NEDO Web Magazine
超超PJ 超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト
03

「CO2を利用する有用化学品合成技術の研究開発」

高機能触媒を従来比20倍の高速で開発

三位一体の開発によって添加剤を一切必要としない、
環境調和性の高いカルボン酸合成に成功しました。

酢酸溶媒中のRhHI2(CO)(PPh3)2触媒によるシクロヘキセンのヒドロキシカルボニル化

酢酸を溶媒として用いることで、添加剤を加えることなく、カルボン酸が高収率で得られることを実証。

実験と計算科学の協働により
80%近い収率を達成

二酸化炭素(CO2)と水素(H2)から合成されるギ酸を工業利用することは、カーボンニュートラル社会の実現に資するテーマです。しかも、ギ酸を基に製造するカルボン酸は、医薬品や農薬などの有用化学品、アクリル樹脂や高吸水性樹脂などの高分子材料の基幹原料としての応用も期待されています。ところが従来その反応には、高圧条件を必要とし、有毒で爆発性の高い一酸化炭素(CO)ガスや環境負荷の大きい複数の添加剤を大量に使う必要がありました。

そこで、NEDO超超プロジェクトでは、産総研とADMAT、株式会社日本触媒の共同研究により、有毒ガスや添加物を必要としない、より安全で環境調和性の高いカルボン酸合成技術の開発に取り組んできました。

プロジェクトでは、反応機構の解明と触媒活性種の特定に取り組み、化学反応の進行方向を自動的に見つけ出す反応経路の自動探索計算技術によって、CO2からカルボン酸を合成する反応機構をおよそ半年で明らかにし、収率も80%近くと想定以上の成果を上げました。

日本触媒の岡田 雅希 氏は「企業の最先端のエンジニアが集まるNEDOの集中研方式は、課題に対するアプローチも多様で、一社ではできない成果につながりました。この分野の研究者との人脈が生まれたことも、今後につながると期待しています」と話します。

シンプルな触媒反応系を構築できたことに大きな手応えを感じている岡田氏。同社では、プロジェクトで獲得した計算科学やハイスループット実験装置、基盤となる要素技術を活用して、いろいろな分野に広く展開することを検討しています。

岡田 雅希 氏

株式会社日本触媒
コーポレート研究本部
研究センター 主任部員
博士(工学)

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