完全自動運転に向けたシステムオンチップとソフトウエアプラットフォームの研究開発
完全自動運転車の早期実用化に向けて、
限られた計算資源を有効活用する統合基盤の構築に取り組んでいます。
社会にさまざまなメリットをもたらす
完全自動運転車の実現に向けて
AIエッジコンピューティングの活用事例の一つに、完全自動運転車があります。完全自動運転車の実現は、高齢者や体の不自由な方の移動手段の確保をはじめ、物流の維持、交通渋滞の解消や燃費の向上によるCO2削減等、社会にさまざまなメリットをもたらします。しかし、その普及に向けては、AIチップの消費電力の大幅な低減が求められています。NEDOは、こうした課題の解決を目指し、完全自動運転に向けたシステムオンチップ(SoC)とソフトウエアプラットフォームの研究開発を進めています。
本プロジェクトでは、SoCの開発を株式会社アクセルが、コンパイラ・OSの開発を国立大学法人東京大学が、ミドルウエアの開発を国立大学法人埼玉大学が担当し、自動運転車のアプリケーション開発、これらを統合した実証実験と、より高性能なアクセラレータの開発を担う株式会社ティアフォーの4つの組織が連携して開発に当たっています。
目まぐるしく進化する自動運転分野で
最先端であり続けるために
ティアフォーの技術本部の濱田 貴之氏は「現状は、車両のトランクルームのほとんどを機材が占めていますが、このプロジェクトで自動運転アプリケーションの統合基盤を確立すれば、スペースを犠牲にしない完全自動運転の実現に大きく近づきます」と説明します。同じく技術本部アーキテクト 船岡 健司氏は、「今回のプロジェクトでは、産学官が連携し、電力の効率化と安全性を両立する基準を世界に示すことも目標の一つに置いています。それによって、自動車メーカー、半導体メーカーとのコラボレーションも進むと考えています」と事業化に向けての効果を話します。
同じく技術本部の村上 太一氏は、「このプロジェクトでは、従来のハードウエア中心の開発から、機能をソフトウエアによって定義するソフトウエア・デファインドへのシフトを実感しています。開発を担当したアクセラレータは、複数のアクセラレータ機能がワンパッケージに載っている特異な構造をしているため、設計に当たってはバランスに苦心しました。今回ひとまずの解答を出しましたが、組み合わせは今後も変わっていくと思います」と、この分野の技術の移り変わりの激しさを示唆し、船岡氏は開発に当たって「自動運転に関する技術は、目まぐるしく進化しています。そうした中、最先端の情報をキャッチアップしながら、変化に適応できる開発を進めています」と語りました。
より省電力化したプロトタイプによる
実証実験から、世界標準の道へ
2022年12月には、より省電力化したプロトタイプの装置を搭載して、実車による完全自動運転の実証実験を行う予定です。この実験データを基に、ティアフォーでは、市街地や工場・倉庫内、空港内のバス等、用途に応じた性能を規格化し、世界に向けて提案することを計画しています。
NEDOのプロジェクトの意義について船岡氏は、「プロジェクトに参加しなければ、装置を省電力化することは難しかったと思います。完全自動運転という誰も答えを持っていないテーマに対し、技術推進委員会の有識者からフィードバックを受けられたことで、開発が加速したことに感謝しています」と話します。また、濱田氏は「有識者の方々との議論を通して、説明する力を身につけることもできました。成果説明の際にもその力が生きています」とコメントしました。NEDO IoT推進部の熊澤 忠志 専門調査員は、「有識者と問題意識を共有できたことで開発が加速したことは確かです」と評価します。
プロジェクトマネージャーを務めるNEDO IoT推進部の岩佐 匡浩 主任は「自動運転は成長分野であり、日本の技術が世界に対抗できる技術に成長すること、また、ビジネスとして花開くことを応援しています」と、今後への期待を述べました。
熊澤 忠志
岩佐 匡浩 主任
村上 太一 氏
船岡 健司 氏
濱田 貴之 氏
村上 太一 氏
熊澤 忠志
船岡 健司 氏
岩佐 匡浩 主任
濱田 貴之 氏