近年、世界的に大きな問題となっているプラスチックごみを
資源として再利用するためのNEDOの取り組みをご紹介します。
今西 大介
IMANISHI Daisuke
NEDO環境部 主任研究員
プロジェクトマネージャー
4つの資源循環システムを確立し
単純焼却・埋立・輸出ゼロへ
NEDOは、資源循環型の社会を目指し、都市鉱山※由来の廃金属、廃プラスチック、廃アルミニウムの高効率な資源循環システムを構築する3R事業を推進しています。
その中で、近年、日本を含む先進諸国の廃プラスチックを輸入していた中国の輸入規制強化に端を発し、タイやベトナム等のアジア諸国でも、廃プラスチックを適切に処理できないとして輸入規制を強化しています。また、海洋プラスチックごみが世界中で大きな問題になっており、G7やG20でも重要な課題として取り上げられています。
国内でも、2019年に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」や「プラスチック資源循環戦略」が策定され、2035年までにリユース・リサイクルなどにより、すべての使用済みプラスチックを有効利用することが目標として盛り込まれました。こうした背景から、これまで輸出していた廃プラスチックを含むプラスチック資源の適正な処理や有効活用のための技術開発が急務となっています。
NEDOは、2020年度より「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発事業」に着手。AIなどを用いて廃プラスチックを最適な処理方法ごとに分別・選別する「SR:ソーティングリサイクル」、プラスチック材料として再生する「MR:マテリアルリサイクル」、分解して石油化学原料に転換する「CR:ケミカルリサイクル」、焼却しエネルギーとして回収・利用する「ER:エネルギーリカバリー」の4つの項目における技術開発を連携して進めています。従来の取り組みと、これらの技術により、2030年までにMRとCRで廃プラスチックの60%利用と輸出ゼロ、2035年までに単純焼却・埋立ゼロを目指しています。
素材に適応したリサイクル技術と
効率的な振り分けが不可欠
日本では、資源有効利用促進法や容器包装リサイクル法といった法整備により、廃プラスチックを選別して資源化するためのしくみはある程度整っていますが、MRやCRとして利用する上で課題は少なくありません。MRは製品に戻しやすく、コストメリットが大きい半面、再加工の段階で強度が落ちるという問題があります。CRはMRの受け皿として期待されていますが、塩素成分や紙等が混ざっていると分解・回収が難しくなります。
そして、廃プラスチックを選別する上で、どちらの技術にも利用できる境界線上の素材の振り分けも大きな課題です。同事業のプロジェクトマネージャー(以下、PM)を務めるNEDO環境部の今西大介主任研究員は、「素材をどう効率的に振り分けるかを話し合いながら、それぞれの技術で扱える素材の間口を広げることが重要です。また、最終的な受け皿であるERでは冷熱利用を目的とした技術開発が進められていますが、将来的にはMRとCRを最大活用しながらERを減らしていくことが理想です」と話します。
現在の実験段階から、2030年の社会実装と2050年カーボンニュートラル達成を実現するためには、アグレッシブな目標設定が必要と今西PMは強調します。「地球環境を担っているのは私たち個人個人でもあります。技術だけに依存するのではなく、一人ひとりがプラスチックは資源であるという意識を持てば、社会にかかる負荷も少なくなると思います。そのために、事業者の方には成果を積極的にアピールしてほしいとお話ししています。こうした技術や成果をたくさんの人に見ていただく機会をNEDOとして提供していきたいですね」。