NEDO Web Magazine
超超PJ 超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト
02

「電場応答型高分子アクチュエータ材料の開発」

ソフトアクチュエータ材料の分子構造をごく短時間で提案可能に

目標とする特性を持つ分子構造を機械学習から特定し、
ソフトアクチュエータ材料の開発を高速化しました。

マルチスケールシミュレーションを実現し、
開発加速ツールとして活用へ

高齢化が進む現代においてシニアの活動を支援するデバイスが注目されています。中でもソフトアクチュエータは、ロボットに比べ、柔軟で軽量、気軽に着用できる点で、リハビリや介護のための作業補助等への応用も期待されています。しかし、その有力な材料候補となる液晶エラストマー(LCE)を実験中心で開発するには、時間もコストも膨大にかかることが課題でした。

こうした背景の下、NEDOは超超プロジェクトにおいて、分子からデバイスレベルまで材料変形を再現できるマルチスケールシミュレーションの実現に向けた基盤技術の研究開発を行い、LCEの開発を高速化する計算技術の構築に挑みました。

プロジェクトでは、LCEの変形挙動を計算する粗視化分子モデルを構築し、先行研究の実験データと合わせてシミュレーション結果をデータベース化。機械学習によって必要なパラメータを絞り込み、材料力学特性との相関を解明しました。これにより、出力のロスがない大変形(Soft-Elasticity)が発現する分子構造の提案にかかる時間を、19分の1に短縮しました。

プロジェクトに参画したパナソニックホールディングス株式会社の田頭 健司 氏は、「集中研体制で6年間じっくり腰を据えて取り組めたことが成果につながりました。NEDO事業だからこそ実現したことだと思います」と話し、同じく保岡 悠 氏は「デバイスの要求性能から分子構造を割り出すシミュレーションの基礎をつくることができたので、実験の回数も大幅に減らせるはずです。この成果をアクチュエータだけでなく、さまざまな商材に応用したい」と抱負を語りました。

有限要素法での解析結果

有限要素法での解析の結果、電場印加時に想定の変形が得られることを確認。

粗視化分子動力学法による一軸伸長計算

田頭 健司 氏

パナソニックホールディングス株式会社
テクノロジー本部
マテリアル応用技術センター
主任研究員 博士(工学)

保岡 悠 氏

パナソニックホールディングス株式会社
テクノロジー本部
マテリアル応用技術センター
博士(工学)

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