用ヒートポンプシミュレーターなど、社会実装に向けた成果が着々と報告されています。

次ページからは、未利用熱エネルギーの技術開発に関する対談や、それぞれの技術開発の成果について紹介します。

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