「ハイスループットシステムとデータ科学を活用した高活性ブタジエン合成触媒の開発」
世界最高の生産性を有する触媒システムを短期間で開発し、
バイオマス由来のブタジエンゴムで、タイヤを試作することに成功しました。
新家 雄 氏
化石資源に依存しない製品開発で
持続可能な社会への貢献を目指す
NEDO超超プロジェクトでは、産総研とADMAT、横浜ゴム株式会社の共同研究で、タイヤの主原料の一つであるブタジエンゴムをバイオエタノールから生成することに取り組んできました。横浜ゴムの新家 雄 氏は「このテーマは系統的な検討例が少なく、詳しい触媒反応機構が未解明でした。しかし、複雑な反応を人間が一つひとつ実験で確かめることは現実的ではありませんでした」と話します。
プロジェクトでは、何段階にもわたる反応のメカニズムを計算科学で明らかにし、高度に自動化され短時間に多数の実験を行えるハイスループットシステムと触媒インフォマティクスの活用によって、世界最高のブタジエンの収率を持つ触媒システムの開発に成功。触媒の開発期間を22分の1に短縮しました。
その後、バイオエタノール処理量を約500倍にした大型触媒反応装置を設計・製作し、約20kgのブタジエンを製造しました。さらに、このブタジエンを高純度化して重合反応で得られたブタジエンゴムを原料とした自動車用タイヤを試作し、従来の石油由来のゴムを使用したものと同等の性能を持っていることも確認できました。
「目標とする性能の触媒を開発できたのは、NEDO事業でハイスループットシステムを利用できたことが大きいと思います。また、集中研でいろいろな分野の専門家と情報交流し、切磋琢磨したことも開発を後押ししてくれました」
同社はNEDOグリーンイノベーション基金事業において、より高効率な技術開発に取り組み、バイオエタノール由来のブタジエンゴムの事業化を目指しています。